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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハイファンタジー

魔王の息子が聖剣を抜きました

作者: フーツラ

とても短いです。サクッとどうぞ

 聖剣に選ばれたのはヒトではなかった。かといって魔物かというと、そうでもない。見た目はそれほど人間と変わらない存在。


 魔力や身体能力に優れ、寿命も長い。その代わり、生殖能力に劣る。つまり、魔族。


「やべえ。俺が抜いちゃったよ」


 魔族の少年にとっては、ほんの遊びのつもりだった。


「坊っちゃま……。なんてことを」


 世話役の年老いた魔族が呆れた顔で呟く。それはそうだろう。


 聖剣を台座から引き抜いたのは当代魔王の息子、ゼバスだったのだから。


「だって仕方ないだろ! 抜けたんだから!! そもそも"聖剣を見学に行きましょう"なんて言い出した爺が悪い!!」


 ゼバスは聖剣を振り回しながら抗議する。


「ぼ、坊っちゃま! やめて下さい!! 魔族は聖剣で傷付けられると、その傷は絶対に癒えないのです!」


「ほーん? いいことを聞いたぞ。この聖剣を持っていれば、俺に逆らう魔族はいないという訳だな」


 ゼバスはニヤリと口角を上げた。


「なんと、性格の悪い……! 亡くなった奥様が聞けばどんなに悲しむことか……!!」


「うるさい! 俺に口ごたえするな!!」


 聖剣が年老いた魔族の首筋に触れる。


「……」


「分かればいいんだよ。分かれば。さぁ、爺。俺を親父のところに連れて行け!!」



#



 魔王城の玉座で当代魔王マグザスは困惑していた。何故、自分の息子が光り輝く聖剣を持っているのかと。


「ゼバス……。どういうことだ? 何故そんなモノを持っている?」


「ゼバス様だろ! このクソ親父が!! いつも勉強しろ! 修行しろ!! ってうるさくしやがって!! 俺はもう限界なんだよ!!」


「ちょ、ちょっと待て! 全てはお前の為を思って!!」


 ゼバスの瞳が強く、赤く光った。


「嘘だ!! 親父は人間を殺すことしか考えてないじゃないか!! 勉強する内容も如何にしてヒトを殺すか。修行もヒトを殺すため。ヒト、ヒト、ヒトォォオオオ!! もううんざりなんだよォォオオオ!! 俺は、俺のやりたいことをやりたいんだ!!」


 ゼバスの怒りに聖剣が呼応し、剣身を覆う光が膨れ上がる。


「や、やめろ!! それを受けると私は消えてしま……」


 マグザスの悲鳴。それは──


「うるせぇぇぇぇえええ!!」


 ──僅かに剣の軌道に影響を与えた。聖剣は魔王の身を掠め、そのまま魔王城の半分を吹き飛ばす。


「……生きている」


「今、人間を恨み敵対を続けた魔王は死んだ。俺の目の前にいるのはただのマグザスだ。もし、俺の父親まで辞めたいのなら、もう一度、人間に恨み言を言ってみろ」


 その言葉は魔族の少年の言葉だったのか? それとも……。


「すまないゼバス。私を許してくれ」


「俺は、自由に生きる。他の魔族もだ」


「……分かった」


 かくして、二百年以上続いていた人間と魔族の戦争は終焉を迎えた。ついに、聖剣の願いが叶った瞬間であった。

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