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2-19

「テオ様。お話があります。」

鳥さんが突然言い出した。

いつの間にかケルも近寄ってきた。フィーは基本近くにいる。

その時のテオは、軒先を借りているカレー屋の従業員である孤児たちにスパイスについて教えている時だった。

急ぎの用事と分かっているテオは、孤児たちに後を任せ、アレックス邸に借りている自分の部屋に集まった。

「メリケ国から船が出航しました。武装船のようです。」

「あれ、メリケ国って…。」

「はい、アレックス達のお父様が貿易していた国です。」

「ああ、そうだった。その武装船がどうかしたのか?」

「我々からするとかなり旧式ですが、大砲が付いているようです。また、帆船機能に加えて蒸気機関を使用してるようです。」

「はっ?この星からすればかなりオーバーテクノロジーじゃないか?いや、海外では普通なのか?」

「いえ、海外でもメリケ国だけのようです。産業革命があったようですが、地球よりも小規模であったため、確認ができていませんでした。

軍の内部だけの産業革命?でしょうか。火薬式ハンドガンも持っているようです。発射されているのを目撃できていません。」

「ツバメがそれを見落とすのか?なんで?」

「一つは完璧な隠蔽です。衛星軌軌道上からの光学観察、それぞれの町や村への小型カメラ設置からの観察。それではわからなかったのです。」

「ああ、だから君内部の産業革命…。」

「はい。軍内部の研究施設で開発され、工場で生産されているようです。」

「なにか、チートな奴がいるんじゃないか?」

「地球でも一人の天才が色々な物を発明した例もあります。それがかの国で起こった可能性は否定できません。」

「だよなぁ~。もしくは地球からの転生者とか?」

「どうなんでしょう。その考えを否定したくはありますが、テオ様のような例外もいますし。」

天才がいれば、蒸気機関は発明できる、だろう。でも発明しても製造までは…。見たこともないものに投資するものか?

いや、軍ならば国の予算だから上野連中が納得すればできるのか?

そんなことを考えていたテオが、ハタっと気づく。

「その武装船だけど、国外に出るのか?」

「まだわかりません。このまま周回航海してもどる可能性もあります。ただ、南西に舵を切っていますので、最短で海流に乗るコースにも見えます。」

「その海流にのると、どこに行くんだ?」

「ここから東にあるメリケ国から海流に乗ると、西に向かうことになります。海流上の近くの港、加えて航海実績を考慮すれば。」

鳥さんのまん丸お目目がテオを見つめる。

「ここ、ベコウになります。」


話しを聞いた翌日、メリケ国の武装船はベコウに向かう海流にのったようだと鳥さんから聞いた。


「どうされますか?」

「どうするとは?」

鳥さんが問いかけると、テオは問い返す。

「メリケ国の武装船がこの港に来た時のことです。」

「そうだよなぁ…。」

「ここに来た時に迎撃しますか?ここの人達はテオ様にとっては外国人で、向こうから来る人達も外国人。とすると…。」

テオは黙って聞いている。

「外国人同士の争いに介入することになります。」

テオもここに住んで半年になり、情も移っている。

しかし、その者たちを守るために相手を殺すことに考え込んでしまう。

もし向こうに半年住んでいたら、反対の事をするということ。

前提として、テオは光着をすれば死ぬことは無い。

それでも殺す気でくる者に、殺さないで戦闘不能にするのは10人、20人程だろう。

軍で来られれば、殺さずに全員を戦闘不能にするのは不可能だろう。

戦闘不能になった兵士はどうなるか。戦争相手に殺されるか捕虜とすると…。

どう考えてもテオの介入は、相手方の死亡、捕虜、戦闘不能などの悲劇をうむだろう。

ではどうするか、とテオは考え込んでしまった。

攻め込もうとする、あいつらが悪いと少しいらだった。

「あ~!もう!あいつらに攻め込むのをやめさせる!」

テオの叫びを正確に聞き取れた鳥さんだが。

「はい?どうされるんです?」

聞きなおすのが当然であった。


それから数時間。テオたちはモスⅢに乗って海上を飛行している。

アレックス達に数日留守にするとことわりを入れ、ケルはお留守番だ。

そして、二人乗りのモスの中には、テオとフィーが座っており、テオの肩に鳥さんがいる。

進路はこちらに向かってきている、武装船だ。

「テオ様。本当に説得ができるとお思いですか?」

と鳥さんが尋ねる。

「分からないけど、会って話をしない事にはと思ってな。」

「確かにモスでいけば10時間ほどでお目当ての船に着きますけど…。」

鳥さんにしては珍しくブツブツとつぶやく。

「まあ、死ぬことはないんだ。力の差を見せつければ引き下がるかもしれないだろう。」

「楽観的な希望ですね。私としては、やはりツバメの中でテオ様を守っていたいのですが。」

「お前の希望は俺にとっての地獄だよ。」

お互いに言い合っていると、フィーが話しかける。

「それにしても、アレックスさんにお話ししなくてもよかったんでしょうか?」

「ああ、それね。今言っても、どうしてわかったってなるし。」

「それでも、もしかしたら、何故アレックスさんのお父様が無茶な帰国を試みたかが分かるではないですか?」

普通に話をし進めているが、この娘、AI付きのアンドロイドなんだよなと不思議な感じを抱きつつ、テオは話す。

「多分、メリカ国が攻め込むかもとの報告をしに戻って来ようとしたんだろう。だからと言って、今教えても試みだすだけでいいことはないじゃないか。」

「いえ、お父様が亡くなった理由を知ることは残された者には必要です。」

「そのうち話そうと思っているけど、今じゃないって話だ。」

お互いに言い合っていると、鳥さんが話しかける。

「テオ様。時間的に余裕がありますが、そろそろ言語習得プログラムをはじめませんと。」

テオがいた地球の言語プログラムは、他星の会話や言葉をビッグデータ化して、データから導きだされた単語や文法を脳に直接叩き込むものだ。

これは他の惑星探査船全てに搭載されている。

「その話はまた今度。じゃあ、ヘッドギアをくれ。」

鳥さんから言われたヘッドギアをフィーから渡され、装着。テオは1時間半程の睡眠学習に入るのだった。


テオが目覚めてから約2時間ほど。

パッと見では帆船が見えた。

帆船と違うのは煙突があることだった。

「あれ、外側に車輪がないな?」

不思議に思い、テオが鳥さんに確認する。

「外輪のことでしょうが。あれはスクリューを使っているようです。」

「は?スクリューって回転機器ができてから発明されるものだろ?」

「そう思われますが…。確かに変ではあります。」

「まあ、聞いてみればいいか。」

「普通に聞けると思っているんですか?」

「できたらいいな。じゃあ、モス周りにスモークとスチーム、よろしく!」

「了解です。スモーク、スチームを噴出します。」

モスの周りを白い気体がまとわりつき、見た目は雲のようになる。小さいが。

モニター目視航法で武装船の直上につける。

「じゃあ、行きますか。

装着!」

身体能力を上げたテオはハッチを開き、天板ウィンチから用意されたワイヤー、それにつけられた鉄輪に足を突っ込んでモスを離れた。


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