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夜明けの星の黙示録  作者: 妖怪サトリ
第四章 魔法教団編

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第057話 不思議の国のアリス

「源泉!?温泉か!?」

「温泉!温泉!」


ドワーフとノーム達は興奮気味に喰らいついてきた。


なんでも、妖精族にとって温泉は

自然がもたらす奇跡の泉という扱いらしく、

ドワーフの故郷、旧ハンマーストロムでは名物だったらしい。

懐かしさもあってか、温泉を作りたいと申し出てきた。


これは願ってもない話だ。

ドワーフ・ノームたちで協力して温泉づくりをすることになった。


ただ、見つかった源泉はかなりの高温で、

しかも強い酸性を帯びているようだ。

そのままでは危険なため、まずは簡易的な湯畑を設けることにした。


「温湯が完成したら、カナンの名物になるかもしれんな」

湯気が立ち上がるその光景に、期待が溢れる。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


本格的な作業に入る前に、

皆にルビー・ブドウを振る舞い、朝食を取った。

―――――――――――――――――――

ルビー・ブドウ ×100

―――――――――――――――――――


※ワイワイ※

※ガヤガヤ※


源泉を前に、皆興奮を押さえられない様子だ。

湯の香りが漂うその場に、期待と好奇心が静かに広がっていく。


そんな中、フィズルがそっと近づいてきて、

申し訳なさそうに頭を下げた。


「その、申し訳ありませんでした。

 まさかこんな強力な杖だとは思わなくて…」


そう言って彼女は【第六天魔王(だいろくてんまおう)】 を差し出してきた。


むしろ褒めたいくらいなのだが、どうしようか。

魔法教団に着けばそのままサヨナラになるかもしれん。

何とかここに引き留めたいものだ。一芝居打つか。


「うむ。俺の心にもポッカリ穴が開いたぞ」

「え、でも…さっきは喜んで…」


まずい。いきなり論破されたぞ。

こうなったら多少強引に行く。


「ルビー・ブドウは旨かったか?」

「ええ、絶品でした」

イイゾ


「腹は膨れたか?」

「ええ、こちらにお世話になって以来、

 空腹になった記憶がありません。

 このご恩をどうお返しすればいいか」

キタ!


「では温泉作りを手伝え!」

「えっ―――」


ひとまずこれで、フィズル ゲットだぜ!


「何にせよ今日は魔法教団へ向かうぞ。

 そろそろ行くか!方角はどちらか分かるか?」


タリオンが指をさし教えてくれる。

「こちらから北西15Km程先になります」


「よぅし。方角が分かれば問題ない。

 俺様の特別な魔法で、刻んでいくぞ」


こうして、ペンドラゴンの4人とクロエ、

そして魔法教団所属のフィズル、タリオンの

計7人はラエルノア魔法教団を目指した。


"ワープ"


■ロスデア島_ウェルス地方

挿絵(By みてみん)


四度目のワープを終えたころ、

魔力の密集、魔法教団らしき集団の生命反応を捕らえた。

ざっと見積もって、その数4~500。


その中には魔獣の気配も混じっている。

人の反応は生命力こそ低いが、魔力が濃い。


「…強いな」

以前、タリオンが言っていたことを思い出す。


"—――私はただの使い走り(パシリ)でして、

教団には私とは比較にならない高名な魔法使い達が沢山おりますよ"


あれは謙遜ではなかった。

今なら、はっきりとわかる。


転移先を探すため、さらに探知魔法を巡らせる。

すると、魔法教団のすぐ近くに、

ぽっかりと空いた生命反応の空白地帯を見つけた。

次のワープはそこだ。あとは歩いて接触する。


―――俺は、魔法教団から呼び出しを受けている。

こういう場合、大抵ろくなことが起きない。

敵となるか、味方となるか。

それは、今日の振る舞いで決まるわけだ。


深く息を吸い、気を引き締める。

そして、五度目のワープを刻んだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ワープ・ホールから降り立つと、

そこは花の咲き誇る森の中だった。


柔らかな陽光が木々の隙間から差し込み、

色とりどりの花々が風に揺れている。

その光景は、まるで夢の中の庭園のようだった。


「…花畑?」


自然のままの野花というよりも、どこか人の手が加えられたような、

整った美しさがそこにはあった。


後からイヴ達も顔を出すと、目の前の景色に息を呑んだ。


「わぁ~」

「素晴らしい景色ですね…」


風が通り抜けるたびに、花々の香りがふわりと漂う。

甘く、優しく、どこか懐かしい香りだ。


最後に顔を出したタリオンは景気を見て驚愕し、

そして叫んだ。

「こ、ここはっ…!

 アレク様!今すぐ離れてください!」


同時に、何らかの魔法が行使される。


"香×幻影×使役×召喚"

"アリス・イン・ワンダーランド"


突如景色は夜に変わり、

木々が笑い、花は唄いだす。


「なんだ!?」


慌ててアイテムボックスから

第六天魔王(だいろくてんまおう)】 を取り出す。

―――――――――――――――――――

★ グランドスタッフ 【第六天魔王(だいろくてんまおう)

└外練+100 / 魔術+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★六重奏

―――――――――――――――――――


そして同時に、空から大量の生命反応が現れた。


それらは人の形をしているが、背には翼があり、

宙を舞いながら、まるで舞踏会のように踊っていた。


その瞳は冷たく、笑みは歪んでいる。

そしてこちらを見てあざ笑っているのだ。


「なんだ…こいつら…」


敵を視界に捉えたのに、その正体が分からない。

認知、認識能力が働いていない。


「お前ら!!俺から離れるなよ!!」


無×雷×麻痺の魔力を練成すると、

球体のイメージを思い描き、仲間全員を包み込むように展開した。

一応、防御魔法のつもりだ。

もっとも、これが有効な防御となっているか不明だが…


タリオンは必死に警告する

「アレク様!決して攻撃してはなりません!」


攻撃するなと言われても、異形の者達に囲まれ、

何時攻撃を受けてもおかしくない状況だ。

空気はひりついている。


それに、遠くから別の生命反応も向かって来ていることも感じる。

この反応は…魔獣だ。それも高レベル。

このままだと全滅するぞ。


その時、空で踊っている異形の者達の姿が大きくなり始める。

大きくなり始めたのは奴らだけではない。

周りで騒いでいる木や花たちも大きくなり始めた。


いや、敵が大きくなったというよりかは

自分達が小さくなってしまったんじゃないだろうか。

そんな錯覚に陥る。


タリオンが必死に叫ぶ

「アリス様ー!敵ではございませんー!!

 ここにフィズル殿もおりますー!!」


タリオンがそう叫ぶと、

巨大化していた周りの景色が小さくなり始め、

空も明るくなり始めた。


空で踊り狂っていた異形の者達の姿も、

今ならはっきりとわかる。

その正体は、召喚されたのであろう天使達だったのだ。


「なっ…!」


■召喚

―――――――――――――――――――

・天使(神獣種):セラフィム Lv.91

・天使(幻獣種):アークエンジェル Lv.75

・天使(幻獣種):アークエンジェル Lv.72

・天使(幻獣種):アークエンジェル Lv.68

・天使(上位種):エンジェル Lv.55

・天使(上位種):エンジェル Lv.51

・天使(上位種):エンジェル Lv.48

・天使(上位種):エンジェル Lv.45

・天使(上位種):エンジェル Lv.44

・天使(上位種):エンジェル Lv.44

―――――――――――――――――――


「何だこの量は…それに、神獣種だと!?」


天使たちは次々と姿を消していく。

魔法が解かれたのだろう。


そして遠くから近づいていた魔獣の群れも姿を現した。


■使役

―――――――――――――――――――

・猫(幻獣種):ケット・シー Lv.77

・犬(幻獣種):クー・シー Lv.75

・兎(幻獣種):カーバンクル Lv.66

・兎(幻獣種):カーバンクル Lv.65

・兎(幻獣種):カーバンクル Lv.62

―――――――――――――――――――


今は統率されたようにピタッと止まり、

こちらを警戒している。使役されている魔獣だ。


そして魔獣に守られたその場に

1人の少女が座っていることに気づく。


■アリス

挿絵(By みてみん)


「そんな馬鹿な…」


探知魔法で気付けなかった。

視界に捉えて、初めて強大な魔力の持ち主がそこにいることに気付いた。


"解析"

―――――――――――――――――――

名前:アリス Lv.88

HP:848 / 1060 MP:1304 / 1630

種類:亜人類 種族:エルフ 種別:ウッドエルフ

性別:♀ 年齢:222歳 身長:139cm

ジョブ:

 ・『大魔導師』 Lv.30

 ・『高位召喚師』 Lv.30

 ・『名匠庭師』 Lv.25

スキル:

 ・『瞬唱』

 ・『四重奏』

 ・『以心伝心』

 ・『極上仕立て』

称号:

 ・《王杖》

 ・不思議の国

―――――――――――――――――――


Lv.88…それに"王杖"という称号。

かなり高名な魔法使いのようだ。


すると少女:アリスは語り掛けて来た。

「あなた達、一体どこから現れたの…?」


タリオンが慌てて説明する。

「こちらの御仁が、ラエルノア様より

 お呼び出しを受けているアレク様でございます。

 彼の特別な魔法でここまで瞬間移動してきました。

 私の不案内のため、誤ってアリス様の庭園に踏み入ってしまいました。

 申し訳ありません」


ここはアリスの庭園だったか。

勝手に踏み入ったこちらが悪いな。

自己紹介を兼ねて、謝罪する。


「アレクだ。

 生命反応がない場所に降り立ったつもりだったが、

 君の庭園だったか。すまなかったな」


「あなたが噂のアレクね。

 瞬間移動…そんな魔法が…どおりで… 

 さすがラエルノア様が言うだけあるわね。

 人間だと気付けなかったわ。ごめんなさいね。」


アリスは何やら一人で納得している様だが、

ひとまず、殺し合いにならずに済みそうだ。

よかったよかった。


「あなた、人間族のようだけど、本当に人間なの?」


それは俺が言いたいくらいだ。

なぜ探知魔法で感知できない。


そしてなんだ先程の魔法は。

アリスの能力詳細も確認する


■アリス_身体

挿絵(By みてみん)


身体項目の気配:Lv.92、

これが探知魔法で気付けなかった原因か。


■アリス_道具

挿絵(By みてみん)


■アリス_魔法

挿絵(By みてみん)


■アリス_生殖

挿絵(By みてみん)


魔法項目の幻影:Lv.50、

これに錯覚を見せられていたのか。

強力な効果だ。


…そして幻影に並ぶ伝説の能力、"忘却"の魔法だと!?

恐ろしい魔法もあるもんだ。


アリスの能力をジロジロ見ていると、

タリオンが紹介してくれた。


「アレク様、こちらは"王杖"アリス様です。

 ここ、ラエルノア魔法教団は高名な魔法使いの集いですが、

 その中でも序列第3位に列せられる方です」


彼女でも序列3位なのか。まだ上にいるのかよ。


「私は一足先にラエルノア様へ報告してまいります。

 フィズル殿、案内を任せてよろしいでしょうか」


「わかりました。

 それではアレクさん、行きましょう」


タリオンはそう言い残すと、一足先に主の元へと向かった。

ここからはフィズルが案内してくれるようだ。


いきなりトラブったが、

この地に集う魔法使い達が、並外れた使い手であることは

肌で感じ取ることができた。


そしてこの集団の頂点に立つ

【聖杖】"イス"ラエルノアとは一体、どれほどの―――


胸の奥にざわめきを感じつつ、ラエルノアの元へと向かう。

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

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