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その日は、フィルとの授業は休みであったが、旅のために買い物に2人と護衛さん3名とでテオの買い物に行った。もう一か月もしないでここを旅立つ準備のためだ。
フィルも行くと言うと、護衛もついてくる。護衛の人がいると案内もしてくれるので助かった。"
バッグや防寒具兼毛布になるマント、ランプなどをもらったお給金から買った。両替所に行って数か国の通貨を手に入れて午後には帰宅。
多少の疲れで昼寝したので、夜に眠れない。せっかくなので領主宅庭の夜の散策をしている。
この星も地球と同じく夏に銀河中心を向くので、星明りと月で影を作る。
日本で言う天の川を見て、方角すら分からない地球への感傷にひたっていた。この星空は地球人はだれも見れないと思うとそんな感情にもなる。
テオはここを出たら最北部の国、カタメン王国に行こうと思っている。この星の大陸は一つしかなく、それが上辺の長い台形の形をしており、テオがいるのは短い底辺の右側、ジャカン王国だ。カタメン王国とジャカン王国の間にツガイ共和国がある。
夏の間にカタメン王国に行き、その後は南下しようとテオは大雑把な計画をしている。
鳥さんを通してツバメのデータなどは見れたり聞けたりできるが、やはり実際に行って他国を体感したい。その技術や道具を持っているなら当然だろう。なにせ長距離ドライブと変わらないことなのだから。
テオがつらつらと取り止めなく考え事をしていると、鳥さんが話しかけた。
「フィル様がこちらに向かって歩いています。その少し後ろに護衛が1名。」
軽く頷いて、フィルを待つことにした。
「こんばんは、かな。フィル。」
テオから話しかける。
「はい、こんばんは、です。先生。」
フィルが近くまで来たが、近くにいるはずの護衛が見えない。陰ながら見守る方のようだ。
「窓から庭をみていたら、先生がいましたので…。」
「あれ、フィルも昼寝して眠れなかった?」
「そうなんです。先生もでしょう?」
「そうそう。それで旅の順番とかここで考えてたよ。」
「もう行かれるんですもんね。どれくらい行かれるんですか?」
何回か同じことを聞かれているが、答えも同じだ。
「本当に決めてないんだ。数年になるかなって思ってはいるけど。」
「確かツガイを素通りしてカタメンに行くって。無駄と言うか贅沢というか…。」
普通は徒歩や馬で行くからそう感じるが、テオにはモスⅡがある。
テオが笑ってコクコク頷くと、フィルは神妙な顔で話してくる。
「カタメンがツガイに戦争を仕掛けるという噂を父に聞きました。危険なので、行かない方がいいのではないでしょうか?」
「え?そうなの?」
驚いて鳥さんを見る。フィルが目の前にいるので、言葉を選んで鳥さんが答える。
「確かに人の塊が南に多くなっているようです。ただ、あの国は人口の割に兵が多く、移動も多いため、戦争準備とは思えませんでした。
仮に戦争準備をするとなると、もっと南に兵を集めると思われます。
フィル様、ありがとうございます。私も気をつけて周辺を監視しておきます。」
「え?! あ、はい。鳥さん、すごいですね。遠くの事まで見通せるだなんて…。」
ツバメがこの星を観察してるし、センサー関係も打ち込んでいる。国単位の大きな動きはマクロで分かる。
今後は会話等を聞き取って、情報分析できるようにしたほうがいいようだとテオは思った。"
「じゃあ、やはり行くのはかわらないのですね…?」
「そりゃあ、そうだね。行くね。今のうちにできることだから。結婚とか仕事をはじめたらできなそうだし…。」
「あ!結婚とかはする気はあるんですね!」
「行き遅れ、となっても結婚できればねぇ。独身のままでいようとは思ってないよ。」
「大丈夫です、先生なら。いなければ私がもらってあげます!」
「ふ、はははは。じゃあ、その時はよろしくね、フィル。」
「はい、任せてください!」
これはプロポーズにならないよなと思うテオだった。




