2-12
「よお!また来たな!」
クモ商会の店に入ると、アウロラが声をかけてきた。
「あ、忙しいようだったらまた後で来るけど。」
確かにアウロラが店の陳列の指示をしているところだった。
「弟の命の恩人を無下にできるかよ。さあ、入った入った。」
そう言って、テオを昨日の応接室に引き込む。
「で、結局どうするんだい?その頭のいい鳥さんとはなしたんだろう?」
「ええ。当分この街にいようと思います。その間、用心棒みたいなことも引き受けますよ。」
「お、それは願ったりかなったりだ。どういう心境の変化だい?」
「まあ、色々です。」
「ほう?まあ、いいか。じゃあよろしくな!」
そう言って握手をもとめてくる。想像通り、武術か何かをしている手だ。
「それで、家か何か探してるのか?」
「察しがいいですね!?」
「そりゃ、初めてきた所なんだし。とりあえず探してみるが、なにか要望があるか?」
「要望、ねえ。あ、台所があるところが助かる!」
「台所?ここの若いやつらは台所のある所に住まねえぞ。食い物が安いからな。」
「ああ~、なるほど。」
言われてみれば、魚屋は少ないが魚料理屋は多いとはテオも思っていた。
テオが考えているスープカレーを安価に売れば、本当に日銭稼ぎで生活することになりそうではあった。
少し考えているテオにアウロラは話しかける。
「なんで台所が必要なんだい?」
「実はここで日銭稼ぎのため、飲食の屋台をしようと思ってるんだけど。
スープの売り切りで、器ごと売ることで場所を取らずにする。
試食とか下ごしらえとかしたいから台所が必要と思うんだ。」
「飲食ねぇ。あまり儲からないと思うよ。ここじゃあ。」
「そうなんだろうね。まあ、自分の鍛錬の時間が欲しいから。今回は生活費がでればいいかと思ってる。
心配してくれてありがとう。」
「いや、そりゃ心配するさ。まあ、なにかあったらうちに来ればいいよ。
あ、それと。売り切りにするならここの軒先を貸してやるよ。
それで家の客が増えればお得だしな!」
そう言ってアウロラは口を大きく開けて笑う。
あまり女性を感じない人だとはテオは思っているので、話しやすい。
「助かる!ありがとう!」
テオも笑顔でお礼を言う。
アウロラがいい所を見つけてくれればと思うが、やはり“何とかなる”と思うテオであった。
食器屋に行って交渉もした。
大量に買う場合の値引きについては渋々承諾をもらったが、事前に連絡をくれとのこと。
あの安い器は孤児院の子たちが作り、売り上げが子供達の食事になる仕組みのようだ。
一応、どういった刃を使ってるか物をみせてくれたら、より切れ味のある治具を渡す話しをする。
一日に何個できるか知らないが、より多く器ができれば、より多く売ることができるからだ。
用はほぼ済んだので、門から出ようとするテオを門番は不思議そうな、訝しいそうな目でテオを見て言った。
「お前さん、どこに住んでるんだ?」
「まだ森で野宿ですけど、もうすぐここに引っ越しますよ。」
「よく魔物に襲われないな?」
「避けてますから。」
テオは鳥さんから言われた場所でモスを呼び出し、中で寝ることにしている。
多少の魔物が襲ってきても傷がつくかどうかな程の強度はある。
「そんなことできるんかねぇ。」
「できるんですよ、私。では。」
他人が見ればまだ年若い大人と犬と鳥のグループが森に入ると言えば、確かに変。そう自覚し始めたテオ。
鳥さんに常識を疑われるのも理解し始めたのだった。




