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次の週、無事にお金を借りて街にきた。テオの両親が石鹸やシャンプーを村で売ったので、融通がきいたようだ。
孤児院につくと、ジュリが真っ先にかけてくる。多分、待っていたのだろう。
「お兄ちゃん!!」
かけてきて、飛び上がって抱き着いてくる。テオが抱き留めて、勢いを消すために回転する。鳥さんは右肩から慌てて飛び上がっていた。
「ジュリ、ずいぶん元気だな。びっくりしたよ。」
「だって先週から待ってたんだもん。」
ずいぶん距離が縮まってるようだ。
「お兄ちゃんだ!」
「鳥さんだ!」
庭からさらに10人位走ってきた。囲まれた。いっぺんに一斉に話すから、もう何がなんだかわからない。秩序がない。
「お兄ちゃんはアネット先生と大事な話があるから。鳥さん、遊んであげてくれ。」
「テオ様、それは…。わかりました。早く帰ってきてください。」
鳥さんはテオから離れ、子供の頭を渡り歩いてゆっくりと飛び始めた。それを子供が追いかける。
アネットさんが玄関に出てきていた。
「ずいぶんと好かれましたね。」
「子供は好きなんですけど。ただ、付き合っていると疲れます…。」
「ですよね~。」
アネットさんも機嫌がいいようだ。それで気づいた。
「あ、シャンプーを使ってくれたんですね。」
「もちろん。髪の毛がサラサラになっていいわね。テオさんと最初にあった時、髪の毛が気になっていたけど、納得したわ。」
女性は清潔感、と言うものを重視する。
「ここで立ち話もなんですから、中に入ってください。」
「ありがとうございます。」
談話室で二人で向き合う。
「紹介するのは、ゾルタさんと言う商会の会長の方よ。石鹸とシャンプーを渡しておいてきたから、大丈夫だと思うわ。結果を聞いてないけど、試したらわかることだろうし。」
「ありがとうございます。これ、追加で持ってきたものです。また使ってください。 」
「ありがとう。実は期待してたの。」
可愛らしさにテオは苦笑してしまう。
「それでゾルタさんはいつ来ても時間を作るからって言っていたから、今日行ってきなさい。」
「わかりました。もう行こうかな。」
「慌てなくてもいいわ。お茶を飲んでから行きなさいな。」
用務員の人がお茶を持ってきていた。
「では、遠慮なく。」
テオがお茶に口をつけると、やはり聞きたいことがあったようで、アネットが聞いてくる。
「子供達をあなたの村に行かせると、仕事は何をさせるのかしら。」
「基本的に牛の世話、牛糞から堆肥を作るとかですね。土地が増えるので、畑仕事もしてもらいます。」
「ずいぶんと盛りだくさんね。」
「人が増えれば分担でできそうです。こちらで勉強とか教えてますか?」
「この国の歴史と計算式ぐらいね。他国に行く子もいるから。買い物位できるようにだけど。」
「魔法は?」
「魔法を使える子はいないわ。いないから孤児になったと言ってもいいくらいだから。」
それはおかしい、とテオは思う。『ここに生きて飲み食いするだけで、魔力の元が体に入ってくるはずだ。』と考えるも、このことは言ってもここでは決着はつかないだろうと思うので、深く聞かなかった。
「子供たちに、ギルドや商会、生産職の仕事手伝いをさせているかと思います。できれば畜産に行く子を固定してくれれば助かります。その子が真っ先に村にきてもらいたい子になります。」
「そうよね、みんなが誰でもとはいかないわよね。」
「申し訳ありませんが、そうですね。」
少し話の雰囲気が沈んだところに、開いていた窓から鳥さんが入ってきて俺の右肩にとまる。
「テオ様…。ずっと飛んでいると、体がもちません…。」
「ごめんごめん、そんなに長くなってたか?」
「早く帰ってきてくださいといいました。」
「悪かったって。あ、クッキー食べる?」
「そのままではこぼしてしまいますので、割ってください。」
「はいはい。」
テーブルにあるクッキーを割って、右肩の鳥さんにあげていく。
「友達みたいに話すのね、鳥さんと。」
「うんまあ、確かに友達みたいなものですしね。」
「テオ様とは主従関係でありますが、一応。」
俺とアネットさんは笑いあった。




