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2-6

突堤突端で降りた2人と1羽。モスⅢを隠し、アレックスの目隠しをとる。

「あそこの人だかりがそうか?」

テオが鳥さんに問う。

「はい、間違いないです。」

「じゃあ、行こうか。」

テオがアレックスの背を押して歩きだす。

アレックスからするとなんでここにいるかも疑問だが、押されるままに一緒に歩く。


しばらくすると言い争う集団が見えてきた。

「テオ様、武器を持っている者が28名います。何かあれば私でテオ様に“光着”いたします。」

「頼み。まあ、海の魔物?を退治する気なのだから当然だろう。ちなみに、鳥さんも“光着!”って言ってくれるのか?」

「いえ、言いませんが?」

「ロマンがないなぁ。」

「鳥が叫ぶことにロマン、感じますか?」

「……。いや、感じないか。」

そんな会話をささやきあいながら歩いていると、突然アレックスが走り出した。


「姉上!!」

姉上と呼ばれたであろう女性が、こちらを向きアレックスを見つけて驚いた顔をするも一瞬、こちらも走り出して抱き合った。

「アレックス!生きていたか!よかった!」

「姉上!姉上!」

感動の再会であろうから、テオは黙って二人の傍まで来てたたずむ。

周りのあまりガラがよさそうではない男共が武器を構え、テオを取り囲む。

「テオ様。」

「まだいい。」

鳥さんと短く言葉を交わし、そのまま無防備に立つ。

その雰囲気を感じ、アレックスが声をあげる。

「姉上、みんな!この人に僕は助けてもらったんです。」

その言葉が回りの硬くなった雰囲気を少しゆるめるも警戒はとかれない。

テオもどう言葉をかけるか少し困ってしまう。

「お前たち、武器を下げろ!アレックスの命の恩人だ!」

周りのあまりガラのよくない人たちが武器を下げる。が、警戒心はとかれてないようだ。

「お客人、アレックスを助けてくれたんだな、礼を言う。ありがとう。」

「いや、俺が現場に到着したら彼がまだ生きていた。だから助けた。それだけだ。」

「それだからだ。本当にありがとう。」

「お礼を言われると、連れてきたかいがある。じゃあ、アレックス、元気でな。あとは任せた。」

そう言って踵を返すと「待って!」と“姉上”の声、それに反応してテオの前の進路をふさぐ男共。

テオは怪訝な顔をして振り返る。

「なんだ?」

「いや、お客人。家の者が済まない。ただ少し、話を聞かせてもらいたいだけだ。おい、お前らはあたしの後ろに来い。」

言われた男共がゾロゾロと“姉上”の後ろに集まる。統率は取れているようだ。


「悪かったな。こいつらも悪気があるわけではないんだ。それでお客人、っと。名前も名乗ってなかったな。あたしはアウロラ=クモ。クモ商会の大番頭をしている。」

「俺はテオスト=ゴグール、こっちは“鳥さん”だ。」

「“鳥さん”です。お見知りおきを。」

周りが“へ?”っとなる。

「まあ、色々あってこの鳥さんはしゃべれるんだ。」

「色々ねぇ…。まあ、いい。それで助けてもらった状況を教えてほしいんだ。あたし達は今から船を出して付近を捜索しようとしていたんだ。」

「救出したい人がいるというのであれば、付近ではもう人影はなかった。板の上で寝かされているアレックスだけだった。」

「板の上に寝かされていたのか?」

「そうだ。ただ、俺も船が魔物に襲われている状況を見たわけではない。その点はアレックスに話してもらわなければ分からんな。」

アウロラとテオがアレックスをみる。

「えっと…。」

そう言って、アレックスは話始める。


「もうすぐベコウの港に着くっと父上に言われて甲板に上がったんです。少しして、マスト上の見張りの人がシードラだ!と叫んで…。」

アレックスの表情が曇る。テオは実は、ここに来るまでにアレックスをせかす、急がすなどして悲しむ間を与えないように意識していた。

ただ、ここまでくれば家族や仲間?もいるのでいいと思い、話しの続きを待った。

「父上に船内に入っていろと言われて、待っている間に船が揺れて、頭や体を壁にぶつけて、それで…。」

震えるアレックスをアウロラが抱きしめる。これ以上は無理だろう。

「そこから先は俺が話そう。」

そう言ってテオが話し始める。

「俺が見たのは大きな水柱だ。生存者がいるかもしれないと思い、現場に駆け付けたら板の上で気を失っているアレックスを見つけたんだ。」

「そうかい。他に生存者はいなかったって言ってたね。」

アウロラがアレックスを抱きしめて確認してくる。

「ああ、俺が見る限りではな。もしいたとしても、2人以上は救出は難しかったかもしれない。」

「じゃあ、みんな死んじゃったの?」

アレックスが聞いてくる。テオは正直言うしかなかった。

「みな、死んだ。そう思う…。」

うつむき、涙をボロボロ流すアレックスに近づき、目線を合わせて。最初に会った状況を鑑みて、思っていた、いや、確信したことを言う。

「でもな、アレックス。最初にアレックスを助けようとしたとき、お前が乗っていたあの板はとてもバランスが悪かった。

普通はあの上で気を失っているとはいえ、乗れるものではなかったはずだ。」

アレックスが涙顔をあげる。

「だから俺は確信している。

お前は、誰かに、あの板の上に寝かされたんだ。海の中なら臭いや体温でそのシーバスが襲ってくるかもしれない。それを避けるために、板の上に避難させたんだ、と。」

アレックスの涙が増える。テオも泣いていた。あの状況を分かり合える2人なのだ。


「だからお前は、生きてくれ。」

「…………っ!はいっ!」

つぶやくような小声で、でもしっかりした返事をアレックスは返したのだった。


「ゴグール殿。アレックスを助けてもらって本当に感謝している。ついてはお礼もしたいので、明日にでも家に来てもらえないだろうか?」

アレックスが落ち着いてからアウロラがテオに尋ねる。

「別にお礼のためにしたわけではないから気にするな。死んだ人たちから託された子を助けられただけで満足だ。それに元々、ここには両替で来ただけなんだ。」

「両替?ならばちょうどいい。私たちの商会の軒を借りている両替商にくればいい。レートは勉強できるぞ。」

「え?そうか、それならちょうどいい。明日伺おう。場所はどこなんだ?」

話しを聞く限り、どうやら関所でしりあったワークの教えてくれた場所と同じだった。

「なんだ、ワークに教えてもらった場所と同じだな。」

「おや、ワークを知ってるのかい?」

「ああ、関所で手続きをしてもらった。」

そんな話を続けて、明日の午後に訪問する約束をすると、テオはもといたキャンプ地に帰るのだった。


キャンプ地に帰ってみると、魚は食べつくされ、テントは引き裂かれていた。

「ああ!なんだこれ!」

「魔物でも来たんでしょうね。まあ、その場にいたらその魔物の肉とか取れたんですが…。」

「晩飯、食べてないぞ!」

「街から持ってきた干し肉、モスⅢに積んである非常食、どちらを食べます?」

鳥さんに聞かれても、テオはすぐに答えられなかった…。

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