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その道の先に  作者: たけのこ派
第一部/接触編
4/126

1−3/一線を越えて

前回のあらすじ

パンドラの箱、ご開帳。

 ()は勝利を確信していた。慢心でも油断でもなく、客観的な事実を元に判断しただけだ。

 それは、文字通りの「詰み」。この現状、万にひとつとして、目の前の獲物が逃げおおせる方法は存在しない。

 何故この男を執拗(しつよう)に狙うのか、それは彼自身ですら分かっていない。ただ、獣のような衝動の奥底で、埋め込まれた思考の残滓がなおも訴えるのだ。

 この男を生かしておくな。必ず殺せ。今やその命令だけが、彼を突き動かす原動力だった。

 ゆっくりと確実に、獲物の首を絞めていく。羽化したての柔肌に獲物の爪が食い込むが、そんなものは抵抗のうちにも入らない。あと数秒もしないうちに、最後の力すら枯れ果てる。


 そのはずだった。いや、そうでなければならなかった。


 彼の頭に浮かんだのは懐疑の念。荒れ果てた中でそれでも消えない感覚の残り火が、僅かな違和感を提示する。


 ——そして。その違和感は、瞬く間に別の感情に塗り潰された。


 其処(ソコ)に居るのは、既に獲物では無かった。


  眼をゆっくりと開くのは、目前に迫る死を受け入れ、静かに動きを止めていた男——いや、男()()()()()のもの。

 恐怖も諦観も、その目には一切が存在しない。

 獲物を狩ることに(たの)しみを見出す、おぞましい「何か」が其処にいた。

 彼の全身を、かつてないほどの悪寒が走り抜ける。

 勘が、本能が、彼の中に存在する全てのものが。今すぐこの場所から逃げろと、あらん限りの警告を発している。


 だが。その警告は、余りにも遅すぎた。


 衝撃。次の瞬間、彼の手首は、掴んでいたはずの獲物ごと切り離されていた。


#  # #


「ぅぐ……がはっ、ゲホっ」


 泣き別れする異形の手首、そこから(ほとばし)る体液を浴びながら無様に地面を転がる。拘束から解放された喉が、新鮮な空気を容量以上に取り込んで悲鳴を上げた。

 手首の持ち主が浮かべるのは、これまでにない苦悶の表情だ。一瞬で形勢が逆転したことにある種の快感を覚えながら、未だ定まらない視線を自分の掌に移動させる。

 にしても、随分と融通の効かない能力だ。主人公の覚醒シーンといえば、普通は適切なタイミングで適切な攻撃が出てくるものだと思うのだが……どうやら初心者に厳しい設計なのか、そのへんの調節は一切やってくれないらしい。腕ごと持ってかれそうになったぞ、どうしてくれる。

 だいたい、全体的に説明不足が過ぎるのだ。説明責任という言葉を知らんのか。

 思考を占拠していたはずの悪趣味なスライムも、(まなこ)を開いた瞬間に影も形もなく消え去っている。本当に何も知識がない状況で戦えというのだから、全くもって無責任という他ない。まだソシャゲの方がチュートリアル充実してるぞ、もっと気張れ。


「……これじゃ死なないか、はは」


 ふらふらと立ち上がり、手傷を負った異形から距離を取る。

 未だ痺れが残る掌で、拾い上げた「武器」をしっかりと握りしめる。即席で現地調達したそれは、魚見が取り落とした無骨な剣だ。

 手近に転がっていた魚見の得物(コレ)は、その無骨な見た目とは裏腹に随分と性能がいいらしい。一振りで異形の手首を切り落としたとなれば、拝借させてもらうのは当然の判断だろう。

 武器など触ったこともないが、何もないよりはよっぽどマシなはずだ。自衛の道具があるというだけでも、心理的には大きな余裕ができる。


「繧?a縺ヲ縲√◆縺吶¢縺ヲ」


 怒り狂った様子で叫ぶ異形の声は、ノイズがかかったように判然としない。そもそも、この異形に言葉と呼べるものがあるのかすらも怪しいところだ。

 口すらない、単一の瞳だけの顔を持った「何か」。その()()が声を発しているという事実が、存在の不可解さに一層の拍車をかける。


「縺ェ繧薙〒縲?縺ゥ縺?@縺ヲ縲?縺?◆縺」


「はいはい、分かってるっての」


 切断面からは赤黒い体液がドロドロと零れ落ちているが、肝心の異形に逃げるつもりは毛頭ないらしい。

 一時的に萎んだように見えた闘争心も、少し時間が経てばこの通りだ。怒りに震えながら襲いくる巨体は、手傷を負ったことでむしろ凶暴になっている節さえ見受けられる。

 ……さて。観察はこんなものでいいだろう。次は実験だ。

 借り物の武器をくるりと回し、掌を迫る異形へと向ける。


 次の瞬間。極限にまで束ねられた水流が、掌から凄まじい勢いで放たれた。


 消防車も顔負けの水量が、こちらまで振り回されそうになるほどの圧力を持って放出される。原理も仕組みも全くと言っていいほど理解できないが、その威力は折り紙つきだ。

 地面に鋭く爪痕(つめあと)を残すこれを不意打ちで顔面に浴びせかけられたのだから、異形からすればたまったものではないだろう。奴が思わず手を離してしまったのも納得というものだ。その代償が腕一本なのは、我ながら御愁傷様という他にないのだが。


「逞帙>縲∫李縺」


 だが。水流は目標に(かす)りもせず、ただ地面だけを一直線に駆け抜けていく。

 獣性からくる直感か、それとも経験からの学習か。攻撃を敏感に察知して回避した異形に、傷らしい傷は全くと言っていいほどつけられていない。


「おっと」


 間近に迫る異形の爪撃、それを間一髪のところで躱す。頭上を通過する死の音を感じながら、大きく横に跳んで距離をとる。


 ……ふむ。なんとなくだが、この能力の扱い方がわかってきた。


 この水鉄砲、確かに強力な武器ではある。が、その威力の代償として、広範囲への攻撃はまず不可能だ。

 射程はある程度まで伸ばせるようではあるが、一直線の軌道はわかりやすいことこの上ない。既に一度攻撃を当てている現状、学習して警戒している相手に再度当てるのは至難の技だ。

 よって、結論。よほど接近しない限り、これで勝負を決めるのは不可能と言っていい。

 一撃で勝負を決められる位置にまで、如何(いか)にして己を持っていくか。回避不能な位置から一発をぶち当てる、それこそがこの戦いの肝になる。


「……っと、危な」


 どうやら俺には、ゆっくり考える暇も与えてもらえないらしい。

 右へ、左へ。鋭利な爪をくぐり抜けながら、追い詰められないよう交差点内を跳び回る。

 異形の攻撃、それそのものは原始的とさえ呼べるものだ。しかし、こちらの牽制を瞬時に見切る異常な直感と、攻勢に転じようとした隙を的確に潰しにくる動きのせいで、そう簡単に攻勢には移らせてもらえない。これがゲームのNPCであるならば、プレイヤーはごく一部の変態を除いて既に匙を投げているだろう。

 ゲームといえば、俺自身の体もさながらアバターだ。先程から随分と体が軽い上、思っているよりもよほど機敏に体が動く。

 道端の瓦礫(ガレキ)もなんのその、転がっている車にも一息で飛び乗れそうなほどに身体能力が向上している。息切れをする気配もないあたり、これが火事場の馬鹿力、というものなのだろうか。


「縺上k縺励>縲√>繧?□」


「……へえ。便利な体だな」


 猛攻の合間を縫い、異形の表皮につけた浅い傷。しかしその傷は巻き戻すかのごとく、瞬く間に塞がってしまう。

 そもそも攻撃が当たらない上に、ご丁寧に自動回復まで備え付けとは。拍手でも贈りたくなるほどの嫌がらせ特化型と言っていい。

 さて、ここからどう攻めるべきか。異形の機能に内心で悪態をつきつつも、次の一手のために頭を巡らせる。

 このまま鬼ごっこを続けていても、状況が好転するとは言い難い。生半(なまなか)な傷では即座に再生するだけなのだから、削り殺すという戦法は不可能だ。腕の一本でも使い潰せばまた別かもしれないが、今はまだ頭の片隅に留めておくべきだろう。


「繧?a縺ヲ縲√>繧?□縲√>繧?□」


「……お?」


 と、その時。

 思考を遮るかのように、大きく咆哮(ほうこう)した異形。それは警戒する俺に倣うかのように、こちらへの攻撃を突如中断して大きく飛び退る。

 終わりのない鬼ごっこから一転、静かな膠着(こうちゃく)状態が場を支配する。

 これから何が起こるか分からず、故に身動きを取ることなどできるはずもない。動かない異形は不気味ではあるが、そこに不用心に近づくのはもっとも避けるべきことだ。

 まさか、退却か。たった一瞬、そんな思考がふと頭を過り——


 そして。それを嘲笑うかのように、次の展開が静寂を突き破る。


「……なるほど。()()()()()もアリか」


 確かに切り落としたはずの異形の手首。血とも体液ともつかない、赤黒い何かを垂れ流していたそこが、唐突に——


 早戻しのように、()()()()


 無論、ある程度は予想していたことでもあった。

 この異形の尋常ならざる再生力は、既に先程見た通りだ。それに再生する化け物など、フィクションの世界ではいくらでもいる。

 だが。傷口から生えてきたそれは、単なる新たな手ではなく。

 それは、見るからに切れ味が悪そうな——肉で形成された、大鋸とでも呼ぶべき代物だった。


「縺上k縺励>縲√♀縺ュ縺後>」


 手首の先に作り出された肉の刃を掲げ、異形が再びこちらに迫る。

 痛みも傷も、その動きからは微塵も感じることがない。俺以外の何物をも見ていない振る舞いは、まさしく狂戦士と呼ぶにふさわしいものだ。

 地面を踏み砕き、高速でこちらへと迫り来る異形。対策など立てさせないと言わんばかりの勢いに、全身の血が沸き立つ感覚が加速していく。

 まず間違いなく、異形はこの一撃で勝負を終わらせようとしている。飛び込んでくるその速度も鋭さも、今までとは比べ物にならないことは一目瞭然だ。

 強化された右腕のリーチを測り損ねれば、文字通りの一撃でゲームオーバーだろう。しかしそちらに気を取られれば、左腕への注意が疎かになる。掴まれた挙句、大鋸で身体を捻じ切られるなど目も当てられない。

 周囲の空間に目を配れば、軽自動車が突き刺さったコンビニが背後に迫っている。左右にはまだ多少の空間があるが、軌道を修正されれば十分奴の射程範囲内だ。異形が俺よりも大きい以上、上に跳ぶことも得策ではない。

 使える時間は1秒未満。後方は論外。左右もアウト、上方は言わずもがな。


 ならば。残された道はたったひとつだけ。


 迷う必要性など皆無。それが唯一の正答だというのなら、躊躇する意味はどこにもない。

 迫る異形に対し、俺が選択した方向は「前」。わずかな隙間を縫うようにして、ギリギリまで引き付けた巨体を滑り込んで躱す。

 一瞬。ほんの一瞬だけ、その体が完全に停止する。真上に見上げる異形の挙動に、確かに困惑の色が混ざり込む。

 ——それは。捕らえたと思っていた獲物が目の前で消えたこと、その事実を処理し切れなかったがゆえのものか。

 

 が。ことこの場において、その隙はあまりにも致命的だ。


 異形の背後に回ったその瞬間、即座に体勢を起こして大きく方向転換。勢いをそのままに、手近な自動車の屋根へと一気に駆け上がる。強化された身体能力をもってすれば、ここまでの動作は文字通り一息だ。

 綱渡りの勝負に勝ち、得られた報酬は一瞬の隙。たった一回の攻撃チャンス、それをどう使うかはもう決まりきっている。


 振り向いた異形の単眼は、今度こそひとつの感情に支配されていた。


 混じり気のない、ただただ純粋な恐怖。その視線が、至近距離で俺へと突き刺さる。


「……は」


 そう、恐怖だ。

 つい今しがたまで、俺はこの異形に恐怖していたはずだ。己の無力さに、事態の理不尽さに打ちひしがれ、最後には恐怖すら通り越して絶望していたはずだ。


 ——だというのに。


「は、ははは」


 ()()()

 死がすぐ隣に居るこの状況が、一歩間違えば終わりの命懸けの攻防が——今はどうしようもなく楽しくて、心が躍って仕方がない。

 恐怖に打ち震えていた自分が、まるで他人のように遠い彼方に居るのを感じる。ここに居る俺は紛れもない俺であるはずなのに、何かが限りなく異なっている。


「縺斐a繧薙↑縺輔>縲√f繧九@縺ヲ」


 異形の背へと飛び移り、突き立てた魚見の剣。それは過たず、目的の部位を真っ直ぐに貫いていた。


 すなわち。振り向いた異形、その喉の中心部を。


 苦悶(くもん)に喘ぐ異形が、張り付く俺を振り落とそうと必死で身を捩る。体の奥底から絞り出したであろう断末魔は、しかしその大半が声となる前に烏有(うゆう)に帰していく。

 


 ——だが。()()()()()()()()()()()()



 この異形の再生力が凄まじいことは、既に嫌という程思い知らされている。喉に穴を開けたこの傷でさえ、次の瞬間には治癒していても不思議ではない。

 だから、加減はしない。


「縺雁燕縺ョ縲√○縺?〒窶披?費シ」


 渾身の力で異形の首から剣を引き抜き、代わりに傷口に右手を突き入れる。気持ちの悪い感触とともに、大量のどす黒い液体が俺の全身をくまなく濡らす。

 相手が再生を試みるのであれば、それを超えたダメージを与えてやればいい。迅速に、かつ念入りに、急所を完全に破壊するだけだ。

 突き入れた右手の指先から、束ねられた水流が迸る。文字通りゼロ距離から放たれた攻撃は、やせ細った木を裁断するように、ぶちぶちと異形の首を切り離していく。


「は——ははは、はは」


 頭の芯を痺れさせるような、麻酔にも似た不可思議な感覚。半ば以上無意識なまま、口から言葉の破片が溢れ出す。

 意識の深層から滲み出したそれに、確たる意味はないはずだ。だというのに、熱に浮かされた思考は、その感情を明確な形に変換しようとする。


 だが。その思考が、最後まで行き着くことはなく。

 ()()を認識する前に、「作業」は終わりを告げていた。


 そこにあるのは、体液を撒き散らしながら倒れ()す異形。より正確に言うなれば、たった今まで異形だったものだ。

 この戦いの決着を、この上なく簡潔に表すかの如く。首と胴体が別たれた異形の亡骸(なきがら)は、あれだけ暴れていたことが嘘のように事切れていた。


「……ああ」


 「終わった」。

 

 しばらくの間をおいて追いついた思考が、ようやくその事実を認識する。

 急激に力が抜けていく感覚に耐えきれず、崩れ落ちそうになる身体をなんとか抑え込む。大の字になることはなんとか踏みとどまったものの、それでもへたり込んでしまうのは避けようもない。

 錆びついた首を動かし、辺りを改めてぐるりと見回す。周囲に意識を向ける余裕ができて初めて分かるのは、その()()がどれだけ酷い有様かということだ。


 そこにあったのは、台風が直撃したかのような惨状だった。


 避難したのか、それとも巻き込まれたのか。あれだけいたはずの人影は、しかし完璧なまでに消え去っている。炎だけが依然として燃え続けているあたり、タチの悪い芸術作品でも見ている気分だ。

 ……や、正直台風なんか比べ物にならんよなあ、これ。車は潰れてるし、なんか火の手は広がってるし。認識すまいとしていたが、よくよく考えれば死人も出ているはずだ。

 そもそも、だ。俺が今置かれている状況でさえ、端から見れば異様極まりないものでしかない。

 何をするでもなく勝手に壊れる周囲の建物やら車やらと、それを避けてぴょこぴょこ跳び回る男子高校生の図。戦っている間は手一杯だったものの、よく考えれば恐ろしいこと極まりない光景だ。説明しようにも俺ではどうしようもないのだから、つくづく俺にしか見えない異形の存在が憎い。


「……いや」


 違う。俺にしか、ではない。


 もう一人。ごくごく身近に、事態を正確に認識している人間がいたことを、今になってようやく思い出す。


 こんがらがった思考の中で、ようやく行き当たった信頼に値する事実。時間にすればわずか数分前の出来事でも、この状況下では思い出しただけで僥倖(ぎょうこう)というものだ。

 考え事の傍、携帯を取り出そうとポケットをまさぐる。ついでに救急通報でもしようかと思ったのだが、生憎と家に忘れてきたらしい。

 今日に限って、と思わなくもないが、おおかた朝ドタバタとしていたせいだろう。連絡手段を家に置いてきてどうするの、と怒る姉の姿が手に取るようにわかる。

 ……しかし、あれだな。あの姉に正論言われるの、想像するだけでもめちゃくちゃ屈辱的だな……今回は紛れもなく俺の落ち度なので、平謝りする以外に選択肢はないのだが。

 かくなる上は仕方がない。現状で頼れる唯一の伝手(つて)——明らかに何かを知っているはずの魚見に、全てをまとめて問い質すしかないだろう。

 重傷を負っている可能性もあるが、さすがに生きてはいるはずだ。叩き起こすにしろ助け出すにしろ、まずはどこぞに吹っ飛ばされた奴を探し出さなければ話にならない。


「……っ、痛」


 アドレナリンが切れたのか、唐突に肉体が凄まじい痛みと倦怠(けんたい)感を訴え始める。あと一歩のタイミングでサボり始めるあたり、どうにも身体というものは持ち主に似るらしい。

 絶望的なまでに動きが鈍いが、どうにかしていうことを聞かせなければ動きようがない。嫌がる体に鞭打って、重たい足を逆方向へと向ける。

 

 そして。


 そんな俺を覆うように、背後で影が立ち上がった。


「縺雁燕窶披?斐♀蜑阪?窶披?」


 あの勢いはどこにもなく、それどころか頭さえもなく。

 それでも、執念だけを糧にして動き出す。

 それは、もはや異形ですらない何か。完全に予想外の事態に、今度こそ思考が停止する。


 ——あるいはその胸に、どこからか飛来した短剣が突き刺さっていなければ。異形は今度こそ、その執念を果たしていたのかもしれない。


「初陣にしちゃ上出来だけど、詰めが甘いね。70点」


 一瞬の硬直。

 異形の動きも、それどころか周囲の世界さえも。時が止まったかのように、すべてのものが動きを止め——


 次の瞬間。異形だったそれは、塵のように指先から崩れて消えていく。


「……生きてるんなら助けろよ、お前」


「いやいや、無茶言わないでよ。僕だって割とギリギリだよ? まあ、それはそれとして楽はできたからいいんだけど」


「死ね」


 ありふれた罵倒。今ひとつ緊張感に欠けたそれを、眼前に立つ魚見に投げかけて。

 それを最後に、俺の意識はぷつりと切れた。

仮初めの安寧が終わり、物語は動き始める。

次回、みんなバカになります。シリアスだと思ったらこれだよ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 今はだいぶ衰退したゼロ年代の異能力ラノベ、その血脈がまだ生き残っていたのか、と懐かしい気持ちになりました [気になる点] 作者自らテンプレートと言ってしまうような展開 [一言] 非常に書き…
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