2-21
「メイドだ…。」
「女だ!」
「いい…。」
何人かが何かをつぶやくのが聞こえる。
「おい、フィー…」
テオが下がれという前に、
「この護衛の女から捕まえちまえ!」
誰かが言うと、男共は一斉にフィーにとびかかる。
誰もが武器を手放し、素手でだ。
『おさわりしたいだけだろ!普通は護衛と思わねーだろ!』
テオが心の中で突っ込みを入れる。
フィーが向かってくる手を掴み、力を利用して反対の集団に投げ飛ばす。
殴り飛ばす。蹴り飛ばす。
どうやらフィーもこの者たちを殺す気はないようだ。
「何みてんだよ!」
感心してみているテオの横から槍の突きが襲い掛かる。
テオが片足を中心にくるっと回って槍を躱し、槍半ばを掴んで相手を振り飛ばす。
それが合図となり、武器を放さない者はテオに殺到する。
「俺だけ武器付きか!」
叫びながら、上段から振り下ろされる剣を腕のスーツで防ぎ、殴る。
後ろからついてきた槍が、スーツをカスり、槍術者がいい具合にテオに寄ってきたので蹴り飛ばす。
3人が剣を腰に構えて突いてくるのを、テオもそちらに踏み込んで突きをスーツに弾かせ、裏拳で殴り飛ばす。
ピストルがテオの胸に命中するも、スーツで弾かれる。
「死んじまうだろう!」
そう言って駆け出し、ドロップキック。こいつは強めにダメージを与えた。
稽古した無手の格闘術を存分に使うことに楽しくなったテオは、雄たけびをあげて集団に飛び込んでいくのだった。
30分位たつと、もうその場に立っているのはテオとフィー、そして船長だけだった。
操船の水夫たちは仕事に専念していたらしい。帆は風邪を掴んだままだ。
はぁ、はぁ。はぁ。
息があがっているテオは、膝を手でつかみ、前かがみになった。
「また派手にやってくれたもんだ…。」
船長があきれた声でテオに話しかける。
「あんたが止めないからだろ…。」
顔を上げてテオが答える。
殴る蹴るの大乱闘だけだったので、けが人全員、死者ゼロである。
「いやぁ、ここまでやるとは思わなかったしな…。」
船長が頭をかきながら言う。
「が、この人数で息が上がるなら、この船の乗務員全てでかかれば勝てそうだ。」
「無理だな。それにその時は死人がでるぞ。」
「そうかもしれんなぁ…。」
そう答えて船長が考え込む。
「なあ、もう一度言うが。ベコウへ来るのはやめられないのか?」
「くどい。命令に背く気はない。」
普通に否定してくる。やはりベコウにくるようだ。
「そうか。じゃあ、俺もう帰るわ。」
そう言ってトボトボとワイヤーに向かうテオの後ろにフィーがつく。
「テオ様、申し訳ございません。テオ様に歯向かうものに我慢できませんでした。」
「え、フィーってそんなキャラなの?我慢できない性格なの? 」
「テオ様に危害を与えようとするものを見逃すわけにはいきません!」
「うん、わかったよ(性格が)。」
ワイヤーを見ると足をかける輪が一個しかない。
「フィー、先に行ってくれ。」
「いえ、テオ様が先に…。わかりました。」
テオが輪を指さすので、フィーがしょうがなく先にモスに戻る。
船長とテオが二人、甲板に取り残される。鳥さんはしゃべらない。気まずい。
気まずさに押されて、テオが話しかける。
「そういえば船長。名を聞いてもいいか?」
「あ、ああ。ロイだ。ロイ=スレーダーだ。」
「俺はテオスト。皆テオと呼ぶ。」
「わかった。テオと呼ぼう。俺のこともロイと呼べ。」
「了解、ロイ。」
ゴグールの名を出さないのはゴグール商会になにかあっても困るからだ。
ワイヤーが下りてきたので、輪に足をかけて巻き上げてもらう。
「もう会いたくないが。いい航海を、ロイ。」
「また会ってしまうのかもな。じゃあな、テオ。」
そうしてテオはモスに、ロイからみれば雲に、戻るのだった。
書き貯め分、終わりました。
いつの間にか読んでる方も増えました。
これは励みになるんだと実感してます。
なるべく早く書くからね!




