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従業員の前の簡易壇上にアウロラがあがり、声をあげる。
「皆の者!私とアレックスで決めたことがある。
聞いている者もいるかもしれないが、期限付きで、ゴグール商会会長、テオスト=ゴグールに経営権を渡すということだ。
皆、テオスト殿についていき、これまで通り仕事をしてほしい。
では、テオスト=ゴグール殿。皆に声をかけてくれ。」
そう言ってアウロラは檀を降りて、テオストが壇上にたった。
テオは壇上から従業員全員を見回してから話し始めた。
「テオスト=ゴグールだ。
漂流してるアレックスを救助した縁で、この商会に出入りしている。」
「これからしたいことを話す前に、簡単に自己紹介をしようか。
私はトド村という田舎の開拓村で産まれ育った。
そこで、石鹸や醤油などの調味料などを生産・販売をして商会を大きくした。
もしかしたら心配してる方もいるかもしれないから、先に言っておく。
俺がこの商会を乗っ取ることはない。
俺にはやりたいことがいくつもあるから、ここで時間を取られたくないだ。」"
テオはそう話して、一度皆の顔をみる。
「半年位、ここで相談役をさせてもらう。アレックスの仕事の一部を、皆に分ける手助けをするつもりだ。」
脳筋部隊(?)が少しざわつき出した。テオはそちらを見て、静かになるのを待ってから、話を続ける。
「アレックスの船はシードラに襲われた。俺が見たときはもう、誰もいない状況だった。浮かぶ残骸の上にアレックスは横たわっていた。
最初はたまたま残骸の上で気を失っていると思った。でもあの不安定な板の上で、動かないとはいえ、寝転がることは無理だ。」
脳筋部隊(仮)も話を聞いてくれていること確認して、先を続ける。
「俺はアレックスの父や船に乗っていた男共の事はしらない。だがそのうちの誰かが、気を失っているアレックスを木の上に乗せたんだ。
2人以上は必要だと思う。そいつらは、シードラが襲ってくる状況で、アレックスを助けた。
板の上なら、臭いとは体温は海中から分からないからな。
結果をみれば…。彼らは自分の命を投げうってアレックスを助けた。
そういうことだ。」
その状況を正確に予想して、テオの胸は熱くなった。
「俺は会ったこともないその人たちを尊敬する。その人達が守ったアレックスには、まっとうに生きて欲しいと心から思った。
そのアレックスは、あなた達に託された。
数日後にアレックスに会ったときは驚いた。超過密過剰労働でボロボロだからだ。」"
ため息をついてからテオは話しを続ける。
「俺は前から思っていたんだが。
守りたい人のために命を投げだすことは、とても尊いことだと思う。
でも、“守りたい人のために命を投げだす”ことより大変なのは、
“守りたい人のために生き続ける”ことだ。」
テオが皆の顔を見渡す。
「これから半年くらい、仕事の見直しをする。
慣れた仕事に比べれば煩わしいと思う。
でも耐えてほしい。
そして、アレックスを守ってほしい。未熟なところもあるから助けてほしい。
……。
命をかけた者どものために、な。
では、明日から業務の改善をしていく。
皆、よろしく頼む。」
皆がなにも反応しない中、テオは台を降りる。
アウロラが声をあげる。
「じゃあ、今日は解散だ。おつかれ~!」
皆がゾロゾロと帰りはじめた。
最後に残ったテオとアウロラ、アレックスは明日からよろしくと言って部屋に帰るのだった。
次の日から改善が始まった。
輸入品である、高価な紙を使ったものだ。
そのため、1日2枚で商品の流れが分かるようにリスト化した。
それを数えて書き込んでいくのは、脳筋部隊(仮)だ。
集計は売り子である女性が帰る前にその紙に書き加えて、アレックスに提出する。
当分、そのデータの統計やトレンドだけはテオが行うことにした。
そのうち、事務員募集や孤児院から引き抜き等で補う予定だ。
今は流れを教えるために朝から夜まで、テオはクモ商会に付きっ切りになった。
これが軌道に乗ったころに、クモ商会でカレー販売をすることをテオは考えている。
輸入品である香辛料のPRにもなり、孤児院への定期的な仕事にもなるので、地域経済が回ればいい。
ちなみに、ドクは執事になるためにタキシードを着せている。
執事で、腕っぷしが強くて、茶もおいしく作れる。女性にモテル要素しかないなとテオが言っただけで了承した。
ちょろい。
ひと月もすると、店にかかわる時間も減ってきた。
皆やる気が出ていたので、思った以上の短期間で仕事の引き渡しができ始めている。
空いた時間に鍛錬をしようとテオは思っていたが、ここで光着などするわけにはいかない。
そこで時間配分的に、夜に森に行き、光着して型を覚える。そして昼の空いた時間に型を生身で復習することにした。
筋肉を鍛えるための型(馬立ち等)ばかりだと飽きてしまうため、空手や拳法の型などを混ぜて学んでいた。




