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「貴族は良いものを、近くにおいていつも観ている。だから本物を見分けることが民より秀でていると思うんだ。」
「そうなんですか?」
今日は天気がいいので、テオたちは庭にテーブルをおいて、紅茶を飲みながらの授業としている。
「たとえばこのティーカップ。」
と言って、ティーカップを持ち上げる。
「普通にこの家では使ってるけど、僕らの家だとまだ木のコップとかを使ってる。作るのはもちろん大変だけど、手先が器用だとうまく作れる。」
「そうでしょうね。」
「でもこのティーカップは違う。まず土を使って形を作る。それだけでなく、白色にするために何かを土に混ぜている。絵も書いてあるね。絵師が描いてるのかな。そして出来上がった物を、窯をを使って超高温で焼き上げてある。
これが木のコップより高価なのはわかるだろう?」
「高価なのはわかります。でもこのティーカップを作るのがそんなに大変とは思ってませんでした。」
「ここには高価なものや技術が色々と使われている。それを知ることは背景をしることだし、相手を知ることにもなるから必要だと思う。このカップでも先人の知恵が多く集まっているが分かる。」
「知ったら面白そうですね!」
「面白い、ね。フィルはやはりいい感性を持ってると思うよ。」
「えへへ。」
照れ笑いを浮かべて嬉しそうだ。
「これで想像してみようか。」
ティーカップを置いて、二人で見つめる。
「まず土を焼くと固まることが分かった。ただ、割れやすい。そこでただ焼くだけでなく、さらに高温で焼くと固い物ができるのが分かった。それで器のために窯を作った。
次にこれを白くしたいと思った。じゃあと言うわけで、土に白くなる物をいれた。まあ、動物の骨を粉末にした物とかなんかだけど。そして白い器ができた。
白だけだと可愛くないとか思ったのかな。ここに絵を書いて器に残るようにした。
ああ、この取っ手。固い物ができたから器を薄くして軽くした。そうしたら熱い紅茶をいれると器も熱くなるから取り付けたんだね。」
「色んな人が関わってるんですね。今作っている人たちも、その前に生きてた人たちも。」
「そうだね。色んな人や先人がつちかった技術、多くの失敗、もっといい物をっていう情熱。そんなものがこのティーカップを作るのに必要だったんだね。それにこの芸術性を形にする職人の技もあってこそだね。」
「いい物、だから高価なんですね。」
「うん。この屋敷にあるものは大概いいものだから、何故いい物かを考えながら見ていくといい勉強になるはずだ。俺がいなくなっても続けてほしいな。」
「わかりました。ただ先生がいなくなるのは寂しいです…。」
三か月だけの家庭教師という条件で、もう一か月を過ぎた。なついてくれて素直にうれしく思う。ちょっとうつむきがちなフィルに話しかける。
「大丈夫、俺よりいい先生がまたくるさ。それに俺には…。」
フィルが顔をあげて俺の顔を見るのを確認して。
「芸術的なことはまるでわからん!屋敷に飾ってある絵が綺麗とかかっこいいとしかわからないからな。」
「はい、私もわかりません!」
「じゃあ、新しい先生についてもらって勉強!」
「えぇぇ…。」
情けない顔のフィルを見て笑い始めたら、フィルも笑い出した。




