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英雄ってのはろくなもんじゃない
世界を救うのはいつだって英雄の役目だ。
それが後天的であろうと先天的であろうと変わる事はない。
だが、それは残された者の未来の礎と同義では無い。
「こんな・・・終わりか」
少年が慟哭する。
彼の血と返り血とが混ざり合った汚れが雨で流されていく。
仲間だった者達はもはや誰も残ってはいない。そして、少年の意識も薄れてゆく。
余りにも多過ぎる犠牲の末に討ち斃した敵には厄介な特性があった。
その名は《侵食》。
かの敵には例え血だろうと触れてはならない。触れればそこから《侵食》が始まり、そいつの眷属へと成り果てる。
更に、どうやらその効力はそいつ自身が死んでからも有効らしかった。
全身を呪いが蝕む、もう身体の半分以上が自分じゃない。
奴は眷属を苗床に何度でも蘇る。だから、ここで終わらせよう。
せめてこの戦いを無駄にしないように。
最後の魔力で作り出した刃を首に当てる。
思考の隅に浮かび上がる思考はただ一つ。
「英雄にならなければ、俺は人並みの幸せを得れたかな」
最後に呟いて、少年の意識は途絶えた。