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夜明けの星の黙示録  作者: アレクサンドル・スケベスキ
第五章 vs赤竜編

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第079話 数奇な人生

―――ガルフ・バウ:冒険者ギルドにて


「素晴らしい朝だな……」


陽光が差し込む窓辺で、フェンリカは、

テッカテカの肌を輝かせながらモーニングを楽しんでいた。


「こちら、モーニング・コーヒーです」

「あぁ、いつもありがとう。マンタイ」


―――!?


その言葉に、マンタイは目を見開いた。

優しい感謝の言葉など、聞いたことがない。


いつもなら「遅いぞ」だの「アレコレ持ってこい」だの、

挨拶代わりの罵声を受けるところなのに。


マンタイは背筋に冷たいものを感じながら、

そそくさとその場を離れた。


異変を感じたのは、彼だけではなかった。

"黒狼の牙"の面々も、ヒソヒソと声を潜めていた。


「どうしちまったんだ…フェンリカの姐御は」


「まるで乙女じゃないか」


「それより聞いたか?

 昨夜の謎の震動、震源地はここらしいぜ?」


ざわつく空気の中、ラグナルがギルド1Fに姿を現した。


かつては筋骨隆々だった彼の姿は、今では別人のように痩せ細り、

ヒョロッッヒョロであった。


彼を迎えに来ていたグラントハルのドワーフたちは、

その変貌ぶりに言葉を失う。


「………ラグナルなのか?」


よく見ると、ラグナルの体には無数の小さな痣が浮かんでいた。

まるで何者かに“マーキング”を刻まれたかのような、不気味な痕跡だ。

一体……彼の身に何が起きたというのか。


その姿を見つけたフェンリカは、

迷うことなくラグナルの元に駆け寄った。


「ラグナーール♡」


―――!?


様子のおかしいフェンリカに冒険者達の視線が集まる中、

フェンリカは声を張り上げて宣言した。


「おう!皆聞けぃ!私とラグナルはな――

 結婚することになった!!…へへ♡」


その瞬間、ギルド内はまるで爆発でも起きたかのように騒然となった。


「「ええええ~っ!!」」


驚愕と困惑、そして微妙な祝福の空気が入り混じる中、

ラグナルは、どこか遠くを見つめていた。

その瞳は、すでに別の世界を旅しているかのようだった。


そんな彼に、受付嬢がそっと声をかける。

なんでも、町長のタイラスが呼んでいるのだとか――


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


町長室。

重厚な扉の向こうで、ラグナルとタイラスが向かい合う。


「変わりないな。ラグナルよ…」


「そっちは随分年を取ったな。タイラス」


タイラスは哀愁を帯びた笑顔を浮かべながら、

ドワーフお気に入りの火酒(かしゅ)をグラスに注ぐ。

琥珀色の液体が、静かに揺れた。


「聞いたぞ。カナンの賊共を、

 "星天牙戟(せいてんがげき)"で蹴散らしたんだって?」


「いや、あれはアレク1人でやった事じゃ。

 ワシはただ、後ろに付いて行っただけじゃよ。

 それにもう、"星天牙戟"はフェンリカに譲ったよ」


"偉大な牙の槍"を譲った――

その言葉に、タイラスは驚きを隠せなかった。


「今はアレクを(あるじ)としておるんじゃ。

 まぁ、槍を捧げるという年でもないがな…」


「……ああ……そうなのか」


―――50年前の"第一回(ヴィーナス・) 金星十字軍(クルセイダーⅠ)"

ガルフの死を経て、今なおガルフに忠誠を誓うタイラス。

そして、変わりゆくラグナル。


タイラスは、ふとグラスの中の火酒を見つめた。

その揺らぎの奥に、自分だけが取り残されてしまったような、

そんな寂しさを感じていた。


「アレク君は、一体どういった人物なのかね?」


「不思議な男じゃよ。

 あれだけの力を持ちながら、力なき者たちの為に奔走しておる。

 ……ガルフに似ておる。

 いずれ"王"になると言っておるが、成し得るかもしれん」


その言葉に、タイラスは息を呑んだ。

ラグナルにここまで言わせるか――


「ふふ…そうか。ウチにも期待の星がいてね」


タイラスはグラスを傾けながら、どこか誇らしげに微笑んだ。


「フェンリカさ。彼女はいずれガルフの座を継ぐぞ。

 君が槍を譲ったというのも、運命なのかもしれないね」


それを聞いたラグナルは、少しばかり気まずそうに咳払いをした。


「そのフェンリカの事なんじゃがな――」


そうして淡々と昨夜の出来事を語り始めた。


昨夜、いつの間にか襲われ、

気づけば結婚することになっていた。

自分でも何が起こっているのか分からないのだという。


その話を聞いたタイラスは、唖然とした後、

腹を抱えて大笑いした。


「はははっ!

 数奇な人生を歩んでいるな!君は!はははっ!」


―――昨年、帝国は敗れ、瓦解した。

巨大な秩序が崩れた今、

このロスデアは確実に揺らぎ始めている。

近い将来、混沌の時代がやって来るのだろう。


その時、群れを率いるのは、もはや自分たちではない。

アレク、フェンリカ、そして名もなき若者たち。

新しい世代が、世界の舵を握るのだ。


タイラスは、静かにグラスを置くと、

その目は、継承を見据えていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


―――カナン

アレクたちは、いつも通りの朝練を終え、

朝食の準備に取りかかっていた。


昨夜取得した"氷の魔法(グラキエス・マギア)"は、問題なく発動できた。

だが、実践で使うには、まだレベルを上げる必要がある。


「―――よし、できたな」


アレクは、サクラたちに教わりながら、

慣れない手つきで料理を手伝っていた。


初めてな事もあって、張り切りすぎたかもしれない。


テーブルには、香ばしく焼き上げられたトースト、

瑞々しい野菜と果物、そして丁寧に調合されたお茶が並ぶ。

朝食の品々は、どれも希少な素材で彩られていた。


■朝食

―――――――――――――――――――

・☆☆☆希少な トースト「ウェルス・レアビット」

・☆☆☆☆奇跡の サラダ〈白霧(はくぶ)のリーキ・サラダ〉

・☆☆☆希少な 「ルビー・ブドウ」

・☆良質な ビルベリー

・☆☆☆希少な ハーブティー「ウェルス・ブリュー」

・☆☆☆☆☆伝説の 紅茶『プリンス・オブ・ウェルス』

―――――――――――――――――――


食前の祈りとして、皆で手を合わせる。


「「いただきます!」」


豪華な朝食が始まった。


まずは、"ウェルス・レアビット"を一口。

見た目はシンプルなチーズトースト。

だが、その味わいは一線を画していた。


ライ麦パンの上には、

たっぷりと濃厚なチーズが惜しげもなく乗せられている。


一口かじれば、外はカリッと香ばしく、

とろりとしたチーズが舌の上でとろける。


■☆3 トースト「ウェルス・レアビット」

―――――――――――――――――――

[効果]

・成長[回復力]:中↑↑

・HP回復:極小

・成長[回復力]:小↑


[レシピ]

・☆☆精良な [メドウスイート]

・ミード

・チーズ

・バター

・ライ麦パン

―――――――――――――――――――


次に、サラダに手を伸ばす。

皿の上には、宝石のように輝く〈エメラルド・リーキ〉がふんだんに盛られている。

一口食べれば、リーキの清涼感が口いっぱいに広がり、

ジャガイモの素朴な甘みと卵のまろやかさが絶妙なバランスで調和する。

まるで森の朝露を味わっているかのような、静かな感動が胸に広がった。


■☆4 サラダ〈白霧のリーキ・サラダ〉

―――――――――――――――――――

[効果]

・MP回復:大↑↑↑

・成長[魔力量]:小↑


[レシピ]

・☆☆☆☆奇跡の 〈エメラルド・リーキ〉

・☆良質な タイム

・ゆで卵

・ジャガイモ

・チーズ

―――――――――――――――――――


そして、湯気の立つカップをそっと手に取った。

それは希少なハーブを調合して淹れられた「ウェルス・ブリュー」。

香りは柔らかく、どこか森の妖精を思わせるような幻想的な気配をまとっていた。


ひと口含めば、レディースマントルの清らかな風味が舌の上で広がり、

ヴァレリアンのほのかな苦みが心を落ち着かせる。

ラベンダーの香りが鼻を抜け、ヒースの花が余韻に優しい甘みを添える。


■☆3 ハーブティー「ウェルス・ブリュー」

―――――――――――――――――――

[効果]

・成長[性欲]:中↑↑

・成長[知力]:小↑

・成長[気配]:小↑


[レシピ]

・☆☆精良な [レディースマントル]

・☆良質な ヴァレリアン

・☆良質な ラベンダー

・ヒースの花

―――――――――――――――――――


たっぷりと盛られた果物を、ひとつひとつ丁寧に味わうと、

最後はフィズル自慢の紅茶、『プリンス・オブ・ウェルス』で〆る。


芳醇な香りが鼻をくすぐり、深みのある味が喉を潤す。

まるで王族の朝を思わせるような、気品ある一杯だった。


「…ご馳走様でした」


自然と、心からの感謝の言葉が口をついて出る。

体も心も満たされHP、MP共に全快。


「さあ、行くか!」


満ち足りた朝日を背に浴びながら、ゴブリン退治へと向かった。


☆☆[依頼書]――――――――――

【年次依頼】

・場所:ガルフ・バウ(北部)

・依頼内容:魔獣類―小鬼族の討伐

・納品物:耳

・期限:11月まで

・報酬:

  ―下位種の耳×10 Rb

  ―中位種の耳×50 Rb

  ―上位種の耳×1,000 Rb

  ―幻獣種の耳×10,000 Rb

――――――――――――――――

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