2-13
「では、カレーをつくります!」
カレー本をタブレットで読んでから、立ち上がって叫ぶ。
今回の野営地にきてからすぐに、乾燥した木をを集めて刀で切りそろえてはいた。
まだかまどがないため、かまど作りからと段取りが悪い。
とりあえず、試食用のため、ツバメ産の鍋で調理を始める。
安肉(ヤザラシの肉)を炒める。独特のにおいで食欲がなくなるほどだ。
適当に買った根菜を適当に切り、これも肉を炒めている鍋に投入。
頃合いを見計らって(これも適当)、水を投入。
火力が弱いのか中々沸騰しないため、テオがファイヤー魔法を鍋にあてる。
「沸騰しろ~、沸騰しろ~。」
沸騰したら、魔法をやめて灰汁取り。想像以上の灰汁に苦戦。
ほぼほぼ灰汁取りが終ってから、鳥さんスパイス投入。
とろみがまるでないので、ジャガイモモドキを適当に切って投入。
いい香りととろみが出てきたのだが。
「テオ様!魔物の群れがこちらに向かってきます。その数、30頭ほど!」
鳥さんが警告する。
「え?なんでここに?」
「それはもちろん…。」
鳥さんとテオがカレー鍋をみる。
「その鍋を土に埋めるかすれば、相手にしないこともできるかと…。」
「するわけないだろう!」
「テオ様、そのカレーをスタンピードカレーと名付けましょう。」
「うまいこと言ってる場合か! …カレーだけに…。」
鳥さんがジェスチャーのみでため息をする。
「では、相手にしますか?」
「そうだな。光着!」
「やる気満々ですね…。」
もうテオは黒い鎧をまとっている。
テオの光着をみて驚くケルに、テオは指示する。
「ケル、そのカレーを守れ!」
「バウ!」
元気のいい返事に鳥さんがつぶやく。
「いえ、ケルはテオ様を守るためにいるんですが…。」
テオがその言葉を無視して、群れに向かって走る。
「俺のカレーを邪魔するやつは地獄に落ちろ!」
叫ぶテオを追いかける鳥さんだった。
テオの刀で真っ二つになった死骸、鳥さんの攻撃で文字通り粉々になった死骸。
唯一、ケルが相手にした魔物は喉を食いちぎっているなどして、肉は取れそうだ。
血抜き処理まで済ませる。これもカレーの具材になりそうだ。
処理を終えてカレー鍋に戻って、のぞき込む。
「すっかり冷えちまった…。」
火が落ちていたので、また枯れ葉から火をつけ始める。
とろみがついてるので、ある程度かき回しながら温める。
「沸騰させる必要はないから、ちょうどいいかな。」
ぐるぐる回していると、やっといい香りになってきた。
これはパンでいただこうとテオがパンを取り出していると…。
「テオ様!魔物の群れがこちらに向かってきます。その数25匹ほど!」
「お前らにカレーフェスやってんじゃねーんだよ!!」
テオは空に向かって叫んだ。
その後もう一度、スタンピードを発生させてからの食事。
肉は売るほどたまっていた。
成り行きで図らずも周辺魔物の間引きをし、疲れたテオがカレーを一口。
「あ、うまい。寝かしたカレーだからドロッとしてるけど。」
カレーは出せば売れると確信したテオだった。
泥のように眠り、モスⅢの中で目を覚ましたテオ。
スライドドアを開けると、朝日の中に凄惨な光景をみる。
血抜きをしていて置いてしまっていた肉が無残に食い散らされて。
仲間内か種族違いかで争ったのだろう、血の跡を見る。
かまどは破壊され、モスⅢにも血がついている。
「朝の気分が台無しだよ…。」
ため息交じりに決心する。
「街に住もう。森は人の住むところじゃない!」
「でしょうね…。」
鳥さんも当然合意する。
鳥さんとしては、守るべき存在のテオが、自分から魔物を引き寄せているんだからたまったものではない。
「アレックスに頼めば何とかなるだろう!」
「あれ、助けられただけでよかった、なんて言ってませんでしたっけ?恩を盾にお願い?」
「だから、今度は俺が助けてもらうんだ。」
「うわっ。最低な大人…。」
「聞こえてるぞ。」
テオと鳥さんの追いかけっこにケルも楽しそうに走り出し、街へ向かうのだった。




