第007話 豊穣
デーモンとの戦闘を終え、
しばらく移動していると、水の音が聞こえてきた。
「川か!?」
音のする方に急いで近づくと川があった。
それも透き通った川だ。目を凝らしてみる。
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・☆☆☆☆☆伝説の 『幻泉イトウ』
・☆☆☆☆奇跡の 〈オーロラいわな〉
・☆☆☆希少な 「霜降り鮎」
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「おお!」
結構な数の魚が泳いでいるのが見える。
それもレアリティの高い魚もいる。
取りたい。魚を取りたい。
しかし取る術がない、どうしたものか・・・
!!
いいアイデアを思い浮かんだ。
自分と川の中にワープホールを作り、
水ごとこちらに流し込んでしまおうという作戦だ。
しかし、すぐに思惑は外れた。
ワープホールは設置できたが、水がこちら側に流れ込んでこない。
手を伸ばすと川の中に突っ込めたが、それだけだ。
「失敗か‥それならこれはどうだ?」
ボックスから武器を取り出す。
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★ 短刀 【地獄痺刃】
└突撃+80 / 斬撃+50 / ☆貫通+80 / ★麻痺+100
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強力な麻痺効果がついた武器だ。
魚をじーっと見つめ、自分と魚のすぐ近くにワープホールを作る。
右手に持った短刀をワープホール伸ばし、そのまま魚を刺す。
魚が硬直したらすばやく左手で捕獲し、
ワープホールから手を引き抜いてボックスへ格納した。
「おし!」
成功だ。この方法でいくらかの魚を捕獲した。
しばらく魚を捕獲していると、
対岸の森に赤色の箇所があることに気づいた。
・・・気になる。
"空間の魔法"
魚の捕獲に満足すると、対岸に転移し、森の中に入っていった。
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・☆☆☆希少な 「ルビー・ブドウ」
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「おお…」
見渡す限りのブドウが目に飛び込んできた。美しい。
どうやらここはブドウの森らしい。
つまみ食いしてみる。
「…うまい!!」
ブドウを食べながら、乱獲する。
目の前にはまだ大量のブドウが実っており、景色が尽きる様子はない。
収穫の際に解析で確認したが、食材にはそれぞれ効果があり、
・キノコ系統:成長[回復力]
・魚系統:成長[体力]
・果物系統:MP回復
となっている。
そしてレアリティが上がると効果も高くなるようだ。
ちなみに、今食べているルビー・ブドウは
MP回復:中↑↑の効果が付いている。
・・・
「ふぅ、もういいだろう」
一通りブドウを乱獲した後、アイテムボックスを確認する。
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・☆☆☆☆☆伝説の 『夢幻マツタケ』 ×4
・☆☆☆☆☆伝説の 『幻泉イトウ』 ×3
・☆☆☆☆奇跡の 〈燻製トリュフ〉 ×9
・☆☆☆☆奇跡の 〈オーロラいわな〉 ×8
・☆☆☆希少な 「蝋色椎茸」 ×21
・☆☆☆希少な 「霜降り鮎」 ×18
・☆☆☆希少な 「ルビー・ブドウ」 ×138
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「これだけ集めればしばらく安泰だろ」
森が危険なのは間違いないが、食料は豊富だった。
森の外では孤独な冒険が待ち受けているかもしれない。
先行き不安だ。できるだけ食材の確保はしておきたい。
空を見上げるといつの間にか日が傾き、
夕方に差し掛かろうとしている。
「そろそろ野営に取り掛かった方がいいか?」
この森は危険だ。早めに安全な場所を確保する必要がある。
衣服を揃えたいが、今晩の寝床が先だろう。
"解析"スキルで自分の状態を確認する。
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名前:アレク Lv.156
HP:1712 / 2360 MP:890 / 2360
ジョブ:
・戦士 Lv.8
・狩人 Lv.3
・ 魔法使い Lv.16
状態:
・▽『呪い:災禍級』
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「ん?呪い??」
いつの間にか状態に呪いがついている。
どういった状態なんだろうか。
"解析"
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・▽『呪い:災禍級』
└効果:病弱・魔力減衰・体力減衰
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要するに体を蝕む効果のようだ。
病弱というのが特に恐ろしい。
こんな森の中で病気になると死んでしまう。
いつかけられた?
ドラゴンとの戦闘後に呪いは無かったはずだ。
怪しいのは・・・あのデーモンか?
今思い返すと、何らかの魔法を行使していた気がする。
あれは呪いだったのだろうか。
ともかく解呪せねば。魔法で解呪はできないか?
★グランドスタッフ 【第六天魔王】を握りしめる
・・・が、ダメ。
イメージが湧かない。呪文が分からない。
背筋が凍る。
今すぐに人里に降りて助けを求める必要がある。
解決するかは分からないが。
「この世界には、
俺しかいないなんてことは無いよな…」
急に不安を感じ、思わず弱気な言葉が出る。
(いや、そんなはずはない)
転生前のポイント割り振り画面を思い出す。
・ラガン村のレイフ
・"イス"ラエルノア
・カナンの集落のイヴ
この世界には誰かが暮らしているはずなのだ。
近くにはいないかもしれないが、どこかにいるはず。
するとイメージが降りてきた。
"探知魔法"
(頼む。見つけてくれっ!)
グランドスタッフを握りしめ、一縷の望みを魔法に託す。
"ノブレス・エクスプロラーレ・ラトゥス・サークルス"
それは、自分を起点としたレーダーのような魔法だった。
感覚だが遠くの生命を感知できる…ような気がする。
半径は5km程だろうか。かなり広大だ。
・・・自分が来た方向、
川の向こう岸には大量の魔力と生命力を感じる。
魔物がうじゃうじゃいるようだ。
そしてひときわ大きな反応がある。
おそらく、今朝戦闘になった
"赤竜"《アルバストラス》だろう。
・・・
(今度会ったらたっぷり可愛がってやるからな)
一方、自分の向かいの方角は反応が点在しているものの、
数は少ないようだ。
「む?」
5km程先に、生命力はあるが魔力が薄い集団の反応を確認できた。
その集団に集中する。
1・2・3…全部で6。
それに、移動している?
「……人か?」
うまく説明できないが、直感で人だと感じる。
胸が高鳴る。どうしても確認したい。
目標までは"空間の魔法"で飛ぶとして、
自分の体に目を移す。…フルチンである。
だが、この際そんなことは言っていられない。
目標は移動しているのだ。すぐに行動しなければ。
目標をイメージしながら魔法を念じる
"ウラノス・マギア"
目の前に別の空間ができた。
(武器を持っているとトラブルの元になるか?
・・・ただ、手放すのは怖い。
それに長杖位なら大丈夫だろう)
アレクは意を決すると
★グランドスタッフ 【第六天魔王】 を握りしめたまま
ワープ・ホールへ飛び込んだ。
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