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シネマハウスへようこそ第二部  作者: 遊馬友仁
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プロローグ~愛の才能~④

自宅に帰り着き、《ビデオ・アーカイブス》で吉野家の人々から受けた提案のこと話したい、と母親に告げると、「その話しは夕食の時に聞く」と母は答え、加えて意外な人物から秀明宛てに連絡があったことを伝えてくれた。


「さっき朝日奈さんっていう女の子から、アンタに電話があったで」


「えっ!?朝日奈さんから?何の用やろう?」


文化委員として、何度か会話を交わしたことがあるものの、秀明には、隣のクラスの朝日奈愛里沙から連絡を受ける覚えはなかった。


(朝日奈さんからの電話が来た時に、また不在だったら申し訳ないし───。明日は家に居ておくか)


と、クリスチャン・スレイター主演&ジョン・ウー監督の新作映画『ブロークン・アロー』を観に行く予定を変更し、翌日は、午前中から《自宅待機》をすることに決めた。



その日の夕食の時間、秀明は、両親に友人の親類から、ビデオ店の求人に関する勧誘を受けたことを話した。

秀明の話しに耳を傾けていた父は、


「えらい、唐突な話しやな。そんなにお店は人手不足なんか?高校生に頼むような仕事なら、すぐにヒトも見つかりそうやけど……」


当然の疑問を口にした。さらに、


「秀明、その親類のヒトの仕事は、お前じゃないとダメな理由は、何かあるんか?」


と、息子に問い掛ける。


「レンタル・ビデオ店やから、映画の知識がある人間が必要なのかなって思うし───。そういうところで頼まれたと思うんやけど……」


自身でも、なぜ吉野家の人々が熱心に自分を誘って来る理由がわからない秀明は、自信なさげに父の問いに答える。


「お前が、どれくらい映画について詳しいか知らんけど、そんなん大学生にナンボでもおるやろ?別にわざわざ、お前がするべき仕事である様にも思われへんけどな……」


父が、そう言うと、母親も


「そうそう!それより、アンタ勉強の方は、大丈夫なん?」


と、追い討ちを掛ける。


(そ、それを言われると……)


有間秀明の高校一年時の成績は、単位制クラス一二◯名のうちで、下から数えた方が圧倒的に早いという有り様であった。

スムーズに、アルバイトの許可を得られるとは考えていなかったが、予想以上に難航する流れに怯みながらも、秀明は《ビデオ・アーカイブス》から帰る間際に、亜莉寿の父・博明が言ってくれたことを思い出した。


「あの───。『もし、ご両親が不安や疑問に思われることがあったら、連絡してほしい』って友達のお父さんに言われてるんやけど……」


そう、両親に告げると、父の秀幸は


「時間は、八時前か───。あまり遅くならんうちに連絡させてもらおうか?秀明、連絡先は?」


父の問いに、秀明は電話機の側に置いてあった一年B組の連絡網を差し出して、


「ここ、吉野さんのお宅の番号」


と、吉野家の電話番号を指差す。

『吉野亜莉寿』と書かれた名前に、一瞬、怪訝な表情を見せた秀幸だが、すぐに固定電話のダイヤルをプッシュする。


Trrrr・・・

Trrrr・・・

Trrrr・・・


三コール目で、「はい、吉野です」と、受話器の向こうから、秀明にも亜莉寿の父・博明の声が聞こえた。

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