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夜明けの星の黙示録  作者: 妖怪サトリ
第五章 VS赤竜編

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第075話 邂逅

「まぁ!ペンドラゴンじゃない!

 珍しいお客さんを連れているわね!」


黒狼の牙の連中と談笑していたところ、

ギルド受付嬢のマーゼルから声を掛けられた。


「ああ、丁度今日、

 カナンとガルフ・バウの馬車道が開通してな

 町長が逢いたがっていたラグナルも連れて来たぞ」


「あら、そうなの!

 これからカナンへの配達の仕事も増えそうね

 早速、町長へ使いを出すわ」


そう言うと、マーゼルは手際よく使いを出してくれた。

ギルドの動きは早い。こういうところが頼もしい。


「それと、新しく加わったフィズルも、

 同じパーティに登録したいんだが…」


この機にフィズルも冒険者登録しておくことにした。

1人だけ仲間外れにするわけにはいかんからな。


「それじゃ、こちらで登録をお願いね」

「はい。よろしくお願いいたします」


フィズルが手続きをしている間、

クエストボードに目をやると、見慣れない依頼が目に入った。

"年次依頼"と書かれた、小鬼族の討伐依頼書だ。


よく見ると、方角が違うだけで同じ内容の依頼が4種類。

それぞれの紙が、並ぶように複数枚張り出されていた。


「あれはなんだ?」

「ああ、あれはね」


マーゼル曰く、毎年冬前に出される恒例のクエストで、

繁殖力の高いゴブリンの討伐依頼らしい。


冬になると、雪や寒さの影響で冒険者たちの活動が制限されるが、

その間に魔獣たちが繁殖してしまうと、

春には手がつけられなくなってしまう。

これを防ぐために、秋の内に数を減らしたいんだとか。


「そう言うことなら、俺も受けておくか」


ここに来る途中もゴブリンを見かけたので、

ガルフ・バウの北部、カナン方面のクエストを受けることにした。


☆☆[依頼書]――――――――――

【年次依頼】

・場所:ガルフ・バウ(北部)

・依頼内容:魔獣類―小鬼族の討伐

・納品物:耳

・期限:11月まで

・報酬:

  ―下位種の耳×10 Rb

  ―中位種の耳×50 Rb

  ―上位種の耳×1,000 Rb

  ―幻獣種の耳×10,000 Rb

――――――――――――――――


☆☆の依頼書ってことは、シルバー級(上級者)以上か…


―――――――――――――――――――

[冒険者等級]

・  ー:☆☆☆☆☆☆《オリハルコン》級:超越者

・1等級:☆☆☆☆☆ 『ミスリル』級:到達者

・2等級:☆☆☆☆〈プラチナ〉級:一流

・3等級:☆☆☆「ゴールド」級:熟練

・4等級:☆☆[シルバー]級:上級

・5等級:☆アイアン級:中級

・6等級:ブロンズ級:初級

・7等級:カッパー級:見習い

―――――――――――――――――――


「カッパー級でも受けれそうなもんだがな」


そんなことをポツリと漏らすと、

隣にいたカラドクが低く呟いた。


「あまりゴブリンを舐めてかかるなよ」


その声には、経験者ならではの重みがあった。


「ちょうどいい機会だ。皆もよく聞け」


カラドク先生による講義が始まった。

曰く、ゴブリンは上位種になると危険度が一気に跳ね上がるらしい。


上位種は、下位種や中位種を囮や罠にすることがあるらしく、

下位種だと侮って狩りをしていたら、

いつの間にか狩られる側に回っていたなんて事も珍しくないらしい。


"群れで行動する相手を舐めるな"というのが、

カラドク先生の〆の言葉だった。


そうか…相手は野性を生き延びた猛者だ。

上級者以上のクエストなのも納得だ。


「冒険者登録、終わりました」


丁度そこに、フィズルが戻って来た。

ジョブは変更せず、登録だけしたらしい。


「よし、フィズルはペンドラゴンの後衛、魔法使いだ。

 これからよろしくな」


「はい。よろしくお願いいたします。旦那様」


フィズルはどこか照れくさそうに笑う。

魔法使いの役割がくすぐったい様だ。


「本当は、ペンドラゴンには

 もっと高い難易度のクエストを受けて欲しいんだけどねぇ

 緊急クエストでも発行しようかしら…」


マーゼルが呟く。

なんでも、ルベル=オーガの帰還と

ミスリル級昇格祝いが重なり、肉の特需が発生したのだとか。


アイテムボックスを確認する。


■アイテムボックス

―――――――――――――――――――

[素材]

・猪(幻獣種):グリズルファング ×2

・猪(上位種):ゴールデンボア ×11

・猪(中位種):ワイルドボア ×9

・鹿(幻獣種):エイクスニル ×5

・鹿(上位種):ドゥネイル ×13

・鹿(中位種):ミルヴェン ×5

・兎(幻獣種):カーバンクル ×7

・兎(上位種):ジャッカロープ ×15

・兎(中位種):スクヴェイダー ×5

―――――――――――――――――――


「肉ならすぐに卸せるぞ」

「あらホント!?」


マーゼルと相談したところ、

すぐにでも売上を出せる見込みらしく、

ギルドの支払い能力ギリギリまで卸すことにした。


■卸し

―――――――――――――――――――

・猪(幻獣種):グリズルファング ×1

・猪(上位種):ゴールデンボア ×2

・鹿(幻獣種):エイクスニル ×2

・鹿(上位種):ドゥネイル ×5

・兎(幻獣種):カーバンクル ×5

・兎(上位種):ジャッカロープ ×10

 [合計]:320万 Rb

―――――――――――――――――――


320万 ルビー(※約3億2千万円)を受け取る。

内訳は大金貨×20枚、金貨×100枚、大銀貨×200枚だ。


(…思わぬ大金が手に入ったな)


ルベル=オーガの帰還、それに昇級の場に居合わせた事は

俺にとっても幸運な巡り合わせだった。


この金でカナン一帯の経済を回すとするか。


まずは建設費。

早速、グラントハル里長のラグナルに

大金貨10枚、100万Rbを渡した。


「ラグナル、受け取ってくれ。

 カナンの建て替え費用だ」


差し出した金を前に、ラグナルは眉をひそめる。

やはりというか、素直には受け取らない。


「もう受け取っとるわい」


「エル=ネザリも立て替えを頼みたいんだ。

 足りない分は、また稼いで払うからよ」


そう伝えたところで、ラグナルは渋々金を受け取った。

次はダークエルフたちの分。


「カラドク、これは今日の護衛料だ」


差し出したのは金貨10枚。10万Rbだ。

その額を見たカラドクの眉が跳ね上がる。


「バカかッ!お前!」


「臨時収入も入ったしな。

 それに今日は馬車もある。ちょうどいいだろ。

 里の分まで、面倒見てやってくれ」


カラドクは呆れたようで、

パーティメンバーに注意を促しながら、金を受け取った。


「…いいか、お前ら、

 アイツは普通じゃないからな。慣れるなよ」


さてと…


■財布

―――――――――――――――――――

・大金貨 ×10

・金貨  ×14

・大銀貨 ×244

・銀貨  ×10

・青銅貨 ×10

・銅貨  ×90

 [合計]:1,385,190 Rb

―――――――――――――――――――


残り1億4千万円相当。

飯を食ってから、寝具を揃えるとするか―――

そんなことを考えていた時だった。


※ワァァッ!※

※ヒューヒューッ!※


獣人達の声が一斉に上がる。

何事かと振り返ると、ギルドの階段から聞き覚えのある声が下りてきた。


「おう、おめえら!奢られに来たか!」


■フェンリカ

挿絵(By みてみん)


その声の主、フェンリカは、

ミスリル級のドッグタグを胸元で揺らしながら、満面の笑みで姿を現す。


「姉御イエー!!」


黒狼の牙の祝福を一身に受け、

談笑する様子は、まさに昇格の主役そのものだった。


「お!アレク!お前もいたのか!」


見つかった。


「ああ、聞いたぞフェンリカ。おめでとう」


率直に祝福を述べる。

フェンリカの昇格は俺にとってもうれしいことだ。


「ああ、ありがとうよ。

 レイドの時の幻獣種討伐が評価されたみたいでな…」


そう言いかけたフェンリカの目が、ふとある人物を捉える。


「ラ、ラグナル!!」


その瞬間、フェンリカの態度が一変した。

さっきまでの豪快さはどこへやら、

モジモジと体をくねらせ、声もか細くなる。


「ラグナル…そのぅ…一緒に飯を食わねえか?

 星天牙戟(せいてんがげき)の礼もあることだし…

 奢らせてくれ…」


なんだ!?この動きは!?獣人固有の戦の舞か?


「ああ、ええぞ。じゃが…」


ラグナルがちらりと酒場の方へ目を向ける。

既に結構な人数が陣取っていた。


俺たちだけでも30人。

黒狼の牙の面々を加えれば、

さすがに全員は入りきれそうにない。


「そ、そうだな!時間をずらそう!

 アタシも準備したいし…2時間後でどうだ!」


「ああ、ええぞ」


と、いうわけで俺達は昼飯の時間をずらすことになった。


「ええー!!」


腹を空かせて待っていたであろう獣人たちから、

力のない抗議の声が上がる。

だがフェンリカはそれを気にも留めず、

勢いよくギルドの外へと飛び出していった。


「じゃあ2時間後な!必ず来いよ!」


そう言い残したフェンリカの姿は、

通りの向こうへと消えてしまった。


(…準備ってなんだ?)


首を傾げたその瞬間、

今度は聞き覚えの無い声が下りて来た。


「クセ~な、獣共。道開けろ」


振り返ったその先に立っていたのは、

赤い髪に、額から角を生やした女…魔人族のオーガだ。


■スカエルヴァ

挿絵(By みてみん)


その体躯は並の戦士を凌ぐほどに大きく、

ただ立っているだけで圧がある。


だが、この場で暴言を吐いて、ただでは済むまい。

喧嘩になると思い反射的に身構える。


「くっ…!」


ところが、黒狼の牙の連中は、

何も言わずに引き下がってしまった。


(まさかっ)


■"解析"

―――――――――――――――――――

名前:スカエルヴァ Lv.77

HP:1096 / 1370 MP:856 / 1070

種類:亜人類 種族:魔人 種別:オーガ

性別:♀ 年齢:24歳 身長:192cm

ジョブ:

 ・『精鋭冒険者』 Lv.18

 ・『女傑戦鬼』 Lv.12

 ・『傭兵長』 Lv.4

スキル:

 ・『空間把握』

 ・『狂鬼乱舞』

 ・『大乱闘』

称号:

・『ミスリル級:冒険者』

・赤鬼姉妹

―――――――――――――――――――


出やがったな。こいつが噂の"スカエルヴァ"だ。

能力も解析する。


■スカエルヴァ:身体

挿絵(By みてみん)


■スカエルヴァ:道具

挿絵(By みてみん)


■スカエルヴァ:魔法

挿絵(By みてみん)


■スカエルヴァ:生殖

挿絵(By みてみん)


パッと見はただの脳筋女に見えるが、

ある能力が、ひと際目を引いた。


生殖項目の"破壊嗜好"に"屍嗜好"。

え?なにこれ……?どういう趣味だよ…


「アネキ~、クソオス共はほっといて飲もうぜ~」


階段から女がまた1人、姿を現す。


■オリガ

挿絵(By みてみん)


スカエルヴァより更にデカい、オーガの女だ。


■"解析"

―――――――――――――――――――

名前:オリガ Lv.68

HP:1192 / 1490 MP:784 / 980

種類:亜人類 種族:魔人 種別:オーガ

性別:♀ 年齢:19歳 身長:202cm

ジョブ:

 ・『精鋭冒険者』 Lv.6

 ・「アマゾネス」 Lv.28

 ・「傭兵」 Lv.26

スキル:

 ・『空間把握』

 ・「乱舞」

 ・「乱闘」

称号:

・『ミスリル級:冒険者』

・赤鬼姉妹

―――――――――――――――――――


こいつが赤鬼姉妹の妹、"オリガ"か。


■オリガ:身体

挿絵(By みてみん)


■オリガ:道具

挿絵(By みてみん)


■オリガ:魔法

挿絵(By みてみん)


■オリガ:生殖

挿絵(By みてみん)


一部の筋力は俺より上か。

そして妹の方はレズビアンだ。


「ん?見ねえ連中だな…」


スカエルヴァがこちらを見ながら呟くと、

まるでモーゼの奇跡のように道が割れた。


そして、その裂け目を縫うように、

赤鬼姉妹の二人がこちらへと歩み寄ってくる。


(……デカいな)


まさか、この世界に来てから女を見上げることになるとはな。


「そのドッグタグ…てめえが噂のアレクか?」

「ああ、俺はアレーー」


自己紹介しようと思ったが、

返事した段階でスカエルヴァに遮られてしまった。


「よう新入り。ク〇ニしろ」


予想の斜め上を行くご挨拶だ。

頭がおかしいのは本当らしいな。


※ボッキーン※


俺は息子を隆起させて挨拶に応じた。

自慢じゃないが、俺もスキモノでね……へへ…


「なんだお前!?おっ勃ててやがんのか?

 アッハッハッハ!」


スカエルヴァは腹の底から笑い飛ばす。

中々豪快な女だ。場の空気が一気に軽くなる。


この場は穏便に済むかもしれない。

……そう思ったのも束の間、

脳内に危険信号が降りて来た。


"股間を守れ"


第六感が、すぐそこにある未来の危機を告げている。

嘘だろ!?


そしてその直後―――


「オラァ!!」


反射的に手を伸ばすと、

間一髪、股間への膝蹴りを受け止めた。


「ウオッ…!!」


危ねぇ!何てことしやがる!!

第六感の警告が無ければ、

俺の大事な金玉は潰されていたに違いない。


騒ぎを聞きつけたのだろうか、

なんだなんだと筋肉隆々の男たちが集まって来た。


オーガの男に、人間の男…

ルベル=オーガの手下たちだろうか。


「なに姐さんに歯向かってんのよ!」


だが、どことなく様子がおかしい。

男らしくないというか…

種族の垣根を超え、男同士で手をつないでいる奴まで居やがる。


(まさか…こいつら…)


男は去勢されると、男性ホルモンの生産が停止し、

女らしくなると聞いたことがある。

…全員……去勢されたか?


スカエルヴァならやりかねない。


そんなことを考えているうちに、

1人の男が向かって来た。

目つきが妙に挑発的な、人間族の男だ。


反射的に、右拳に無属性魔法を纏い、ぶん殴る。


「ほげぷぅ!!!」


男は見事に吹き飛び、床を滑っていく。

その男の身体を1人のウェアウルフが追いかけていく。


「……ただいまの飛距離、5m!

 まずまずです!アニキ!」


そう報告して来たのは、

ここで最初に絡まれた、あの時のチンピラだ。

いつの間にか舎弟のようなポジションになっている。


「何しとんじゃ!ごらぁー!!」


今度は人一倍体のデカいオーガの男が向かって来た。

恋人をぶん殴られて怒り狂ったか?


こいつは右手では厳しい。左手を使うか。


―――――――――――――――――――

☆6 指輪 《エルネード・リング》

└打撃+50 / ☆破砕+50 / ☆衝撃波+50

―――――――――――――――――――


軽めに魔力を込めて、ぶん殴る。


「ほげぷぅ!!!」


空間を裂く轟音と共に、男は吹っ飛び、

冒険者ギルドの外まで転がり出てしまった。


ウェアウルフのチンピラが慌てて追いかける。


「……12m!新記録です!アニキ!」


やかましいわ。いちいち報告してくるな。


騒ぎが大きくなると、鋭い声がギルド内に響いた。


「コラ!何やってるの!」


受付嬢のマーゼルだ。怒られてしまった……。

そんな空気もどこ吹く風で、赤鬼姉妹は気怠そうに返事をする。


「ヘイヘーイ」

「飲もうぜ~アネキ~」


やられた手下のことなど気にも留めず、

二人はそのまま酒場へと消えていった。


(ルベル=オーガか……

 難しい付き合いになりそうだな)


そんなことを思いながら、マーゼルに謝罪し、

冒険者ギルドを後にした。

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

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