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その日の夜、明日旅立つテオのためにゴスタスがお祝いと称して身内だけのパーティを開いてくれた。
こうなるとテオも多少は飲酒する。
いつもの晩餐と違うのは、もちろん豪華な食事と酒類、そして少数ながら楽団が入ることだ。
お酒を飲みながらのゴスタスの話しは面白い。彼の話しの妙味は自分を下げて話を面白くするところだ。人の失敗や悪口などはあまり言わない。
自分に自信がある人は、劣等感を持たない者は、こう話す人が多いとテオは思っている。
ゴスタスは話が一区切りつくと、妻のフィオーネとダンスを踊る。テオも踊れと言われるたびに踊るので、フィルと何回も踊ることとなった。
その間、息子のガリウスは一人酒を飲んで2組の踊りを静かに見ていた。
テオとしては付き合いとしての参加という面が強いため、そろそろいいのかと終わるタイミングを探している。
ふと、隣に座るフィルと目が合う。フィルの目が涙ぐんでいるように見えた。
[フィル?」
テオが問いかけるとフィルが涙を流し始めた。そして、テオに抱き着いて泣き始めた。
[フィル!?フィル、な、どうした?」
慌ててフィルの顔を見るために引きはがそうとしたが、強く抱き着かれているのでどうにもならない。
周りを見ると、やれやれという顔が並ぶ。楽団は悲劇曲調の音楽を奏で始める。
『そういうのはいいから!』と思うが言えない雰囲気だ。
そうしてゴスタス、フィオーネ、ガリウスが二人に近寄ってきた。ゴスタスがフィルに声をかける。
「フィル、テオが困ってるからはなれなさい。」
「イヤ!離したらもう会えない!」
フィルは顔を振りながら抱きしめる腕に力をこめる。
テオは困惑する。正直、そんなに好かれているとは思ってなかったからだ。
ガリウスがそんな妹をみて困り顔でテオと話す。
「なあ、テオ。やはり旅に出るのをやめることはないのか?」
「ええ…。そうですね。もう決めたことですから。」
「そうか…。じゃあ何か、フィルにプレゼントをやってくれないか。なにか身に着けているものとか、大事なものとか。」
こんなに泣いてくれるフィルに、言われてみればなにかプレゼントでもすべきかと考えるテオだが、あまり物に執着がないテオには渡せるものが思いつかない。
鳥さんを見ると、「私をあげるとかは言わないででくださいね?」と言われてしまう。
「鳥さんは物じゃないからそんなことはしないよ。と言っても…。」
フィルの髪をなでながらテオは考える。『渡せるものが何もないな。大事でないものなら、あるか?』
結局思いつきで渡せるものに気づいたので、フィルに言い聞かせて離れてもらい、部屋に取りにいく。
テオが戻ってくると、その手に握っていたのは、海の底から抽出した大き目の魔石だった。
この地域で考えると、大物の魔物がいないので、大き目の魔石は案外貴重品だ。テオからしたらツバメで作り続けるので価値は低いが。
テオはフィルの手を握って魔石を手渡す。
「フィル。今は手持ちの物がほとんどない。だから、これしかプレゼントするものがないんだ。受け取ってくれるかい?」
フィルが黙ってその魔石を眺めている。
「それは火属性の物で、少しの魔力で大出力の炎を出せる。魔力を抜き出せれば出力も大きいから、魔法の威力も上がる。そんな物しかないんだけど、受け取ってもらえたらうれしい。」
魔石を目にテオの説明を聞いていたフィルが、
「綺麗…。」
とつぶやいた。テオは内心ホッとしながら、
「よかった。喜んででくれているみたいで。」
と言うと、フィルは魔石を右手に掴んで、両腕をテオの首に回し、テオの唇にキスをした。
「ありがとう、先生!旅の終わりにはもっといいものをもらえるんですね!待ってます!」
そう言って、またテオに抱き着く。テオの胸元は涙や鼻水で濡れまくりになるのだった。
次の日の朝、ゴスタス一家、使用人に見送られる。一人ひとりと話し終り、最後はフィルだ。
「先生!待ってますからね!」
目を真っ赤にしたフィルが元気に言う。
「わかったよ。約束だ。」
少し惜しい気もするのが正直なところだが、テオは昨夜にここを出ることを再決心していた。もう迷いはない。
「では、皆さん、お元気で。また来ますね!」
そう言って、テオは用意してもらった馬車にのり、館を後にするのだった。
ここで一章は終りとします。
読んでくれた方、ありがとうございます。
二章、三章は今、頭の中でこねくり回して自己満足段階です。
感想をもらって、楽しみにしている人を知って、これは早く書かねばと思うだけはしています。
(すいません!)
色々とあとがきを書きたいけど、それより先に物語を進めなければと思ってもいます。
(これも思うだけですいません!)
では、また二章で!




