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2-24

ベニートに少し話したいから待ってろと言われたので、テオとアレックスは手持無沙汰でソファーに座ったままだ。

「そうだ、アレックス。」

テオがふと気づいて、アレックスに訪ねる。

「国から兵がくるという仮定で進んでるけど、もし来なかった場合はどうするんだ?」

「……、そうですね。」

アレックスが少し考えて、上目遣いでテオに訪ねる。

「テオさんは助けてくれないんですか?」

「いや。ある程度は手助けしようとは思うが。

でも俺がメリカ国の奴らを攻撃したり、殺したりすれば。

ジャカン国がこの戦争の当事国に含まれてしまう。

自分たちの国、いや街か。自分たちで守ってもらわないと困る。」

頭の中で整理しながら、テオが話す。

「そうは言っても…。

この街では門番とか治安維持位の人達しかいないので。

姉と姉を慕う人たちは20人程ですから。

どうしましょうか…。」

アレックスも考えながら返答を続ける。

「うちの商会だけなら、皆どこかに逃げれるでしょうけど。

一緒に逃げたいという人たちを連れて行くことも可能でしょう。

それこそ首都まで行くなら、食料もある程度供給できます。

でも…。老人や孤児院の子達。他にもついてこれない人も出てくるでしょうね。」

テオは黙ってアレックスの話しを聞いている。

「いえ、そうじゃなく。

なんで、攻めてこられたら明け渡さなければいけないんだ。

お父さんが立ち上げた商会を、みんなで大きくした商会を。

みんなの家だって。家族だって。そういうことなら、街に住む人たちだって、家や家族がいるんだ。

攻め込まれるとわかったら、明け渡さなければいけない程、価値がないものじゃない。」

アレックスの目に力がこもる。

テオは、街の人たちが逃げ出すなら、その手助けはしようと思っていた。

ただ、アレックスやそれ以外の顔見知りの人たちが難民のようになるのは嫌だなとは思っていた。

「武器がすごいからって、400人もいない。だったら戦い方もあるんじゃないか?

姉さんたちに相談するとか…。」

そこまで言って、アレックスはテオを見る。

「ああ、相談位なら俺ものろう。

人に相談する、人を巻き込むってことは、いい傾向だな。

ベニートも巻き込もうぜ。」

「はい!」

地球の古い時代には、インカ帝国が150人前後のスペイン人に滅ぼされたことがある。

ただ、テオはそうならないだろうと考えていた。

こちらに来る日も大体分かるし、装備も人数も知っている。

それに対応できる作戦や罠などを準備すればいいと。

そんな話をしていると、ベニートが訴状を持って部屋に帰ってきた。


ベニートはテオの事を聞こうと待たせてたのだが、街の防衛について相談されて、それどころではなくなってしまった。

アレックスを実質の防衛隊の頭にし、表面的には姉のアウロラを立てることなどを決める。

防衛隊に対する支払い、その財源、装備代は等々、話は夜まで続くのだった。


翌日、アウロラを含めて、テオとアレックスは話し合った。

金銭的なことはベニートに丸投げしていた。もちろん、アレックスの商会からも防衛費に対する援助を申し出ていた。

なのでこの話し合いは、街の防衛方法に特化できた。

「それにしたって、街を守る人数が少なすぎる!」

アウロラが彼我の戦力差、相手の情報を聞いての第一声がこれだった。

テオは冷静に返す。

「まあ、だから国にお願いに行くんだからな。」

「お前は他国から来てるから他人事なんだ!」

「姉ちゃん、やめなよ。」

むむむっ、とアウロラは口を紡ぐ。

「まあ、落ち着け。人数の件は分かっている。確かに少なすぎる。

だから、今回は街の人たちも巻き込んでやるしかないと思っている。」

「テオさん、街の人も巻き込むんですか?」

「もう、それしかないだろう。標的にされているのはこの街なんだから。」

「ほう、街の人間を巻き込むってどうするんだ?」

アウロラがニヤッっとしてテオに聞く。

「決まっている。大々的に情報を流して協力を得るんだ。」

「どうやって?」

「それは…。」


そしてその翌日。

街の広場に演説台を急遽こしらえ、テオ、アレックス、アウロラが立っていた。

お昼時間を半ばすぎて、午後の仕事に入ろうとするには少し早い瞬間だ。

テオはスピーカー付きドローンを町中に放っていた。

ここで話すことが、皆に聞こえるように。

テオがアレックスに頷く。アレックスが一歩前に出て話し始める。

「ベコウに住む皆さん。こんにちは。

私はここ、ベコウでクモ商会を営んでいる、アレックスと言います。

知っている人もいると思いますが、父が亡くなってから、10歳で私はクモ商会を引き継ぎました。」

テオ達が回りをみると、皆が話を聞き始めているのが分かった。

アレックスには、焦らずゆっくりと話すようと、テオはアドバイスをしていた。

「父が亡くなったのは、メリカ国からの帰国を急いで船を走らせて、シードラに襲われたからです。

私はその船にいましたが、揺れで頭をぶつけて気を失っていたので、その様子は知りません。」

そしてテオは、事実のように断定的に話すようにもアドバイスしていた。

「私を救助してくれた人の話しだと、私は海に浮かぶ板の上で横たっていたと言ってました。

そして、気を失った人間がそんな偶然があるはずないと。

推測するに、私は父か、または父以外の誰かに、板の上に寝かされたんです。

板の上にいたために、海に潜むシードラは私に気づきませんでした。

そうして、生き残ったのは、私だけでした。」

アレックスにはつらい話ではあるが、皆の前で話しているという状況が、緊張が、泣かずに話せている要因のようだ。

「父が予定を早めての帰国を決めた原因は、最初は分かりませんでした。

それがここ最近分かってきました。

それは。

それは、メリカ国の武装艦がここに攻め込むことを知ったからです。」

街中がざわざわし始めた。

「正直に言います。」

アレックスが間をおいてから、話を再開する。

「私は最初、逃げようと思いました。

メリカ国は私たちの国よりも技術が進歩した国で、攻め込まれたら一溜りもないだろうと考えたからです。」


「でも。

私が。私の周りが逃げたとして。

逃げたその後、よかったと思えるんだろうかと。

考えてみたら、イヤなことをした思いをずっと死ぬまで抱え込むんだろうと。

じゃあ、街の皆さんと逃げようか。

もし皆さんが王都まで逃げれたとして。

皆さんは難民になります。この地を捨てるんです。

父はそのために、危険を顧みずにこの街に帰ろうとしたんでしょうか?」


アレックスが息をつく。目にさらに強い力を宿した。

「息子の私には分かります。違います!

奴らは勝手にここにここにきて、ここを占領しようとしてる。

勝手に来て占領しようとするやつらに、ここを明け渡すって、悔しくないですか!

ふざけるな!

父は戦うことを選択したんです!

そして、それは、残された私たちに託されてます!


多分、父は生きてれば私を逃がそうとしたと思います。

でも今は、父の遺志をついでいます。

私や父を育てて支えてくれた人たち。

クモ商会で買い物をしてくれた人たち。

なにより、私が好きなこの街に住んでる人たち。

この人たちを守ることが戦うことになるのなら。

私は奴らと戦います。」


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