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6 夜のパトロール

おばあちゃんはいつも歩いて5分くらいのところにあるドラッグストアで買い物をする。いつもは午前中に行くのだが、最近は午前中に行ったことを忘れてしまうらしく午後にも、つまり1日に2回も行くのだ。


ますます食品ロスが多くなることを考えると罪悪感が生じてしまうのだが、買い物も人生の楽しみだと思うので、楽しみを奪ってはいけないと思って傍観している。


ある日の午前中にゴミ箱の整理をした、つまりその時点ではゴミ箱の中は空っぽになるのだが、夜のパトロールの時に何気なくそのゴミ箱の方へ視線を移すと、アイスのバーが5本入っていた。おばあちゃんはアイスが大好きで、一階に降りて行くとアイスを食べているところをしばしば目撃するのだが、特にあずきバーが好きらしい。それにしても半日で5本も食べるとは驚きだった。


 ところで夜のパトロールとはおばあちゃんが寝たあと一階を見て歩くもので、鍵じまりの点検が目的だったのだが、だんだんやることが増えてきてしまった。先ずキッチンでブラインドを閉じて外から見えないようにし、開けっぱなしの窓を閉める。


ご飯が炊きっぱなしになっていることがよくあるのでそれを器に盛り、ラップをかけて冷蔵庫にしまう。茶殻が急須に入ったままなので捨ててざっと洗う。それからリビングへ行き、窓の鍵などを点検し、雨戸は大抵閉まっているのだが、たまに閉め忘れがあるので閉め、玄関は、これも大抵は大丈夫なのだが、たまに鍵がかかっていないので確認し、最後に洗面所に行く。


小さなプラスチックの容器にはおばあちゃんが外した入れ歯が入っているのだが、そこに入れ歯洗浄剤を入れるということが何度言ってもできないので、桐子が洗浄剤のタブレットをポトリと落とす。おばあちゃんはアイスや団子やガムなどの甘いものが好きなのだが、いつもガムがくっついている。


歯医者さんは入れ歯を使う人はガムを噛んではいけないと言っているのだが、そのことを繰り返し言っていたらガムを隠して食べるようになった。ある時ガムが3パッケージあったので全部二階に持ってきてしまったのだが、おばあちゃんの数少ない楽しみを奪ってしまってかわいそうだなと思い直し、戻しておいた。


したがって入れ歯にはガムがみっしり張りついていて、これはブラシでかなり磨かないと取れない、だから歯医者さんがガムを食べるなと言っているんだな、と思ったのだが、しばらく様子を見ているとしつこく粘着しているガムが、洗浄剤のタブレットを入れて一晩経つときれいに取れていることが分かり、安堵した。毎日がこの調子だが、週3回のガールズバーの日を楽しみにしてひたすら耐える日々だ。とりあえずは明日がその日なので早く時間が過ぎて欲しいと願うばかりだ。

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