第1章~チェリー~⑦
「いや、さすがに、そこまでは言いませんケド……」
苦笑いしながら答える愛理沙だが、隣の男子そっちのけで、盛り上がる女子二名は、すっかり意気投合した様子である。愛理沙は続けて、
「でも、マイマイから聞いた話しでは、吉野さんは、そんなにイヤがってた訳でもないんですよね?」
「そう!!それが、最大の謎なんよ~。わたしは、この時点で有間クンがキッパリお断りされると思ってたのに~」
当事者を目の前にしても、無慈悲な追撃の手を緩めない上級生に対して、秀明は遺憾の意を表明した。
「あの……。高梨センパイ、自分の記憶が確かなら、二週間くらい前に、オレが亜莉寿―――、いや、吉野さんに告白する様に、背中を押しませんでした?まさか、オレが振られること前提で……」
下級生の問いに、放送部の絶対君主は、容赦なく即答した。
「そうやね~。当然、有間クンが玉砕すると思ってたから~。でも、いつまでも吉野さんへの《想い》を引きずるよりは、キッパリ振られる方がイイでしょ~?」
「「ヒ、ヒドイ……………………」」
これには、秀明だけでなく同性である昭聞も、思わず声をあげざるを得なかった。
先ほどのサプライズ以上に、意気消沈する男子二名には構わず、翼は愛理沙に質問を投げかける。
「朝日奈さんは、どう思う~?吉野さんは、ナニを考えてるんやろ~」
彼女の問いに、愛理沙は、
「う~ん……。私の見る限り、吉野さんって、恋愛慣れしてなさそうなんですけど……。でも、彼氏として付き合うまでは考えられないけど、とりあえず、男友達としては悪くない相手を《キープ》しておきたいとか?」
一方、愛理沙を話しのわかる下級生と判断した相手の見解に、翼も、
「あとは、『せっかく、自分に告白してきたんやし、向こうの学校でイイ相手が見つかるまでは、答えを保留して《キープ》しておこう』とか?」
と、意地の悪い笑みを浮かべて、同調しつつ言葉を続け、「まぁ、どっちにしても……」
「「吉野さんって、性格悪そ~~~~」」
最後は、二人で声を揃えるように、意見を述べ合った。
かたわらでその言葉を聞いていた当事者の友人のみならず、第三者であるハズの自分まで精神的ダメージを被るようなガールズ・トークに、坂野昭聞は思わず口をはさむ。
「まあまあ、二人とも!秀明のことはともかくとして、これ以上、ここに居てない吉野さんのことを、憶測でアレコレ言うのは止めませんか?」
苦笑しながら、女子二名の暴走を抑止しようと努める後輩に、
「それも、そうやね~」
と、翼は同意し、話題をかえて、本題に入ることにした。
「朝日奈さん、話しが変な方向に行ってしまって、ゴメンね~。私としては、朝日奈さんが『シネマハウス~』に興味を持って、参加したい、って言ってくれたコトは、大歓迎よ~。放送部としては、四月から音楽関係の番組も始めるから、そっちの方に出演してくれても嬉しいんやケド~」
そう言って、翼が、新規加入を申し込んできた下級生に話しかけると、愛理沙は、上級生の言葉に丁寧に対応しつつ、
「あ~、音楽にも興味はあるんですけど、自分としては、有間たちと話す方が楽しそうかな、って思って……。それに、ここに来る前には、土下座までして『出演してほしい』って頼まれたんで……。な、有間?」
隣の秀明に意味深長な視線を送って、答える。




