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翌日、テオは洗面をすまして身なりを整えた後、フィルの部屋に、執事に案内をされて向かう。執事がノックから部屋の案内まで終わって、ドアをしてめてから授業を始めた。
期間が短いので、俺は算数と村の体験談だけ教えることになっている。
早速、どこまで算数をやっているか聞くと、四則演算までやっているとのことで、いくつか問題を出してみる。
見ていると、掛け算がゆっくり。割り算でつまずいているようだ。テオにも経験があった。この現象は“大体どれくらい”が分からない現象だ。
算数が苦手でなかった方には説明が必要だろう。
例えば、225÷33 とあったとする。
式を書いてもらえばわかるが、225に対して自分で倍数を“大体どれくらい”かを考えて、式に入れるのに苦労すると言うこと。
算数が得意であれば、まず7か6を入れる。7は大きくなりすぎて(231になるので)間違いだから6(198になるので)かと“大体どれくらい”かを決めると言うことだ。そこは九九を言えればあてはめられるようになる。"
そうと分かれば解決法は簡単だ。九九を徹底的に覚えること。そらで暗号のようにいえるほどに。
多分おろそかなのだろう。ちなみに、この国にも九九はある。地アタマはよさそうなので、ここでやる気もなくしていたようだ。
それから2日間、九九を覚えながら感覚を養っていくと、スラスラと問題をとけるようになっていった。
テオも驚いた。もう苦手な教科がない。
「ありゃ、これは算数はもういいのかな?」
などと思って口に出すと、フィルがドヤ顔で大きく頷く。まだ、ほぼほぼ3か月残っている。
「じゃあ、村の話しをしよう。題して、村を発展させよう! ……はい、拍手。」
パチパチパチパチ。『うん、素直。』とテオは頷く。だがそうは言っても、系統立てて発展法があるわけでもない。なので自分の経験から話していこうと決めた。
「聞きたいことがあったら何でも聞いていい。俺に村は開拓村で小麦が主生産品目だった。一般的に貧乏と言うわけではない。食うものにはわがまま言わなければありつけたからな。」
授業を聞く生徒の目で俺をみている。聞く姿勢は大したものだ。
「でも遺跡から帰った俺は、旅に出ると決めたんだ。だから両親にはもう少し楽をしてもらいたいと思って村を発展させようと思ったんだ。それには…。」
「先生!」
とフィルが手を挙げた。どうぞとテオが頷く。
「遺跡ってなんですか?帰ってきたって遺跡からですか?旅に出たいってどうしてですか?」
「そこからか。」
内容を端折った気はないテオだったが、もっと細かく話した方がいいらしい。
フィルの目が好奇心でキラキラしてる。時間があるから自己紹介に使うのもいいか、と方針転換。先生は向いてないテオだった。
鳥さんはここに危険はないと判断して、でもテオの声にはこたえられる範囲で鳥と同じ食事や情報収集をしている。なのでテオが窓に向かって鳥さんを呼ぶ。
窓は開いていたため、少しして部屋に入ってきた鳥さんはテオの右肩に止まった。フィルの顔が驚きに変わる。
「フィルさんに遺跡の話しからすることになったから付き合ってくれ。」
「わかりました。」
俺たちのやり取りを見ていたフィルさんの顔が驚愕に変わる。
その日は昼食を挟んで、遺跡の話しから旅に出ることに決めたことを話した。質問が多いのと鳥さんにじゃれあったりして、夕食時間に呼びに来るまで授業(?)をつづけた。
さん付けはやめてフィルと呼ぶようになり、テオは自然と先生と呼ばれるようになった。
そして、フィルの強い要望で鳥さんをいつもテオとフィルの肩に適度に乗せることになった。
なのでそれからは、夜に図書室を借りて、鳥さんの知識吸収にあてることにした。




