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2-23

そんな待つこともなく、ドクはかえってきて、ベニート町長の承諾を持ってくる。

街中の移動だけなので早いのは当然だが、テオは少し気が重い。

「行きましょう。」

そう言ってアレックスが扉を開けて歩き始める。

テオもしょうがなく付いていく。

「ベニートさんは元貿易船の船長でした。うちで働いていたこともあるんですよ。」

「声が大きいから怖く感じる人もいるそうです。でも気さくな方なんです。」

そんな説明をアレックスから聞きながら歩いていると、大きなお屋敷前に着いた。

門の内側にいた守衛がアレックスを確認し、門を開ける。

挨拶をして玄関へ向かうと、ガタイのいい老執事が待っていた。

「いらっしゃいませ、アレックス様。そちらがテオスト様でしょうか?」

「そうです。こちらがテオスト様、テオさんです。」

変な言い方になったがアレックスが肯定すると、その老執事がテオに向き直る。

「テオスト様。私はベニートの執事長、ネアン=トラタールと申します。以後、お見知りおきを。」

そう言ってきれいなお辞儀をする。

「テオスト=ゴグールです。丁寧なあいさつ、ありがとうございます。」

と言ってテオもお辞儀をする。

「では、ベニート様もお待ちしていますで、こちらにどうぞ。」


ベニート町長は会ってみると、日焼けした肩幅の広い、50代位の男だった。

テオたちはソファーに座らされ、対面にベニートが座る。

「本当に肩に鳥を乗せているんだな!」

ベニートが鳥さんを見ながら言う。

「ええ。俺の相談相手です。」

「そんななりで、頭がいいのか?」

「ええ、俺よりも頭いいですよ。」

俺が鳥さんを見ると、

「恐縮です。」

と鳥さんが答える。ベニートが目を丸くして驚く。

「その話はまた今度。話が長くなります。」

そうテオは言って、アレックスを見やる。

「おお、そうだな!アレックス、元気そうじゃないか!」

「はい、元気でやっています。ベニート様もお元気そうで。」

「はははは!自分で言うのもなんだが、当分死にそうにないわ!」

元気で声が大きい。生命力あふれる御仁だとテオは感心する。

「それでなんだ!なにか緊急のようがあるというのか!」

「はい、それんですが…。」

アレックス、中盤以降はテオが説明して現状を知ってもらう。


「いや!いきなりそう言われても中々信じられんな!」

状況説明を聞いたベニートが正直な感想を言う。

「大体、どうやってそんな情報をしいれたんだ?!

それにその船の武装や人数まで!?

見てきたと言うのも本当か!?」

大声でベニートに疑問を投げかけられ、でも怒っているのではなく、うさん臭いと思っていることを、テオは理解した。

「事実です。

 俺としてはここで知り合った人たちがむやみに殺されたり、奴隷になるのを防ぎたい思いからお話ししています。」

「ではどうやって船まで行って、向こうの奴らと話したというんだ!」

「それに対しては答えられないけど、見て、会ってきたのは事実なので、信じて欲しいとしか言えない。」

「そうは言ってもな!これだけで信じて、国に報告とはいかんぞ!」

大声だが困惑しているベニートにアレックスがとりなすが、やはり、信用できないようだ。

「テオ様、私から提案をよろしいでしょうか?」

鳥さんがテオをみて言う。しかもウィンクしていたのだが、テオから観れば普通のまばたきにしか見えない。

「いいよ、話して。」

テオが短く返事をすると鳥さんが話し始める。

「もう、テオ様は身分を隠さなくてもいいのではないでしょうか?

 アレックスさん達のために明かしましょう。テオ様はジャカン国の外交特別大使であると。」

テオは思わず『あ、そっか』と言いそうになったが、それを抑えて頷く。

「え!? テオさんって外交官だったんですか?」

アレックスが心底驚く。ベニートも目を丸くする。

「そうです。ジャカン国王様からの任命書と勲章もあります。」

テオは鳥さんのしゃべるのを見守ることにした。

「もし、ベニート町長からの紹介をもらえないのであれば、直接議事堂に言って話してみたらどうでしょうか?

 テオ様を信じるかどうかは分かりませんが。

 元々テオ様がこちらの国をひいきにするから行っている行為です。義理ははたせる程度で考えましょう。

 ですが、テオ様がこの争いに参加、手を貸すことはできません。場合によっては、ジャカン国を争いに巻き込むことになります。」

「ありがとう、分かっているよ。」

鳥さんはテオがこの争いに参加したくないことを知っていて、だから、参加できない理由を作った。

テオがひそかに舌を巻く。

「むむむむ!」

ベニートが考え込んだ。


「テオ君が直接行って、もし信用されたら、私が無能者扱いされる!

 疑って申し訳ないが、勲章を見せてくれ。」

そうベニートが言うので、モスⅢに積んである任命書と勲章をフィーに持ってきてもらった。

フィーは「どうぞ。」と言ってそれらをテオに渡すと、テオの座っているソファーの後ろに行儀よくたった。

これも権威付けとしては効果的だ。使用人をつけるほどの金や地位を持っていることを示すのだから。

テオから受け取った任命書を見て、勲章を見て、ベニートは悩む。

「これが本物かどうかわからん!だが、この勲章は作りが丁寧で手間がかかっているのはわかる!」

「本当だ…。」

アレックスは見とれているようだ。まあ、だからテオはこれを”もらっちゃった”のだから。

「では、テオ殿!議会まで行ってもらえるか!先ぶれは出しておこう!もちろん、私の名でな!」

テオ君からテオ殿に変わったと言うことは、信じてもらえたようだ。


鳥さんの計算だと、船がベコウに着くには2か月ほどかかるそうだ。

普通にベコウからツバイ首都、議会まで行くには、馬車で20日程、早馬で10日程だそうだ。

一応間に合いそうだ。

「では、今から早馬で先ぶれを出しておく。テオ殿はいつぐらいに出発するのか?」

「出発は特に決めてませんが。そうですね。早馬で伝令が着いた翌日には着くようにしましょう。」

「ん?じゃあ、今出るのか?」

「いや、俺が移動すれば半日位で到着できるので。伝令後がいいだろうと思っただけです。」

「は?何を言っているんだ?」

ベニートが意味が分からないとアレックスを見れば、アレックスが首をふる。

「ベニート様、テオさんの話しに嘘はないと保障します。伝令到着後なので、11日目には到着するでしょう。」

「なんだそれは。ジャカン国ではそんな高速移動できる乗り物があるのか?魔法か?」

テオがあー、と言って答える。

「まあ、どちらかです。なので伝令には、到着後の翌日に訪ねる旨、伝えておいてほしいかな。」

「まあ、分かった。とりあえず。理解した。」

と、言いながら納得できない様子であるベニートであるが、気を取り直して必要事項をテオに伝える。

「書状は今書いて伝令に渡す。宛先はケーログ子爵だ。話が分かる人だからな。」

テオが頷くと、話は終わったとばかりにベニートは書状を書くために席を外す。



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