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「刃文もきれいにできているな。」
刀を鞘から抜いて、テオはシゲシゲと眺める。
「刃文はこだわって作りました。土置きという技法を再現してまで。私も日本のAIですから!」
気のせいか、自慢げにしている鳥さんを初めてみたテオは「おお!」と拍手をして大げさに褒めた。
「さあ、気を取り直して。
光着!」
一瞬の光の後、テオは黒い鎧を身にまとった。
テオの兜内側は全方位モニターになっている。後ろに目があるわけではないのだが、そこも無駄に映像が流れている。
「では、型の手本からAR技術でモニターに出します。」
「おお!」
テオが驚いたのは、まるでそこにいるかのように再現(再生?)されている日本の達人の姿だ。
その人物が刀を垂直に振り下ろす。素振りの基本のようだ。
「では、見ながらやってみましょうか。」
そう鳥さんが言うと、鎧のモータが動きを先導する。テオは力まずに、力に逆らわずに素振りをする。
「これはいい!自分の体が乗っ取られて正しい動きを覚えられる。」
数十回素振りをしてから鳥さんの説明が始まる。
「次はサポートを切ります。ただ、間違った動きをした場合は訂正力が働くようにします。」
「へー。どれどれ。」
テオが少し斜めに刀を下ろそうとすると、肩のモータが邪魔をしてまっすぐに下させようとする。
「うん、これくらいならいいな。」
数十分程素振りをすると、テオの息が上がってきた。
「鳥さん、この兜は外せるか?なんか息苦しく感じる。」
「酸素量は問題ないようですが、気分の問題でしょうかね?では接続を切ります。…どうぞ脱いでください。」
「ぷふぁっ!」
テオは兜を外すとすぐに地面に横たわった。
「これは疲れる、な。」
「そうですね、サポートがなければ、軽いとは言え鎧をきて素振りですからね。」
「はぁ、はぁ。
これは夜にやるのはきついぞ。村にいるときだって午後にしてたんだから。」
「その話ですか。でもお昼のテキ屋なら午後は空くのでは?」
「本格的に考えなければだめだな。そうだ、明日の朝、市場を見に行ってみよう。食材とかみればなにか思いつくかもしれないし。」
「いい考えと思います。それからクモ商会に行けばよろしいですね?」
「そうだな。まあ、何とかなるだろう。」
そんなことを話し合って、晩御飯にする。モスが往復するときまっていたので、今日はカレーライスを積んでもらっていた。
「ああ、キャンプの晩御飯はカレーだな!」
心底、幸せそうにテオはいうのを聞いて、鳥さんも言う。
「まあ、こんな森中でもキャンプ気分でいれるのは素晴らしいですね。」
ジトっとテオが鳥さんを見ると、鳥さんはケルが呑み込もうとする川魚を、横からついばんでいるのだった。




