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夜明けの星の黙示録  作者: 妖怪サトリ
第一章 賽は投げられた

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第005話 敗走

何とかドラゴンから身を隠し、

茂みの中で感覚のない自分の足に目を配ると

一目で重度の火傷を負っていることが分かった。


"水の魔法(アクア・マギア)"


火傷の治療の心得は無いが、ひとまず全身に水をぶっかけた。


「いってぇ…」


背中が焼けるように痛む。

足の感覚は……まだ戻っていないようだ。

これほどの火傷を負っているのに、のたうち回らずに済んでいるのは、

きっとアドレナリンが出ているせいだろう。


初めての戦闘で、しかも死にかけた。

心臓はまだバクバクと鳴り響いている。

恐怖と興奮が入り混じった、奇妙な感覚。


今すぐに治療が必要だ。それもとびっきり高度な治療が。

すると頭の中にイメージが流れ込んできた。

(癒しの魔法は"エイル"というのか)


"偉大なる癒しの魔法(イス・エイル・マギア)"


念じると、じんわりと全身が暖かくなっていくのが分かる。

癒しの魔法が、確かに作用しているようだ。


魔力を途切れさせないよう、慎重に流し続ける。

治療を進めながら、同時に自分の状態も確認していく。

どこが傷んでいるのか、どこまで動けるのか――

冷静に、そして確実に把握していく。


"解析"

―――――――――――――――――――

名前:アレク Lv:Lv.156

HP:830↑ / 2360 MP:1575↓ / 2360

―――――――――――――――――――


治癒魔法の効果か、

HPがかなりの勢いで回復しているのが確認できる。

その代わり、MPは緩やかに減少中だ。


戦闘前のHPは1900近くあったはず。

それが今は800付近まで落ちている。

赤竜の攻撃をまともに受けたのは、最後の一撃だけ――

それも、かすった程度のはずだ。


(かすった程度でこれかよ…)


ここまでダメージを負ったのは全裸なのが悪いのか?


一方で、MPは思ったより残っている。

かなり魔法を連発した気がするのに、まだ余裕がある。

ステータスの続きを確認する。


―――――――――――――――――――

ジョブ:

 ・戦士 Lv.1

 ・狩人 Lv.1

 ・ 魔法使い Lv.11

スキル:

 ・二重奏

 ・【無詠唱】

 ・【精密解析】

―――――――――――――――――――


「ん?」

ジョブ:魔法使いのレベルがLv.1 → Lv.11に上がってる。

さっきの僅かな戦闘で上がったのか?


スキルにも、何か違和感がある。

二重奏は魔法を重ね掛けするスキルのようだが、

先程の戦闘では二重どころじゃなく重ね掛けしていた気がする。

それに、なぜかそれが"できる"イメージもあった。


ふと、手に持っている杖に目を向ける。

「お前のおかげなのか?」


特別な武器だということは知っているが、

どういったものかよく知らない。

赤竜を見て慌てて取り出して、ちゃんと調べていなかった。

杖に視線を向け、静かに念じる。


"解析"

―――――――――――――――――――

アイテム名:第六天魔王(だいろくてんまおう)

分類1:長柄

分類2:グランドスタッフ

等級:★特別

設計:ミスリル:1 / 世界樹の枝:3 / +魔法(無)

効果:外練+100 / 魔術+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★六重奏

使用条件:知力:Lv.90 / 魔力(量):Lv.70 / 魔法(無):Lv.80

―――――――――――――――――――


ほぅ。あれだけ魔法を連発したのにもかかわらず

MPの消費が少なく済んだのは"外練"の効果か?

魔力の能力項に"内練"、"外練"とあったが、おそらく

内練 = 体の内で練成、外練 = 体の外で部練成

なのだろう。


魔力は外部で練成した方が効率がいいようだ。

ちなみに俺は内練、外練は共にLv.80である。


そしてやはりあったか。"★六重奏"

魔法を六つ重ね掛けだと思うが、戦闘では2つ位だったように思う。


自分のステータスの装備項目をみるとやはり付いていた。


「※下降補正:大↓↓↓」


この武器の使用条件に俺のステータスが届いていない。

特に知力:Lv.90 が必要なのに、俺の知力はLv.50、

…全然届かないのである。


今のうちに、自分が持っている7つの武器の効果を確認しておこう。

このまま逃げることになったとしても、

武器の性能を知らなければ、いざという時に対処できない。


"収納"の中にある全ての武器に対し、

解析をかけた。


"解析"

―――――――――――――――――――

★ 短刀 【地獄痺刃(じごくびじん)

└突撃+80 / 斬撃+50 / ☆貫通+80 / ★麻痺+100


★ 妖刀 【冥狂血吸(めいきょうちすい)

└斬撃+100 / ☆切断+80 / ★MP吸収+50 / ★HP吸収+50


★ 大金棒 【大激震(だいげきしん)

└打撃+100 / ☆破砕+80 / ★衝撃波+100


★ 魔法弓 【夢弦(むげん)・オロチ】

└突撃+80 / 貫通+50 / ☆属性魔法+50 / ★追尾+100


★ 巫女鈴 【聖鈴・神楽(せいれい・かぐら)

└外練+100 / 魔法+40 / ☆魔法(音)+80 / ★魔法(癒)+100


★ グランドスタッフ 【第六天魔王(だいろくてんまおう)

└外練+100 / 魔術+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★六重奏


★ 魔導書 【八咫の記(やたのき)

└外練+100 / 魔導+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★神使

―――――――――――――――――――


使用条件の能力Lv指定には共通項目があることがわかり、

全ての武器が

・身体Lv.90 / 道具 or 魔法Lv.70 / 魔法Lv.80

で成り立っていた。


「…」


もう一度自分の能力Lv.を確認する。


「む?」


能力レベルは全て10の倍数で割り振ってきた。

それなのに

・身体 - 特別 - 第六感 Lv.71

とLv.1上がっている能力があるのだ。


「流れ込んできた危険信号はこの能力のおかげか?」


また、あの丘の上では不可解なこともあった。

知らないことをイメージできたり、

遠くの鳥の群れがグリフォンの群れだと認識できた。

あれはおそらく

・身体 - レア - 認知 Lv.80

・身体 - 伝説 - 認識 Lv.60

の能力が作用したのだろう。


これらの能力が無ければドラゴンとの戦闘で

何もできず死んでいただろう。

恐ろしすぎる。全く初見殺しにもほどがある。


また、俺の能力レベルは一番高いのを選んでも

・身体Lv.80 / 道具Lv.60 / 魔法Lv.80

だったので、先ほどの武器の使用条件は全て満たしていないことが分かった。


転生時に割り振らなかった

《保有ポイント:278p》を確認でき、

使い道を決める必要があるが

今ある情報で割り振り先を決めるのは少し怖い。

もう少しこの世界の仕組みを理解してから判断したい。


そうこうしているうちに随分体が楽になってきた。

いろいろ確認している途中も

グランドスタッフ 【第六天魔王(だいろくてんまおう)】 は離さずに

自分の体に癒しの魔法をかけ続けていた。


状況を確認してみる。

―――――――――――――――――――

名前:アレク Lv:Lv.156

HP:1852↑ / 2360 MP:1491↓ / 2360

―――――――――――――――――――


よし。HPはほぼ戦闘前水準まで戻った。

このまま全快までもっていってもいいかもしれないが、

MPも気になるので、この位にしておく。


癒しの魔力を切って治癒を終えた。

掛かった時間は体感にして3分位だろうか。

これはかなり早い回復だろう。

現在医学の最高峰でも3分でここまでの治療などできないはずだ。


「魔法ってすげえ…」


足にはまだ火傷の後らしきものが見えるが、

機能的には問題ないし、全快するだろうという予感もある。


動き出す前に、新たに取得した二重奏を少し検証したい。

俺は何ができて、何ができないのか?


グランドスタッフ 【第六天魔王(だいろくてんまおう)】を収納に格納する。

これで裸一貫である。


魔法で右手に火を、左手に水を練成してみる。

外にある魔力を利用するイメージだ。


すると…

大気中に浮かんでいる何かを集めて

魔力を練成していることが"認識"できる。


(これが"外練"という奴か。内部で魔力を練るより少し遅いかな?)


頭の中で魔法を唱える


"火の魔法(イグノ・マギア)"

"水の魔法(アクア・マギア)"


成功だ。

イメージ通り右手に火を、左手に水が生成された。

このまま魔力を継続しながら、癒しの魔法重ね掛けしてみる


「むむ」


さっきまで浮かんでいた癒しの魔法を練成するイメージが湧かない。

一応、呪文を念じてみる。


"癒しの魔法(エイル・マギア)"


やはりだ。何も起こらない。

素の状態で魔法を同時に行使できるのは二つまでなのだ。

すると、ドラゴンとの戦闘で利用した

土の盾+水はこのスキルがあれば再現できるか?


右手の火を盾に変形しようとしたが

イメージが降りてこない・・・火の盾を生成できない。


「あれ?」


念じてみてもスンともいわない。手順に法則があるのか?

成功した手順を再現すべく、盾を生成してから水を生成してみる。


"火の盾の魔法(イグノ・バリス)"


右の掌に小さな火の盾が生成された。

ここまではうまくいった。


しかし今度は左手に水の魔法を生成するイメージが湧かない。

これ以上魔法を生成できるイメージが無い。

どういうことだ?左手に同系統の火の魔法は?

…これもダメか。


「どういうことだ?」


もしかして火+盾でこの状態がすでに二重魔法なのか?

こうしていると、突然理解した。


"無属性魔法(ノドス・マギア)"だ


今出力している「火の盾の魔法」を「火の矢の魔法」に形を変えたいが、できない。

一度魔法を切って、新たに練成すると「火の矢の魔法」が生成できた。


そうか。盾や矢というのは"無属性魔法(ノドス・マギア)"で形成しているか。

とすると、ドラゴン戦での土の盾+水は三重奏ということになる。


…"認知"能力が作用したようだ。二重奏を理解できた。


茂みから身を乗り出し、山の尾根から

そーっと丘の方を確認した。


まだ白い煙が立ち上っている。

水蒸気のようだが、火災が発生しているかどうかは判別できない。

赤竜も、どうやら地面に留まっているようだ。


執拗に追いかけ回されることはなさそうだ。

少しずつ、心の昂ぶりも落ち着いてきた。


「ふぅ、そろそろ移動するか」


…俺はドラゴンから逃げたわけじゃない。

これは戦略的撤退なのである。


何の準備もなくフルチン+木の棒一本でドラゴンに立ち向かったのだぞ?

むしろ、これは精神的勝利と言っていい。


「"赤竜"《アルバストラス》ね。覚えたぞ。」


そう吐き捨てるように言い放ち、

丘に背を向けて――山を下り始めた。

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

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