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最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む  作者: ワスレナ
本編

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第40話 勇者の誓い【勇者視点】

 轟音が過ぎ去り、広間に短い静寂が落ちた。


 焦げた石の匂いと血の鉄臭さ。仲間の声が遠くに聞こえる。


 俺、イグノールは剣を握り直し、ふと胸の奥に過去の影を見た。



 ――かつての俺は、勇者と崇められていたが、周りが見えていなかった。


 剣を振れば褒められ、教えを受ければすぐに身についた。


 勇者の命を頂いた時も、誰もが当然だと鼓舞された。



 ……だが、心は幼かった。

 

 責任を背負う覚悟も、敗北を受け止める強さもなく……。


 ――何かが上手くいかないとき、私はすぐに他人のせいにして逃げた。



 仲間が倒れれば「防御が甘かった、サポートが足りない」と責めた。


 作戦が崩れれば「運が悪かった」と吐き捨てた。


 勇者の名を背負いながら、実態は責任を他人に押しつける子供に過ぎなかった。



 だがそれでも“勇者”として、周囲から認められ、それなりに回っていた。


 ――だから自分の強さに迷いを抱かなかったし、疑問すら持たなかった……。



 忘れられない戦いがある。


 敵の猛攻に押され、仲間が傷つき、私は動揺して旧来の友、バルドスへ怒鳴った。


 「なぜもっと早く防げなかった!」と。


 本当は私が守るべきだったのに。


 その時、仲間の目に映ったのは――勇者ではなく、(みにく)く責任を逃れるただの“愚者”だった。



 戦いが終わった後、パーティーに加入したばかりのタクトが静かに近寄ってきた。


 彼は私を(とが)めなかった。


 ただ、俺の姿を見つめて呟いた。


 「……私が未熟だった。もっと早く動けたはずだ」


 誰よりも冷静に立ち回っていた彼が、自分の責任として受け止めていた。



 その背を見た時、私は心臓を掴まれるような恥を覚えた。


 言い訳に逃げる自分が、どれほど浅ましいか――。


 タクトは人を責めず、常に自らの責を引き受けていた。


 彼の背中が、勇者であることの意味を私に突きつけたのだ。



 ――戦場は、他人を責めても切り抜けられない。


 己の弱さを受け止め、自分の責任で立ち上がるしかない。


 パーティーの全員の命を預かり、一人一人に動いてもらうのだということを。


 タクトは後ろで控えるが、前で戦う俺たちへの敬意を絶対に忘れない。


 その謙虚で穏やかな心こそ、俺に一番必要なものだということを教えてくれた。



 ――あの痛みを経て、私はようやく“偽りの勇者”から抜け出せた。


 凛々しくも雄々しいクローディアの叱責に救われた。


 力強くいつも前でみんなを守るバルドスの無言の盾に支えられた。


 後方で的確に判断するメリエラの微笑みに癒された。


 そして、新たな仲間として俺たちの力になってくれる、タクトの無言の強さに導かれて。



 かけがえのない、素晴らしい仲間がいたから、俺は本当の意味での“勇者”に目覚めたんだ。


 ――勇者とは、力を誇る者ではない。


 責任を抱き、自らの歩みで仲間と未来を切り拓く者だ。


 そして民のため、国のために剣を振るい、見返りを求めることなく、悪しき者から世界を守り抜くのだ。


 今なら胸を張ってそう言える。



 俺はもう、逃げない。


 他人のせいにもしない。


 自分の責を抱えて――俺は仲間と共に進む勇者だ!



 今この時を機に、俺は、新たな一歩を踏み出す。


 真の勇者として、国のみんなの未来を拓くために。


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