1−28/相対するものたち(表)
5月23日、第三幕。ボス戦開幕です。
かつん、かつんと。しじまを突き破るようにして、己自身の足音が足音が響く。
周囲に人っ子一人いない、不気味なほどの静寂が支配する建物の中。息をするのも憚られるような空間でありながら、しかし電灯も空調もしっかりと機能しているのが心臓に悪い。
現在時刻は9時12分。約束の時間まで、残り3分ほどといったところだろうか。出発時間を聞いたときは間に合うのか疑ったものだが、蓋を開けてみればこの通りだ。
今から遡ること30分あまり。鬼島さん——魚見の紹介によれば、軍の実働部隊における隊長格となる人物らしい——とその部隊に引き連れられた俺たちは、軍本部から暫く歩いたところにある建物に案内された。
面積にしてコンビニふたつ分程度の場所は、見かけによらず第二本部の中でも指折りの重要な建物のようだ。なんでも外結界と内結界を管理する管制塔であり、これなくして星皇軍は成り立たない……らしい。
やたらと曖昧な感想なのは、専門用語が多すぎてほとんど理解できなかったからだ。色々と説明されたはずなのだが、全体的に駆け足気味だったこともあって全然頭に入っていない。まあぶっちゃけ雑な説明だったし、仕方ないといえば仕方ないのだが。
そして。管制塔だか派出所だか、とにかくその建物を抜けた先。
数百メートルほど先の地点に、それは静かに佇んでいた。
すなわち。地面から立ち上るようにして存在している、半径10メートルほどの円が。
色も形も、もちろん匂いもない。だがその円の内部だけ、見える景色が蜃気楼のようにねじ曲がっている。
『そういえば、俊にはまだ説明してなかったね。これがこの結界の門……簡単に言えば、結界の出入り口みたいなものかな。これを通じて、僕たちは外の世界とアクセスを取ってるんだ。ゲートには入口と出口があるんだけど、これは出口型、それもマザーゲートと呼ばれる特別タイプ。こちらから場所を指定すれば、入り口側のゲートならどこにでもアクセスできる。ただ、このゲートはマザーゲートの中でもまたちょっと違うんだけど——』
説明がめんどくさいから、残りは滝川さんにでも聞いといて。どうにもキレのない魚見の表情が、突然脳裏に蘇る。
管制塔の件といいこれといい、土壇場で説明事項が多すぎるのではなかろうか。まあ概要は理解できたし、さしあったてはよしとするが……それはそれとして、間違っても博士に質問などしないようにしよう。目に見えている地雷を踏み抜きに行くほど、俺も頭が悪いわけではない。
魚見といえば、こいつがこの作戦に同行するのは正直想定外だった。集合したその時点から何食わぬ顔で紛れ込んでいるものだから、一瞬見分けがつかなかったほどである。星皇軍の正規隊員の中に混じっても違和感がないあたり、もはや学生の方が副業ではないのかと疑ってしまいそうだ。
ああ見えて割と正義感のある奴だし、坂本大佐に嘆願でもしたのだろうか。いずれにせよ、こんな危険な場所まで飛び込んでくるあたり、余程の物好きであることに間違いはない。
……話を戻そう。件の門をくぐった俺たちが一瞬のうちに転移したのは、目的地近くの建物の一部屋だった。
寂れた事務所のような外観ではあったものの、しかしてその実態は星皇軍の支部だというのだから驚きだ。所謂「外の世界」での役目——主に新規の星刻者の発見やら保護やら——を全うするために、日本各地にこうした支部が点在しているらしい。
曰く、その多くはこうした「入り口側のゲート」を中心として建てられているのだとか。外の世界とどう繋がっていると思ったが、こうしてアンテナが立っているのならばそれも納得だ。時としてマンションの一室も支部になったりしている、という話を聞けば、その秘密結社感に興奮してしまうのも仕方がないというものである。
その支部から借り受けた車を使い、目的地までかっ飛ばすことわずか数分。目的地にて全員が所定の位置につき、連絡を終えたところで一斉に突入した。
以上が、俺が覚えている限りでの、数分前までの出来事だ。
ここまでの記憶には、不明な点は一切ない。ゲートがどうの、星皇軍の支部がどうの、という話こそあったものの、作戦自体は順調そのものだった。
……いや、ある意味ではこの状況も、作戦通りと呼べるのかもしれない。
この手の妨害は既に予想済みだ。こうなった場合の対処法も、作戦開始前に何度も説明されたのだから。
突入後に俺が立っていた場所。それは、1秒前までとはまったく違う、建物の内部と思しき場所だった。
幻術だか結界だか知らないが、俺たちは初めから監視されていたのだろう。どうやら見事に分断されたようで、俺の周りには誰一人としていなかった。
窓から確認できる光景から推測するに、突入した建物の内部であることに間違いはない。転移トラップのようなものを踏んだのか、そもそもはじめから催眠の類にかかっていたのかは定かではないが……とにかく、俺だけが別の場所に送られている、という認識に間違いはないはずだ。
通信で把握できる限りでは、俺以外の人員は概ね固まった位置にいるらしい。何らかの妨害があるのか通信状態は芳しくないが、どうやら鬼島さんの部隊は交戦状態にさしかかり、俺と魚見の二人は離れた場所にいる、というのが現状のようだ。
なぜ俺だけでなく魚見も分断されたのかが気になるところだが、まあ奴のことだしなんとかするだろう。荒事には慣れているような口ぶりだったし、それ以上に奴の身の安全まで心配している余裕は俺にはない。死んだふりしてやり過ごしました、とか言われても納得できそうだから困る。
「……よし」
頬をパンパンと叩き、思索に耽っていた思考を引き戻す。
相も変わらず足音を響かせながら、事前に決められた合流地点へと急ぐ。隠密行動もびっくりの姿勢だが、そもそも突入の時点で向こうに嵌められているのだからどうにでもなれだ。どうせ俺が今こうしていることすら、どこかで見られているに違いない。
世界的大企業というだけあって、無人のオフィスは形容しがたい威容を放っている。大きさといい広さといい、充ち満ちる空気はもはや立派なダンジョンのそれだ。いくら非常時とはいえ、まだ開放すらされていないはずの建物に入り込んでいることを思うと、何か特権めいたものを感じて胸が熱くなる。
慎重に慎重を重ねて階段を下り、曲がり角の先から首だけを出して確認する。立派極まりないロビーが広がっていることを鑑みるに、どうやらこの社屋のエントランスに行き着いたらしい。
無人のロビーなど、テレビでも滅多にお目にかかれないだろう。宣材写真として使ってもなんら遜色ないような光景は、しかし夜に見るとどうにも落ち着かない。
さらに奇妙なのは、この場所だけ電灯がいくらか落とされている点だ。ガラス張りの窓から月光が顔を覗かせる光景は、不気味というよりも厳かといったほうが良いかもしれない。
「ん——」
物珍しい光景に止まりそうになる足を動かし、広大なロビーを横断する。
ここを通過すれば、集合場所までは目と鼻の先だ。こんな場所で問題を起こしていては、死力を尽くしてくれている彼らに申し訳が立たなくなる。
足を止めるな。合流しろ。自分がやるべきことを、確認するように言い聞かせる。
俺が今取るべき選択肢は、速やかに他の人員と合流することだ。それ以上でもそれ以下でもない。ましてや単独行動などもってのほかだ。
……だから。
この胸騒ぎに従うことは、きっと良くない事なのだろう。
足が止まる。何かに導かれたように、自分の視線が引き寄せられるのを自覚する。
間違いはない。目的地はここで合っていると、俺の中に眠る『俺』そのものが、何よりも声高に叫んでいる。
『お見事だ。期待通りだよ、ヒーロー」
響いたのは、乾いた拍手。そして、心からの賞賛を込めた言葉。
9時15分。秒針が約束の時間を指し示すと同時、視線の先の男が立ち上がった。
振り返った先で俺を映す、吸い込まれそうな碧眼。全てを見通す眼光が、満面の笑みと共に月明かりに照らされる。
「……何が期待通りだ。俺がここにいることも、初めから予測の上だろう?」
相対するのは、僅か数時間前に殺しあった男。
痕跡すら残さずに敵の本拠地に潜入し、想定外であったはずの俺の登場に歓喜し、あまつさえこんな場まで用意してのける男——そんな人間が、眼前で悠揚と佇んでいる。
彼我の距離、直線にして5メートルあまり。だが、丸腰でにこやかに両手を広げる男の威圧感が、その距離を一飛びに駆け抜けて肌に突き刺さる。
「まさか。確信に基づいた予測が半分、期待が半分、といったところかな。その期待も願望と言って差し支えない、ささやかで小さなものだった。……だが今、すべて確信に変わったよ。君は私の居場所を突き止め、そして時間通りにこの場所に立っている。私の目に狂いはなかった。まぎれもない、君こそが『ヒーロー』だ」
俺に惜しみない賛辞を送る男の瞳に、冗談の色は微塵も感じられない。
思い起こされるのは、二時間前の電話口での会話。何も有用な情報など掴めないまま、ただ向こうからの要求を押し付けられたかに見えたあの電話だ。
しかし。酔狂としか思えないあの会話の中にあって、男はしっかりとヒントを紛れ込ませていた。
「理想郷への第一歩を踏み出す」。一見すれば抽象的にすぎる言葉も、少し視点をズラせば全く別の意味が見えてくる。
いつかの新聞、その一面に乗っていた記事。大企業、アルカディア社の日本支部が新たに始動するといった話が、でかでかと取り沙汰されていたことを思い出す。
理想郷。Arkadia。考えるまでもない。実に簡単な、なんということのない言葉遊びだ。
だが。拙い推理が的中していた事実を確認するほどに、腑に落ちない感覚はより強くなる。
大前提として、あの電話は俺と同じ場所にいた人間全員に聞かれていた。のみならず、録音され、繰り返し聞かれる可能性も当然あるだろう。この男がその可能性を失念していたとは思えない上、そのようなつまらないミスを犯すとも考えにくい。
この場所に関する情報にしても、新聞に取り上げられていた時点で不特定多数の人間に行き渡っている。わけても大企業の本社ビルとなれば、思い当たる人間も10や20ではきかないはずだ。目立つ場所を虱潰しに探していくだけでも、ここがヒットする可能性は大いにある。
そして、二つの情報さえ手元に揃ってしまえば、あとは気付けるか否かという問題だけだ。決して頭の回転が速いわけではない俺が理解できた以上、このクイズには勘と運が大きく絡んでくる。
言ってしまえば、あまりにも「甘い」。特定の人間へのメッセージとしては下策も下策、不確定要素が多すぎると言わざるを得ないのだ。
「なあ、アンタの言う『ヒーロー』ってのは何なんだ。こんなチャチな謎解きができる奴なら、俺よりもずっと素晴らしい人間が腐るほどいる」
なればこそ、これは当然の疑問。そして、俺がここに来た意味の半分を占めるものだ。
俺に見えたその時から、男が口にし続ける「ヒーロー」と言う単語。皮肉などではない、彼なりの賞賛を表しているということくらいは、いくら俺でも想像がつく。
だが、それだけだ。その言葉にどんな意味があるのかも、いかほどのものが込められているのかも——肝心なことは何一つとして語られず、答えは男の胸中にしか存在しない。
「どうやら、君は勘違いをしているらしいな。アレはあくまで、単なる私の遊び心だよ。それ以上でもそれ以下でもない。重要なのはそこではない」
俺の疑問を聞き届けた男は、つかつかとエントランスを闊歩する。
照明の落とされた空間から、月光が降り注ぐ窓際へ。背後を晒しているにもかかわらず、その自信はかけらも揺らぐことはない。
「君は分かっているはずだ。これから起こるであろう全てを理解したうえで、君は君自身の意志でここに来た。誰から強制されるでもなく、ただ自身の求めるままに。それこそが、君が『ヒーロー』足り得る何よりの証だ」
碧眼が俺を射抜く。
かつてないほどに真剣な男の顔を、月明かりが煌々と照らし出す。
「史実にしろ物語にしろ、英雄は必ず現れる。英雄は『悪役』の計画を狂わせ、打ち砕き、全く予想外の結果をもたらす。どれだけ対策を重ねようとも無意味だ。英雄とは悪役を打ち破る機構であり、概念であり、システムそのものなのだから」
「……その話通りなら、アンタにとって『ヒーロー』は邪魔な存在じゃないのか」
滔々と流れるように、男が自らの言葉を謳い上げる。無人のロビーに響くその言葉は、しかし彼の言動とは相反するものにしか映らない。
俺が予想外の存在であると宣うのも、自らを「悪役」と呼ぶのも。他でもない、彼自身の口から出た言葉だ。
まるで分からない。言葉通りに定義するなら、この男にとって「ヒーロー」とは憎むべき存在だ。「悪役」を脅かす誰かであり、また手の打ちようがない脅威であると、誰よりも彼自身が認識しているはずだ。
なのに。
なのに、どうして。
この男は、これほどまでに楽しげに俺に語りかける?
「その通りだとも。私の計画は完璧だ。いや、完璧だった、と言うべきかな? 侵入経路も、必要な時間も、必要な手間も、全ては理想と寸分違わず進んでいた」
笑う。
「だからこそ、私は君の登場に衝撃を受けたよ。君は誰でもなかった。私が『敵』として認識していた存在に、君は含まれていなかった」
謳う。
「認識の外から、私の計画を崩れさせる存在。どれだけ綿密に対策を立てようと、それをやすやすと無効化するほどのイレギュラー。一分の隙もない、純然たる『ヒーロー』そのものだ」
心の底から、楽しくて仕方がないというように。
当事者であるはずの俺をも置き去りにして、男が笑い声を響かせる。
「素晴らしい——そうは思わないか? 完璧だと思っていた、その自分を討ち滅ぼすに足る存在がある。どれほど計略を巡らせても、どれほど緻密に計画を立てても、ソレを軽々と超えてくる存在。嗚呼、これほど面白いものはない! ゲームとはこうでなくてはつまらない。ワンサイドゲームなどというものは、ゲームを楽しむことを放棄した邪道にすぎないんだよ」
ああ、と。
当然の事実を告げるがごとく、なんの気負いもなく告げられたそれ。その狂言のおかげで、俺にもようやく理解することができた。
目の前のこの男は、何よりも理解しがたい存在であるということに。
「……また随分と、自信があるんだな。その計画とかいうものに」
断言できる。今の狂言こそ、この男の核心、その一端からあふれ出したものだ。
偽らざる本心であり、まったくの心からの言葉。他の何をおいても優先される、この男を貫き通す信念の具現——そして、たったそれだけの言葉ですら、はっきりとわかるほどに常軌を逸している。
面白いから。たったそれだけで、この男は自身の目論見を打ち砕く存在を望んでいるのだ。完璧と称した計画、その中に生まれたバグにも等しい存在に、「ヒーロー」という定義まで与えて。
それは「計画」への自信の現れなのか、それとも自分自身の能力を信頼しているがゆえか。
「当然だろう? これは私が私の意志で、私の都合で始めた戦いだ。熱が入るのも当然というものさ。それに、万事が思い通りにいくゲームはつまらないものだ」
その顔に浮かび上がる微笑は、底知れないとしか言いようがない。まるで読めない表情が、途轍もない圧力を伴って俺を覆う。
月光を背に、芝居掛かった動きで両の手を広げる男。サーカスの支配人のようなその動作は、いっそ神々しいとまで言えるほどのオーラを放っていた。
「さて、『ヒーロー』。本題に入る前に、ひとつ済ませておかなければならないことがある。君にしても、舞台装置のように扱われるのは気持ちの良いものではないだろう? 人間には名前があり、名前には積み重ねた歴史というものがあるのだからね」
「……なんだそれ。人の名前を聞くのなら、まずは自分から名乗るのが礼儀なんじゃないのか」
彼なりのジョークなのか、それとも決闘前の名乗り合いのつもりなのか。随分と回りくどい質問に、この状況にも関わらず束の間拍子抜けしてしまう。
名前を聞き出すためだけにしては、またやたらと大げさな訊ね方をするものだ。仰々しい口ぶりの裏に何があるのかを思惟するものの、そこにある何かを見透かせるはずもない。
そもそもこの男ならば、俺の名前などとっくの昔に調べ上げていてもおかしくないはずだ。それでも敢えて尋ねるのは、それを必要なことだと思っているがゆえの行動なのか。
「ふむ、それもそうか。では……そうだな、『カイン』というのは?」
俺の言葉を受けた男が、いかにもたった今思いついたというような名前を口にする。
カイン。まず間違いなく偽名だろうが、また随分と大胆な偽名もあったものだ。咄嗟に思いつく単語がそれなあたり、この男もこの男でなかなか救いようがない。
「雨宮俊だ。呼び方はどうでもいい」
名前を騙ろうかという馬鹿げた考えを捨て、最初の殺人者と名乗った男を正面から見据える。
偽名など、この男の前では何の意味もない。そう思えるだけの振る舞いを、もう十分見せつけられているのだから。
「ふむ、いい名前だ。ではヒーロー、待ちに待った本題を始めようじゃないか。君は今度こそ、自分の意思でここに来た。であればこれは、君が望み、君が選んだ戦いだ。そうだろう?」
形こそ問いかけのていを取ったそれには、しかし選択の余地など何処にもありはしない。
穏やかな語り口は、むしろ嵐の前の静けさがごとく。これから起こることを暗示するかのように、カインの体から迸る圧力の密度が何倍にも増加する。
恐怖——それは人間が動物である限り逃れられない、本能に植え付けられた安全装置。今更のように湧き上がって来たそれが、自分が強大な存在と対峙していることを否応なく自覚させる。
『さあ、メインディッシュだ——忘れるなよ? 全ては、お前が望んだことだ』
だからこそ、俺は認めなければならない。目を逸らしていた事実と、今ここで向き合わなければならない。
恐怖は確かにある。恐れも、恐れも、俺が人間である限り、捨てることなどできはしない。
手が震え、脚がわななく。そこに宿る感情は、紛れもない恐怖そのものだ。
だが、飢えと渇きに喘ぐ何かが、それを踏みにじって暴れ狂う。
星屑と遭遇した時、この男と戦った時。そのどちらにおいても、同じ何かが燃え盛っていた。
カインと刃を交えた時、あるいはその前からずっと。消えずに消えずに燻り続けるそれが、俺をここまで導いたのだから。
「……ああ、そうだな。始めよう」
冷静になれ。流されるな。
抑えきれない衝動を、理性の鎖で縛り上げる。俺の感情がどんなものであっても、それが理性を消し飛ばす理由にはならないはずだ。
人造神器、起動。音もなく現れ出る刃が、昂ぶる心を急速に鎮めていく。
言葉は必要ない。これから起こることなど、お互いに承知の上だ。
水面のように澄んだ刀身が、月光を受けてわずかに煌めく。すべてが静止した世界で、移ろいゆく影が小刻みに揺れている。
研ぎ澄まされ、深みに落ちていく集中の果て。不要だと判断された情報のすべてが、世界からカンナのごとき鋭さで削ぎ落とされ——
ただ、静かに。戦いの火蓋は切って落とされた。
カインさん、自分でそう名乗っちゃうあたり不治の病に冒されてる可能性がある。
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