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夜明けの星の黙示録  作者: 妖怪サトリ
第四章 魔法教団編

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第047話 ダマスカス鋼

カナンに着いた後、サクラにフィズルを紹介する。

珍しい客人にカナンの住人や仕事を終えたドワーフ達も集まって来た。


ノーム達はそんな住人達を前にしてどこか緊張している面持ちだ。

今日は一緒に飯を食うように計らってみるか。


「実はいい肉が取れてな。皆で食おうぜ」


そう言ってアイテムボックスから鹿肉を取り出した。

―――――――――――――――――――

・鹿(幻獣種):エイクスニル ×1

―――――――――――――――――――


「なんじゃこの怪物は!」

「今さっきまで生きていたみたいだ…」


住人たちは驚きつつも、すぐに解体作業に取りかかった。

その夜、カナンの人間族、ドワーフ、ノームたちが集まり、キャンプファイヤーを囲んだ。

火の上では肉がじゅうじゅうと焼け始め、香ばしい匂いがあたりに広がっていく。

ルビー・ブドウも追加だ。

―――――――――――――――――――

・☆☆☆希少な 「ルビー・ブドウ」 ×100

―――――――――――――――――――


「う・・・うまいっ!」

「~~~っっっ!」


どうだ。うまいだろう?フフン?


飯が進み、ドワーフ達の酒が加わると談笑が聞こえて来た。

ノーム達もうまく輪に加われたようだ。

しめしめ。


離れて1人で飲んでいるラグナルを捕まえると、

今日の出来事を伝えた。


「ガルフ・バウの町長:タイラスに会ってな。

 ラグナルに会いたがっていたぞ。

 "好きな酒を用意して置くから、一緒に酒を飲もう"

 だってよ」


ラグナルは少し沈黙すると。

嬉しさと悲しさが混ざったような顔で答えた。

「…そうか。会いに行くのは遠慮しておこう。

 タイラスは元気だったか?」


反応からしてタイラスの事を嫌っている訳ではなさそうだ。

何があったか知らんが、

あまり爺さんたちの関係に深く踏み込むのもな…


「…ああ、タイラスの爺さんは元気だったぞ。

 どこか威厳のある人だった」


話を変えてみるか。


「そういえばな、あの両手剣、

 ガルフ・バウで5000 Rbで売れたぞ」


大銀貨5枚を渡そうとすると、

ラグナルはそれを抑止して提案してきた。


「それは受け取れんよ。

 それよりこれからもたまにアレクに渡すから、

 取引を仲介してくれると助かる。

 取り分はお主が決めてくれて構わん」


なんだ?俺に利益を分けようとしてくれているのか?

いや、違うな…もっと後ろめたい何かを感じる。


「ガルフ・バウでは100倍で売れたんだぞ?

 直接売りに行けばいいじゃないか。

 それともニースの町に何かあるのか?」


ラグナルは言い辛そうに伝えて来た。

「ニースの町というのはブラスデン騎士団領の人間族の町でな…

 アレクよ、儂らは生きていかなくちゃならんのじゃよ…」


ここまで言ってようやくピンときた。

金曜会の時に話してくれた

"ヴィーナス・クルセイ(第一回金星十字軍)ダーⅠ"

ってやつだ。


50年前、獣人族と妖精族は共に人間族と戦い、そして負けたんだったな。

だからラグナルは人間族にボラれてても文句を言わずに共生を選んできた。


そして再び獣人族と手を組んだと疑われないように

ガルフ・バウへ近づかないようにしている。

そんなところか。


…だがそれは50年も前の事なんだろう?


「ラグナルよ、いつまで過去に囚われている。

 "勇敢"の名が泣くぞ。

 ラグナル達が作る武器は素晴らしいものだ。

 ちゃんと評価してくれる所に卸そうじゃないか。

 ニースの町がアヤつけてくるってんなら、

 俺がぶっ飛ばしてやる」


いつの間にか話を聞いていたドワーフ達も加勢する。

「儂らは軽く見られている!」

「そうだ!そうだ!」


皆どこかうっぷんを感じているみたいだ。

「ガルフ・バウでは短剣、片手剣、槍の需要が高いそうだ。

 それと、あの"黒狼の牙"のフェンリカもラグナル達が作るハルバードを所望していたぞ。

 どうだ?ラグナル、ガルフ・バウの為に打ってみないか?」


周りにも押されたラグナルは

ようやく決心してくれたようだ。


「なんじゃみんな…騎士団が怖くないのか…

 …わかった。誇りを取り戻そう」


ラグナルの決心にうおおお!!と盛り上がる。


「じゃが問題があってな―――」


ラグナルの話によると、

ドワーフが作る武器の真骨頂は、ダマスカス鋼で作る武器にある。

しかし、グラントハルで採れる鉄鉱石だけでは、ダマスカス鋼を作るのは難しいらしい。

もっと質の高い鉱石があれば、どこに出しても恥ずかしくない、

胸を張れるような武器が作れるそうだ。


その話を聞いて、森の奥で見た鉱石を思い出した。

―――――――――――――――――――

・☆☆☆☆☆☆神話の 《アダマンタイト》

・☆☆☆希少な 「金」

―――――――――――――――――――


「そういえば森の奥地で金とアダマンタイトを見つけたな。

 助けになりそうか?」


!?

話を聞いたドワーフ達は固まってしまった。


「アダマンタイトと言えば『伝説』いや、その上の

 《神話》の鉱石じゃないか…その話、本当か?」


「ああ、だが危険な所にあってな。

 丁度、明日黒狼の牙とレイドを組むことになってるんだ。

 一緒に見に行かないか?」


そこにラウザも乗っかって来た。


■ラウザ

挿絵(By みてみん)


「しししし!棟梁!だから言っただろう?

 東の山には宝が眠ってるってよ!

 アタシも連れてってくれよ!」


「こりゃ!生意気じゃぞ!ラウザ!

 …分かった。アレク、お願いできるか?」


ラグナルはラウザを諫めると、

提案に乗っかって来てくれた。


「鉱石を取りに行くんだって?僕たちも力になるよ!」


ジョブ:「鉱夫」持ちのノーム達も立候補してきた。

よしよし。これはありがたい。

ノーム達も随分打ち解けてきたようだ。


話はまとまったな。丁度飯も終わった。

そろそろあのお子様(アウラ)をエル=ネザリへ帰そう。


「それでは決まりだな!明日はよろしく頼むぞ!

 アウラ、そろそろ帰るか」


そう言ってアウラを連れてエル=ネザリへ飛んだ。

"ワープ"


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「アウラ、おかえり」

エル=ネザリへ着くと、クロエが迎えてくれた。


月冥樹(げつめいじゅ)の事だがな…」


ガルフ・バウでの情報収集が厳しそうな事を伝えると、

クロエはそうか・・・と落ち込む。

だが、まだ俺は諦めたわけじゃないぞ。


「今カナンにノーム達が来ていてな、

 ラエルノア魔法教団のフィズルという奴もいるから、何か知らないか聞いてみるよ。

 それでもだめだったら、魔法教団へ行こうと思う」


「そうか。何から何までありがたい。

 よろしく頼む」


来たついでに獲物を分けようと思ったが、

既に結構な獲物が仕留められていることに気づいた。

―――――――――――――――――――

・鹿(下位種)エイルウェス ×5

・猪(下位種)ワイルドボア ×4

・猪(中位種)ワイルドボア ×1

―――――――――――――――――――


そして、獲物を解体する人間族の男が目に入った。

捕虜となっているカラドクだ。

だが、何やら様子がおかしい。

まるで慕われているようではないか。


「ああ、これか。カラドクが奮闘してくれてな」


クロエの話によると、捕虜として

狩りに加わっていたカラドクは凄腕のようで、

一緒に狩りに出ていた仲間からも慕われ始めているらしい。


今も獲物を解体するカラドクの周りをダークエルフの少女達が取り囲んでおり、

技術を盗もうとしている様だ。

少女達の質問に答えるカラドクの姿が確認できる。


元々、10体の獲物を収めれば捕虜から解放の約束だったらしく、

カラドクは今日で解放とのことだ。


「ここに居てもらえると助かるんだが…」


何と!クロエまで!

カラドクの解放はどこか口惜しい様子だ。

あの野郎、こんな短期間で信頼を勝ち取りやがって

…ぐぬぬ


しかし、捕虜の立場でここまでやったんだ。

俺もカラドクへの態度を改めよう。


そういえば…と

ガルフ・バウで動物の皮が卸せそうなことと、相場を伝える。

―――――――――――――――――――

☆☆☆☆奇跡の 〈ゴールデンボアの厚皮〉 5,000 Rb

☆☆☆☆奇跡の 〈ゴールデンボアの上皮〉 3,000 Rb 

☆☆☆☆奇跡の 〈ゴールデンボアの皮〉  800 Rb

―――――――――――――――――――


「どうだ?どうせなら、冒険者に登録しないか?」


クロエにそう持ちかけると、

こっそり耳を澄ましていた少女達は興味津々の様子だった。

町の暮らしや営みに、好奇心をくすぐられたのだろう。


「それはいい考えだが…」


そう言いながら、クロエはカラドクに視線を向けた。

少女たちも次々にカラドクへ目を向ける。


…確かにカラドクはゴールド級冒険者だ。

この中で一番経験がある。


「なんだ?

 …冒険者なんていいもんじゃねぇぞ。

 やめとけ」


答えを求められたカラドクにやんわり拒否された。


参ったな。

里のみんなはカラドクが留まることを望んでいる。

仕方が無い。俺も頭を下げるか。


「カラドク、俺からも頼む。

 お前の事を慕っている少女たちが

 冒険者になるのを見届けてくれないか」


「…元々救われた命だ。好きに使え」


カラドクは折れてくれたようだ。

よしよし、この里に冒険者パーティが立ち上がれば金稼ぎの手段が増えるはずだ。


しかし、町に行くには支度金が必要だな。

そのまま出してもいいが…


「明日ラグナル達と森の奥へ鉱石を取りに行く予定でな。

 "黒狼の牙"の精鋭達も加わる予定だ。

 試しにそこに加わらんか?もちろん報酬は出す」


提案すると、カラドクは考え込む。


「…そのドッグタグ、まさか『ミスリル級』か?

 お前らみたいなバケモノと一緒にするんじゃねぇ

 無理だ」


拒否られてしまった。どうしよう。

落ち込んでいると。カラドクの方から条件を提示してきた。


「・・・俺達を戦力に含めないこと。

 それと危険と判断したら即撤退できることが条件だ」


「わかった。それで問題ない。

 それじゃ朝、明日纏まってカナンへ来てくれ」


話がまとまると少女達がキャーキャー騒ぎ出す。

カラドクはかなり慕われている様だ。

俺も負けてられんな。


そう対抗心を燃やすと、

町で仕入れたベッド一式を取り出した。

―――――――――――――――――――

[ウールのベッド一式]

・キングサイズ ×2

・クイーンサイズ ×2

―――――――――――――――――――


「これはいいベッドだ。

 これから順次仕入れるから楽しみにしておけ!」


少女たちの黄色い歓声を受ける。

どうだ?カラドクよ。俺もモテるんだぜ?


アレクは歓声に満足すると里を後にした。

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

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