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一か月ほどたった。
特に変化はない。
この星では魔法が使える。生活魔法の着火などは半分以上が使えるし、テオも使える。
着火の上位のファイヤーを使えれば、村でも防人になれる。
そんな世界なので、テオの知識があまり出番がない。
畑、農業に関しては前世のワタルに知識はない。ツバメ内で食料は生産されていたが、科学的に原子組み換えし分子の入れ替えで作られてたからである。
ただ算術に関しては、村長さんの娘 ソシルさんを超えて村一番とわかった。それだけなので、結局、今日も麦の種まき前にクワを入れて畑を耕していた。
『なんだろう。生まれ変わったことが分かっても、何も変わらない…。』
単調な仕事を物思いにふけりながら進めていく。
『火起こしの知識があっても、水の構造分子の知識があっても、飛行機の飛ぶ理屈の知識があっても…。』
「全然意味ないじゃん!!」
後半は叫び声をあげている。
そんなテオを父も、ついには弟も可哀そうな感じで見てくる。
ただ、そんな視線にはもう慣れたので気にせずに畑仕事を続ける。
一区切りついて、クワを地面に差立て、空を見る。
雲一つない、穏やかな昼下がりの青空。ただボーっと空を見る。
!!
見える!確かに見える!
青空の高いところに、薄く白っぽい何かが見える!
小さく、少し目を離すとどこだかわからなくなるほどだが、テオが見つけたものは確かにある!
まだいたんだ!
「お父さん!見て!見て!」
急に様子が変わったテオが呼ぶので、オネストが心配そうな顔で近寄ってきた。
「お父さん!見て!見て!あそこ!あそこ!」
オネストも見上げると、言われてみれば何か白く見えるものがあると言えばあるようにぼんやりと見えた。
「う~ん、なんかあると言えばあるような。」
「でしょう!やっぱりあったんだ、ツバメ!」
コネストも寄ってきて見上げ、ホントだ!と声をあげてくれる。
ツバメに行きたい!
テオは強く思うのだった。
その日のよるから、テオはツバメ乗り込み作戦を考える。
ワタルが死んでからどれくらいたっているかがまず分からない。
ただ、モスはこの星にあるはずだし、少し遠くにある山が富士山って山に似ているので、そこの周辺を探せばモスがあるかもしれない。
モスの動力が生きていれば、もしくはツバメと連絡が取れれば何とかなりそうだ。
ただモスを探すにしても、あの山まで行かなければならない。
周辺は大型動物などがいなかったが、安全かどうかわからない。
ここでは、12歳から15歳が成人前の青年期間とされている。
テオは考えた。
ならば12歳で何日かかるかわからないあの山周辺に向かおう!
そのためには、自分を守る護身術を身に着けるしかない。
できる限り剣術や攻撃魔法を覚えなければ…。
野宿、サバイバルの道具・知識も必要と…。
体も鍛えなければな。あ、それは畑仕事を頑張れば筋肉はつくか。