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モスⅢ内は鳥さんがやってあったのだろう、後部座席の背持たれを後ろに倒されて簡易的なベット形状になっていた。
そこに子どもを寝かせる。鳥さんが体調をスキャンした。
「大丈夫です。気を失っているだけです。もしかしたら気を取り戻してから、また気を失ったかもですが。」
「どっちでもいい。一回陸に帰ろう。街にこれで降りると面倒だから近くの森に行こう。操縦は返すぞ。」
ああ、そうだと、
「光脱。」
とテオが言うと、黒い鎧は光の粒えと変わり、すぐに消える。それから右手首を左手人差し指中指で叩く。
パワードスーツが金属のガントレットに変わり、右手に固定された。服は元のままだ。
「うわっ。汗がすごい。降りたら着替えて洗っとこ。」
「了解です。川の近くがいいですか?」
「そうしてくれ。」
通常飛行を始めてすぐ、テオはもしかしてと思うことができた。
「なあ鳥さん。今はこの(ガントレットを指さして)パワードスーツは服の上から装着してるよな。」
「はい。確認しなくてもその通りです。」
「これって、服の中の素肌に直接装着できないか?服が邪魔か?」
「いえ、出来ます。テオ様の体に沿って展開するだけですから。そうされますか?」
「できるんかい!じゃあそうしてくれ!っていうか教えろよ!」
「ではそうします。プログラムコードを変えるだけなので、今やりますね。……。できました。」
「すぐできるんじゃねぇか!」
AIがあまりにも人間に近いなら、そう言うのも分かれよ等々、軽く独り言を言うテオだった。
夕方、川近くで焚火で川魚を焼く。キャンプ感覚で楽しい。
子どもはまだ目を覚まさないが、鳥さん曰く身体に問題ないからとのことで、自然に目が覚めるのを待つことにした。
今は普通の旅人のカモフラージュ用テントに寝かせている。
「なあ、鳥さん。確認しておきたいんだが。」
「なんでしょうか?」
「鳥さん、いやツバメのAIは俺自身の安全のためだけに動くのか?俺の周りの人達のためには動かないのか?」
「基本的にテオ様の安全のために動きます。ただ、テオ様の家族の方たちはできる限りの安全を図るようにしています。」
「じゃあ、今も俺の家族のことを?」
「基本的にセンサー類でわかる範囲の観察はしています。何かあれば相談か逃げ延びさせる方法をとることになります。」
「そうか…。」
テオは考え込みながら川魚をみる。火力が弱いからまだ焼けてないようだ。
「俺は目の前に困っている人がいたら助けたいとは思う。赤の他人でもだ。今回の件も、助けたいと思った。」
「そのようですね。ただ、それでテオ様が危険な目にあいました。」
「そうだな…。」
少し火力をあげようと薪を焚火にくべる。
「とりあえず、俺の周りで何かが起こっているならば教えてくれ。そこにツバメ、鳥さんの判断はいらない。」
「分かりましたが、“俺の周り”と言うのを具体的に距離で言ってほしのですが。テオ様なら大概の場所、人を救えますよ。もちろん、人間関係や経済的困窮などは難しいでしょうが。」
「まあ、そうなるよな。じゃあ、そうだな…。俺の周り5㎞位でたのむよ。」
「分かりました。5㎞程でいいんですね?」
「ああ、それくらいでいい。」
「いえ、それくらいと言われると不鮮明です。例えば9.8㎞では報告しなくていいということでよろしいですね?」
「おい、なんで9.8㎞と具体的なんだ?」
「いえ、ベコウの港で船を出す出さないで揉めている者たちがいるようで。船を出すと決めた場合、そこから2.3~2.9㎞先に巨大生物がまだいるようなので。それでお聞きしました。」
「おい~!あれ、もしかして…。」
「テオ様のお考えのとおり、昼に沈没した船の生存者救出や積み荷の引き上げが考えられます。いえ、夜だから積み荷の引き上げは可能性が薄いです。」
「だからなんでそういうことは察せるのに…!いい、行くぞ!」
「テオ様、お待ちください。」
「距離の問題は後回しだ!行くぞ!」
「いえ、子供が目を覚ましたようです。」
「……。タイミング悪すぎだろ~!」




