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パソコン講習

カズキは、最近ヒマだった。

ホワイトな職場で定時に帰れるのはありがたいが、仕事に手応えはなく、スキルも身についている実感がい。

クレームの処理も、資料の作成も、Web会議も、どこか遠くの出来事のようにこなしていた。

だからといって転職する勇気もなく、うっすらとした不安だけが積もっていく。


「俺……ただの空気みたいな存在じゃないか……?」


そんなある日、彼はふと思い出した。


「あいつ、今どうしてんだろ」


あいつ──コロシテ君である。

思い立って支援センターに連絡を入れてみると、「今は職業訓練中です」と言われた。


「訓練?」


「はい、転移者向けのパソコン講座に通っておられます。入力訓練から始まりまして、Word、Excel、メールソフトなどの基礎操作を……」


なぜか誇らしげな口調だった。


カズキは見学の申し込みをして、当日、講座会場に足を運んだ。

そこにはいた。


モニターを凝視する、ドーナツ頭のコロシテ君。


福笑いのように配置された目と口のパーツが一か所に寄り集まって、一心不乱に画面へと集中している。


(……そのパーツって動くんだ)


その日の講義内容は「タイピング初級」。


「ではみなさん、画面に表示されている文字列を入力しましょうねー」


講師がそう言うと、教室中でカチャカチャと静かな打鍵音が鳴りはじめた。


「Shift……ナゼ、二ツ? 同時、押セト……無茶……」

「CapsLock……邪魔……」

「Ctrl+C…支配者…・・何ヲ、支配……」


だがその学び方は、奇妙なほど素直だった。


講師はこっそりカズキに話しかけた。


「変わった人ですけど、やる気はすごいですね。あと、配列とか記憶するのが異様に早い。Excelのセル並びとか印刷された文書とか見て喜んでました」


「そりゃあいつ、整ってるのが好きだからな……」


職業訓練は続く。

社会に出る準備も、少しずつ、確かに整っていく。

一方で、特にやることもないカズキは、食にあぶれているわけでもないのに職業相談のパンフレットを一枚持ち帰ってしまうのだった。


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