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夜明けの星の黙示録  作者: 妖怪サトリ
第一章 賽は投げられた

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第001話 人間のクズ

この世にはクズがいる。俺のことだ。


生まれたときから病に伏し、

人様に助けを乞わなければ生きていけない存在だった。

善をなす力もなく、悪をなす意志もない。

眠っているのか、目覚めているのかもわからない。

そんな、曖昧な人生だった。


神はなぜこのような存在を生み出したのだろう。

何らかのカルマの清算なのだろうか。

それとも、ただの悪戯だろうか。


自信というものを持ったことは一度もない。

希望は、ゆっくりと、確実に消えていった。

今、命の灯が、風に揺れる蝋燭のように消えかけているのを感じる。


勝手な苛立ちを親にぶつけ、

その手を自ら振り払ったことを、今さらながら悔いている。


17歳の誕生日は、どうやら迎えられそうにない。

せめて最後に感謝を述べたいが、それも叶いそうにない。


後悔の念が押し寄せてくるが

もはや感情は起こらず、涙はでない。

次第に意識は朦朧とし、闇に落ちていった。


(これが死か…)


ーーー


…?

全身が温かい光に包まれる感覚を覚え、

目を開けると、後光の中に輪郭だけが浮かぶ女性の姿を捉えた。


………女神だ。

説明はできない。だが、確かにそうだと直感した。

その光からは、無償の"愛"が溢れていた。

"神"は存在したのだ。


これまでの人生で一度も感じたことのない、

満たされた光に包まれたせいか、

枯れ果てたはずの希望が、胸の奥から湧き上がってきた。


「…生きたい」

「我がままに生きたい」

「自由に生きたい!」


()き止めていた感情が、奔流(ほんりゅう)となって溢れ出す。

涙も止まらない。だが、止めようとも思わなかった。

言葉にならなかった想いを、懸命に吐き出した。


女神は、胸の前で重ねていた手をそっと広げた。

その掌には、奇妙な形状の(さい)が三つ、静かに乗っていた。

「…サイコロ?」


目は、1から7まであるように見える。

見たこともない、不思議な賽だった。


やがて賽は投げられた。

【7】【7】【7】


(なんだ…?これは何の儀式だ?)


女神は微笑を(たた)えたまま、静かに手を動かした。

その指先が、もう一つの賽を掌の上に呼び寄せる。

それは先ほどと同じ、見慣れぬ七面体。


だが、なぜか先ほどよりも重々しく、意味深に見えた。

彼女は言葉を発することなく、

ただ、空気を裂くような静寂の中で、

その賽を宙へと放った。


【7】


完璧な数字。

先ほどの三つと合わせて、四つの“7”が並んだ。


(……何をしている?)


胸の奥に、説明のつかないざわめきが走る。

宗教的な儀式か?それとも神託か?

どう振る舞えばいいのかもわからず、ただ見つめるしかなかった。


女神はそのまま、何も言わず、

その瞳に深い慈愛と、どこか試すような光を宿していた。


その瞬間、世界がふっと暗転した。

光は消え、闇が訪れる。

だが、恐怖はなかった。


その闇の中で、澄んだ囁きが頭の中に響く。


”金星に勝利を”

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