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最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む  作者: ワスレナ
本編

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第5話 王城の陰影【国王視点】

 夜のクラヴェール王城。


 重厚な石造りの広間に、国王クラヴェール五世がひとり静かに(たたず)んでいる。

 窓の外には満天の星が輝き、王都の灯火が遠くに揺れていた。


「……よくぞここまで世界を(だま)し切ったものだ」


 国王の声は低く、冷徹で、しかしどこか誇らしげでもある。


 いつしか、彼の背後には、黒いローブを(まと)った数名の影が控えていた。


「我ら【黒曜の環】の意志が、これほどまでに国家を(おお)いつくすとはな……」


 ローブの影の一人が静かに言葉を継ぐ。


「しかしながら、魔界との戦争が長引けば、民衆の不満も高まるでしょう。重税と犠牲に耐えかねる者も出てきます」


 国王は冷ややかな微笑を浮かべた。


「不満など、管理下にある白銀の騎士団で押さえ込める。不安と恐怖で民を縛るのだ……彼らの命など、国家のための駒に過ぎぬ」


 彼は窓の外を見つめながら、静かに言葉を続ける。


「魔界の資源を奪い、戦争による資金の流れで我が国の力を飛躍的に強化する……これは全て、我ら黒曜の環の栄光のため」


 窓際に置かれているワイングラスを手に取り、ワインを揺らす。


「我が国の勇者パーティーも、我らの手中にある。彼らの運命は我々が操る」


 その言葉に、ほかの影の一人が淡々と報告する。


「恐れながら、勇者イグノール殿は、最近動きが怪しくなっております。タクトという者の存在も、彼の心を揺さぶっているようです」


 国王は鋭く目を細めた。


「……タクト、か。奴は神託によって召喚した異世界人だ。扱いは厄介だが、十分な利用価値はある。そして今は(わし)の掌中だ、――問題ない」


 ゆっくりと闇の中へと姿を消す国王の背中に、決意と冷酷さが宿っていた。


「勇者の件は、近々出立させる先遣隊に組み込む手筈にしておる。お主らは引き続き己の任務に当たるのだ」


「御意に。二日後には準備を万全にいたします」


「いや、明日にでも整えよ。急げ」


「……仰せのままに」


 再び国王が窓の(そば)へ近づくと、その向こうにはもはやローブの影の姿は消えていた。

 

「月は満ちた。計画を急がねばなるまい」


 国王はワイングラスを片手に、整った髭を指で触りながら、外に浮かぶ月をじっと見つめるのだった――。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【まめちしき】


【黒曜の環】……古代から続く禁忌の儀式と黒魔術を受け継ぐ、影の結社。表向きは存在が隠蔽され、王侯貴族や教会内部にまで信奉者を潜ませている。

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