お見舞い2
次に向かったのは、女騎士の病室だった。
こちらは相部屋で、カーテンで仕切られている。中に入ると、いきなり金属音がした。
「はっ!ふっ!」
掛け声とともに、ベッドの柵を使って筋トレをしていた。
「あんた……何してるんですか」
「鍛錬だ」
カズキはそっと額に手を当てた。
「いや、まだ傷あるでしょ……」
「これしきの傷、あの戦場では日常茶飯事。むしろ快癒に向かう証だ」
「病院ってそういうところじゃないから……」
カーテン越しに他の患者がくすくす笑っているのが聞こえる。
女騎士はややバツが悪そうに咳払いした。
「して、貴殿、何用だ? ……ああ、まだ名乗っていなかったな」
ベッドの上で軽く胸に拳を当てる。
「我が名はブリュンヒルデ・フォン・グラディウス。かつては〈白銀の西方騎士団〉の副長を務めていた。いまは、まあ……職を探している最中といったところだ」
「佐倉カズキです。今日はお見舞いに。ゼリー、どうぞ」
「うむ。礼を言う。……しかしこれは、甘味か? 戦の後には肉と酒が欲しいものだ」
カズキは笑いながら、ゼリーをベッドサイドに置いた。
「つーかお前もピンピンしてんじゃねーか!!」
こうして彼は、連日出会った「異形」たちと、少しだけ距離を縮めたのだった。
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