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この2年で村は大きく変わった。
もともとチートで発展させる予定だったので当然といえば当然であるが。
まず、胡椒をツバメに作らせてゾルタ商会に売って大金を得た。
鳥さん曰く、種は作れないが、分子分解で胡椒の粉は作れる、とのことだったから。
その後、ゾルタの薦めで、また胡椒の売り上げでを元にゴグール商会を立ち上げた。法人と個人の取引から法人と法人の取引となった。
そうなれば、村で作り始めていた石鹸・シャンプーやリンス、ゴグール印のマヨネーズやソース、焼肉のタレなどの利益率がいい物を納め、
商会を、村を巻き込み大きくしていった。"
つまり、畜産が始まり、乳製品の製造。大豆などの畑を耕して、付加価値をあげていった。
修行仲間だった、カネッツとライルはそれぞれ農家を継いだ。
テオも15歳になる。
孤児院にいた、ジュリとスミスは畜産の旗頭として子供ながらに他の村人と一緒に働いている。
街に農作物(肥料などのおかげで豊作なので、販売に回せるほどの量)、商品を卸しに行くのに、通常だと1日半位かかる。ただ、道中はほぼ安全だ。
この地域には大型の猛獣や魔物がいない。また、山賊なども、人手が欲しいところばかりなのであまりいないのだ。
もちろん、この辺の防人たちが優秀なのが前提だが。
今日もテオが街にきてゾルタ商会に商品を卸していると、商会長のゾルタさんが話しかけてきた。
「テオ君、ちょっと話があるのだが。少し抜けれるかね?」
「はい、大丈夫ですよ。」
そういって、弟のコネストに仕事を任せてゾルタさんの後に続いた。
「実は、領主様がテオ君に会って話したいことがあると言われているんだが。」
ソファに向かい合って座ると、世間話もなく本題に入った。
「領主様って、何回かお会いしたオルタ領主様ですよね?」
ゾルタさんは頷いた。
「そうなんだ。オルタ領主様が直接会いたいとのことだ。」
テオの頭に浮かぶのは、村の発展がうまくいってるから、そのことを聞かれるか、それともまた、遺跡についてきかれるか。どちらにしても行かないとゾルタさんや村に迷惑がかかるかもしれない。
「わかりました。では、3日後にお伺いするようにします。」
「そうか。領主様の直轄街は知ってるね。今は伝書鳩がここに来ているから、向こうに知らせておこう。」
この街から直轄街まで歩いて2日ほどの距離だ。モスなら2時間位だ。一回村に帰ってから行くことにした。
3日後、オルタ領主の家、と言うかお屋敷(でかい庭付き)の前にテオはいた。
門の前には守衛がいたので、オルタ領主に会いに来た旨を伝えると屋敷まで案内してくれた。壁の内側にもう一人の守衛が休んでいたらしく、代わりに門の前に立った。
屋敷前で守衛に待ていろと言われて、辺りをジロジロみて待っていた。管理の行き届いた庭をみて時間をつぶす。村では見たこともない花が多い。
突然、扉が開き、絵にかいたような白髪の執事がでてきた。後ろにメイドが1名続く。
「テオスト様、こんなところでお待たせさせてしまい申し訳ありません。さあ、中におはいりください。」
そういってテオを中に入れて、応接室だろう場所に案内する。
「すぐにオルタ様が来られますので、お座りになってお待ちください。」
座ってると、本当にすぐにオルタ領主さんが来たので、立ち上がって挨拶をする。
「こんにちは、オルタ領主様。お呼びとのことで、お伺いしました。」
「おお、よく来てくれた。最後にあったのが半年以上まえだが、また背が伸びたようだな。」
「ええ。今年で15歳になりましたし。」
絶賛成長期真っただ中だ。
「まず、テオ君の村について聞きたくてな。」
そんな話し出しだったので、村について話した。農業の生産高があがったこと。畜産を始めていること。孤児院の子達の仕事をしてもらっていること。
ゴグール商会を立ち上げて、商品を開発して調味料等を売り出していることなどを掻い摘んで話した。
「やはりな。うわさは聞いているぞ。テオ君が遺跡から持ち出した道具や知識で村を発展させていると。」
「最初はそうでしたが、いまは村内だけで完結しています。皆が仕事に誇りを持って働いているから発展しているんでしょう。」
話しながら冷や汗をかく。
『まずいますい!この人何か俺にやらせようとしてないか?旅にでる邪魔をさせるものか!』
話しが途切れてから、オルタは話し始めた。
「ほう。では今はテオ君が村を出ても問題ないのだな?」
「ええ、私の夢は15歳で旅に出ることなので。そのためにここまでの体制が必要でした。」
「はあ?旅に出るだと?村の子供が?」
村で育った子供が村外に出ることがほとんどないのが常識なのに、テオは普通に街に商売で来て、さらに旅に出るって言っているから驚くのもしょうがない。
テオからしたら、他惑星から来てるのに村だけで人生を終わるのは面白くないと思ている。
「なんで旅に出ようと思うんだ?」
「いえ、遺跡探しの旅で色々見ることの楽しさを知ったからです。」
「楽しいから旅に行くのか?」
「そうです。後ろめたいから、両親が困らないように村を発展させてました。」
「後ろめたいから村を発展させた?!」
オルタからしたらとんでもないこと話しだった。
旅に出たいけど、親に悪いから村を発展させたと。村の発展がただの通過点だと言うのだから。
オルタが考えを巡らせてから、オルタはぽつりと独り言ちた。
「そうか…。まいったな…。」
テオには不思議だった。この人はテオに命令とかしてもいい立場だろうに、テオの考えを尊重してくれている。ゾルタや領内の人達が、領主を好きな理由がよく分かる感じだった。
「いや、噂を聞いて調べさせた。色々試行錯誤していたようだが、順調に村は発展している。なら領内での経営にも参加してもらうと思っていたのだが…。」
思ったよりすごい出世コースをテオに提示している。だが、
「申し訳ございません。それでも私は旅に出たいのです。」
もうテオは深いことも理由も言わない。力ずくでと言うなら力ずくで反抗する気でもあるし。
「そうか…。」
この短い時間のやり取りで、テオはこの人がかなり好きになっていた。テオからみたら強い権力を持つ人が、こんなに落ち込む姿を入れに見せていることで。
背もたれに寄りかかって、上に顔を向けて座って落ち込んでいる領主。本当にいい人なんだろうなと好ましくテオが見ていると、はっと頭正面に戻して言った。
「ならば、3か月だけでいい。私の娘の家庭教師をしくれぬか?!」
テオは思わず体を引いてしまった。家庭教師?
「娘は魔法は優れているが、算術やその他があまりできなくてな。かわいく美しい。魔法もできる。唯一の欠点が勉強ができないことだけなんだ…。」
「え?私は学校も行ってないですけど…。」
「いや、ソシルから聞いている。ああ、テオ君の村の村長の娘だ。知っているよな?」
「そりゃもちろん。私の先生でもありますから。」
「そのソシルが言っていた。もう私よりテオ君の方が勉強をよくわかっているとな。教えていたことからさらに先まで理解しているとな。」
それはそうであろう。地球の小中高までいけば、ここではいっぱしの大学教授である。
「どうだ、受けてくれぬか?受けてくれるな。そうだよな。」
娘さんのことになるとグイグイ来始めた。3か月ならまあ、ここは妥協すべきと考え始めた。相談する人もいない。ここの常識で考えれば領主様のお願いを断ることからして非常識である。
右にいる鳥さんを見る。一応聞いてみる。
「鳥さん。どう思う?」
「私はマスターの決定に従います。」
だそうだ。




