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朗読劇台本

さつまいも

作者: cyxalis

1人声劇台本/朗読劇

嵐の夜には、さつまいもを食べる。


俺のちょっとしたこだわりだ。

君にだって、こだわりってものがあるだろう?

靴を履くときには左から履く……とか、ショートケーキの苺は最後に食べる……とか、雨の日にはお香を焚く……とか。


君たちみんなに、それぞれのこだわりがある。

もちろん俺にも。


なんだよその顔。

ガサツな俺だけど仲間はずれにはしないでくれよ。俺にだってこだわりはあるさ。


あ?

別にさつまいもが特に好きって訳でもない。別に良いだろ、さつまいもが好きかどうかなんて。俺は嵐の夜にはさつまいもを食べるんだ。




説明が足りない?

なんで食べるのかって?



なんでだろうなぁ。懐かしいから?俺にもよく分からない。


あぁ、でも。

昔の友達が関係しているのかもな。

アイツらと一緒によくさつまいもを食べていたから。


中学生の頃よくつるんでた5人の友達がいて。一人暮らしの奴がいたから、そいつの家によく5人で入り浸ってた。


別になにか共通の趣味があったわけでもない。狭い部屋の中、大音量で音楽流している奴、ゲームしている奴、勉強してる奴、エロ漫画読んでる奴、勝手にベットで寝てる奴とみんな好き勝手してた。


なんであんなに仲良く一緒にいたのか不思議なくらい、みんな好きな事やりたい事がバラバラだった。




あっ。思い出した!!


そうだ。あぁ、嵐の夜だ。俺は食いもん持ってきては、ぼりぼり1人食べている奴だったんだが、あの嵐の夜は違った。


みんなで嵐の夜に泊まり込んで、夜更かししてたんだ。

その時もみんなバラバラ好き勝手してたさ。


俺はその日はさつまいもを持ってきてた。夕飯とは別にな。なにせ生のさつまいもだ。みんな興味もないだろうし。その時も勝手に台所を借りて茹でて、1人食べるつもりだった。




そんな中ふと、だ。


本当にふと。6人で分けて食べたいと思った。

分けて食べるべきだって。


雨戸を叩く雨の音のせいか、なんとなく沈んだ雰囲気のせいか、普段まったく思わない考えがスッとまるでミントの匂いみたいに頭に入ってきたんだ。


そうゆうことってあるよな。その時は不思議に思わないんだ、自分がそう考えたことに。でも後から不思議に思う。なんで?自分はそんなキャラじゃないじゃんか、って。




逡巡したのは一瞬だった。俺は自分の夜食に持ってきたさつまいもを綺麗に6等分して、友達に出した。

正直全部食べたかった。中学生の腹減りを甘く見ちゃいけない。なのに俺は綺麗に6等分した。



たった一切れ。


友達も貰っても困っただろうに、おぅとか、あぁとか言って黙って食べた。




そうして、みんな食べ終わって暫くして、1人でゲームしてる奴が一緒にカードゲームしようって言い出したんだ。


そして皆んなで慣れないカードゲームをした。そいつのレクチャー付きで。


そしたら、いつもはエロ漫画読んでるやつが、オススメのやつを見せてやるって言い出すじゃないか。


みんな黙って粛々とエロ漫画を見た。

……もう分かるだろう?



エロ漫画を見た後は、音楽好きの説明付きで音楽を聴いた。


その後は勉強ばかりしている奴がここだけは押さえとけって言うから、皆んなで勉強した。


そして、寝てばっかいる奴のなんで寝るのが好きなのかって話を聞きながら、皆んな寝た。



なんで、あの時さつまいもを分けたんだろうな。なんでそんなことが出来たんだろう。あの選択をしなかったらあんな事にはならなかった。どうしてだろうな。


でも、そうゆうことってあるよな。



あぁ、あの時あの選択をしたから。

俺は嵐の夜にはさつまいもを食べる。



毎日忙しくて、キッカケなんて忘れていたよ。

これは俺のこだわりだって、意地で続けていたんだ。



いや?意地でも続けていてよかったさ。





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