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詩集

彼の敗因は素直じゃなかったことにある。

作者: 片栗キノコ


彼の敗因は素直じゃなかったことにある。


彼自身、捻くれた思想の持ち主だと言うことは理解していたらしいが、いざその場面に直面するとどうしても素直になれなかった。


幼少期の頃に喧嘩になって友達を叩いてしまったこと。


素直に謝れなかった。


小学生になり宿題を忘れてしまったこと。


素直に忘れたと言えず、やってきてないと意地を張った。


中学生になり初めて好きな人ができたこと。


素直に好きだと伝えられなかった。


高校生になり言ってはいけないことを言ってしまったこと。


今だ素直に謝れなかった。自分の不甲斐なさに恥じた。


大学生になり彼自身、何も成長してないと感じた。


そして今、彼は社会の歯車として長年使われてきた。


青年だった彼も、いい年をしたおっさんだ。


そして、彼は負け続けてきた。

天邪鬼を貫いて良いことなど何一つとしてなかった。

そして彼はまだ負け続けるのであろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一度だけ彼が正直になろうとした時がある。


一生に一度の初恋の人への告白。


放課後の夕日に照らされた二人しかいない教室。


「話って?」


彼女は薄々勘付いていたのだろう。


「…君に彼氏とかいるの?」


これが彼なりの最大限の努力だった。


「…いないけど好きな人はいるよ」


彼は戸惑った。そんなこと聞いてない。

そして、彼の口からは…


「…また今度君に伝えるよ」


彼は逃げたのだ。


「ふぅん…」


彼女の目はよく見えなかった。


いつか、また伝えよう。まだチャンスはあるはずだ。



彼はそう思っていた。そう思い込んでいた。






彼女はその後交通事故で死んだ。



彼は伝え損なってしまったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まだ初恋の人を想う。彼は負けたのだ。


彼の敗因は素直じゃなかったことにある。


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