進め!病院探検隊 -始動編-
第5話改です、初期ではここが最終話だったのですがキャンペーン終了後の修正中、あれもこれもと詰め込んでいたら…足りなくなったので話数を増やし分割しました。
【馬久瑠医院1階 待合室】
「そういやさっちゃん、一つ気になったんだが…
最初の…地下の魔法陣の悪魔ってどうなったんだ?
埋められたって言ってたし死んだのか?」
「あー、生きてる生きてる、今は眠りについてるけど…
魔法陣が埋められちゃった時にね、
魔法陣に綻びが出来てね、束縛が緩んだかららっきー!って
その子は自由になったと喜んで表へ出て行こうとしたのそしたらね?」
走り回るようなジェスチャーをして説明をするさっちゃん…
敵でなければ味方にできないかなーとか考えていたんだが…
…まさかね…
「魔法陣がもう一つ出来てたせいでねー、
移動できる範囲が広がっただけで出れない事には変わらなかったのーざんねーん」
自分で魔法陣壊せばよかったんじゃとか思ったんだが…
魔法陣は帰るための出入り口であり、同じ魔法陣は呼び出した人間が作るか、
似たような魔法陣を探すしかないらしい…加えて魔法陣には制約みたいなものがあり、
召喚に応じたモノはそれに縛られるらしい。
「その子もバカだよねー!ちょっと雨宿り気分でホイホイされちゃんだから…」
さっちゃんは何故か遠い目をしていた…
「でね、地下の魔法陣とエグエグの魔法陣が二つともなくなってやっと解放されるんだけど、
でもー…ごにょごにょ…」
「でも?」
「たまたま迷い込んでくる人やテレビの人たちや動物たちから
チビチビとエネルギーを分けてもらってたんだけど……
エグエグはキャッチ&リリースしないから…エネルギーがもうないのー」
がっくりと肩を落とすさっちゃん…
「宗くんが…復活するのにエネルギーいっぱい使うってのに…ぶつぶつ…
ボクがどんなに苦労して…ぶちぶち…」
あのーさっちゃんさん?
「ん!あー!こっちの話!兎に角エネルギーが尽きちゃうと魔法陣も消えるけど…
呼び出されたままの子のエネルギーがすっからかんの状態で魔法陣が消えちゃうとね、
補給できないと消えちゃう…かなー、そうなる前に術者に魔法陣を使ってもらって帰るか…
魔法陣が消える前にどこかでエネルギーを補給しないとなの…
今はエネルギーを消費しないように冬眠レベルでぐっすりだけど…」
「あーなるなる…一つ目は埋まってる上、術者はいないし…
二つ目は…あいつが、”はいそうですかどうぞお帰りください”…とはしないよなぁ…」
「そうなの!その子がエグエグをばちこーんとして強制的にさせようとしても…
魔繰吏の強制力があって近づくのは危険かな…
あとおしりは衛生上良くないとボクは思う…どうしてもっていうな…いだ!いだだだ!」
さっちゃんの下ネタボケに”コークスクリュー梅干し”で応えながら聞くところによると…
魔法陣には魔を操る的な言霊縛りがあって術者がその気になれば
操られてしまう恐れがあるという事だ…
病院内にいる患者や町民その他犠牲者…+第1の悪魔が起きだして一斉に襲ってくるわけだ…
「あいたた…エグエグは黒魔術師じゃないから使いこなすって事はできないと思うの…
ただ病院を存続させるために魔法陣を使ってる…そんなところかな?
エグエグもエネルギーの枯渇には気づいてると思うんだけど…
まともな心は、ぽーいって捨てちゃってるから…止まるまで止まんないって感じ?」
「おいおい、そりゃ厄介だな…待てよ?
危険な橋渡らなくても…ここでエネルギー切れまで待てば、俺たち自然解放?」
「んー…タイミングにもよるけど…魔法陣が消えて
あの子にちょっとでも動けるエネルギーが残っていた場合…
にーちゃんとかー、とっても美味しそうに見えるだろうなって…思うの…
つま先から頭のてっぺんまでこう、ばりばりっと…」
さっちゃんが両手で何かを掴んでバリバリ食べるジェスチャーをする…
「ソレハワラエナイジョウダンデスネ…」
演技には見えない鬼気迫るジェスチャーに背筋が寒くなる…
「ボクがエグエグのエネルギーの無駄遣いをちょこちょこ減らしてるんだけど、
微々たるものだし…そう長くは持たないし…」
「減らす?どうやって?」
「それはねー」
さっちゃんのながーい説明によると…
奴は、ある人物に強い恨みを持っていて化け物になった後、
その人物を病院内に閉じ込めたらしい…
なんでも病院内ではもう死んでる患者に対して治療を続けなければならないらしい…
その際、医者らしくない考えや言動を行うと…抉れ顔的には医者らしいのかもだが。
患者に襲われるそうだ…食い殺されたり自決したとしても奴が治してしまうと…
病院の維持にもエネルギーが使われるが、その人物を生き返らせるエネルギーが
かなり消費がでかいという…それでさっちゃんがその人物を奴に見つからないように
隠したり連れまわしたという事らしい。
「ってことは、その人物って…まだ生きてるってことか?」
「…んー生きてるってゆーか…死んではいないとゆーか…
んー…半死半生?」
「ずいぶん歯切れが悪いな…その宗君って人は今どこに?」
「やだなー宗君は…え?…ナンデシッテルンデスカ…?」
さっちゃんが目をまん丸にして固まった…
さっき自分で呟いていた事を教えてやると納得したようだ…
「そ、宗君の居場所ね…知ってるよ…えーと、バカには見えな…くはなくて、
3階そう、3階に…いた…いるです…」
俺がボケ封じに”コークスクリュー梅干し”の構えをすると居場所を教えるが…
うぉい、何故に目をそらす?
「これ以上は…今は言えないかな…ごめーん…」
ばつが悪そうな顔で自分の指先同士をちょんちょんしているさっちゃんを見ると
これ以上問い詰めても可哀そうなので許してやった…その時…
…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
「じ、地震!?」
病院が激しく揺れた…すぐに収まったが何か嫌な予感がする…
「あちゃー…ばれちゃったかー」
「何か知ってるのか!雷…さっちゃん!?」
何処かの漢臭さムンムンの学生の様に突っ込む俺…さっちゃんの影響かな…
「あのねー、エグエグにボクたちがココにいるのが…ばれちゃったみたい…
病院内の患者さん達が一斉に起きだしてボクたちを探してるってとこ…かな?」
「今の振動って…ええええ!?
待合室は安全なんだよな…奴は来ないって…」
「エグエグは基本病室のある2階から院長室の4階を移動するんだけど…
患者さんは来ちゃうかなー」
…ガチャン!…バタン!…ガタン!…
ゾンビ映画でよくあるパターン…ゾンビラッシュの前兆の様に奥から物音がが響き…
何かが近づいてくる…
「やばい…何か武器は?」
俺は慌てて武器になるものを探す…病院の待合室にそんなものは…あった!
側のテーブルに金属バットが立てかけてあった…
誰が持ち込んだか知らんが…実にけしからんが、今はありがたい!
「さっちゃんは危ないからさがっ…て…うぇぇ?」
俺が獲物を手に振り向いた先には3体の人影に突貫していくさっちゃんの後ろ姿が…
「まてまてまて、…間に合うか!」
全力でさっちゃんを止めようと追いかけるが…
「どっかーん!!」
どごぉぉぉぉぉぉん!!!
轟音と共に巻き上がる埃…
まるで漫画の様に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる…何か…患者さん?
あー首が変な方向に向いて藻掻いてるから間違いなくゾンビ…だな。
「嘘やろ…さっちゃんは?」
「エグエグにばれちゃったから…ちょっとまずいかもー
多分、エネルギーなくなっちゃうまでハッスルされちゃうかも…」
漂う埃の中から埃まみれのさっちゃんが戻ってくる
「マジか…急がないと…さっちゃん、最短ルートは…」
視界が晴れてきて壁に貼られてる見取り図を見ながらさっちゃんに問いかけると…
「にーちゃん、こっちこっち!
こっちのほうが近いよ!」
さっちゃんが壁に開いた穴から手招きをする…当然見取り図には無いルートだ…
なにせさっちゃんがたった今ぶち抜いた穴だから…
「倉庫…か?」
さっちゃんの形に空いた穴より中を覗き込こむ…
も…モルタルの薄い壁でぶち抜けたようだ…うん、
ぶ厚い壁の断面から繊維っぽいものは見えず鉄の棒っぽいのが数本覗いてるが気のせいだ…
室内は広く、シーツや毛布などの予備や機材など多種多様なものがスチールの棚に
整然と収められている様だった…
「廊下はうじゃうじゃいそうだからここを突っ切って…」
勝手知ったるなんとやらとばかりさっちゃんは、薄暗い倉庫をまっすぐ進んでいく…
途中で漫画やエロい雑誌が山済みになった簡易ベッドがあり最近まで使われてた形跡があったので、
さっちゃんに聞いたところ、もじもじしながら…
「いやぁん、乙女の寝床をじろじろ見て、やーらしー!」
うふんあっはんポージングをしながらおませなこと言うちみっこを見て俺は思った…
ふざけた知識の根源はココかと…「若者にウケる!下ネタテクニック!」だと?
手に取った本のタイトルに呆れる俺に…
「それねーあんまり受けないんだよねー誘き…迷込んできた女の人とかにすると
みんな顔真っ赤にして怒るしーぷんぷん」
さっちゃんは手を組んでカンチョーのポーズで侍アクションをしている…
この子の将来が大人として大変心配になる…早く何とかしないと…
ガチャン!!バキバキ…!
カンチョーポーズで素振りをするさっちゃんの側の扉を破壊しながらゾンビが飛び掛かってきた!
「さっちゃんあぶな…」
俺が言うよりも早くさっちゃんはゾンビの背後に回り込んで…
「しゅーーーと!!」
ボン!…ぐちゃ!ビクンビクン!
あ、ありのまま起こったことを話すと…
ゾンビの背後に回ったさっちゃんは…あの構えのままゾンビのお尻に向かって
その恐るべき力を解き放った…そしてゾンビの下半身は吹き飛んだ…
何を言っているか分からないと思うが…むしろ俺が言いたい…
カンチョーで下半身が爆散したゾンビなど…
下ネタの真の恐ろしさの片鱗を垣間見た気がするぜ…
「ねー、受けないでしょー?」
「アア、ソウダネ、デモ…イキテルヒトニヤッチャダメダヨ?」
まだ動いてるゾンビに金属バットでとどめを刺しながら先を急ごうとしたが…
ずちゃ…ずる…ぐちゃ…
まずい!物音に引き寄せられたかさっちゃんの開けた穴と、
さっきの扉からゾンビが次々と入ってくる!
「でぇい!」
ガゴン!と俺はスチール棚を体当たりで近くの扉に押し込んだ…
これで暫くは入ってこれない…がさっちゃんの開けた穴は…
「わんすとらっく!つぅすとらっく!!すりーすたらっくー!!!」
ドガッシャァァンン!!ガゴォォン!!!グッシャァァ!!!ドゴーーーン!!!
えっと…ありのままいうのもバカらしいが…
さっちゃんがスチール棚を入ってきた穴に向かって軽々と連続投球してます…はい、
「うぃなー!葬らーん!ボクの野球は無敵なりー!」
ドヤ顔でVサインをするさっちゃん…一度野球について教えた方がいいのかもしれない…
何時か誰か死ぬ…きっと死ぬ…いや、もう死んでるかも…
兎に角、穴が塞がったことで追っ手は来ないだろう…てか来るな、
お前らでなくさっちゃんの行動で俺がショック死しそうだ…
「ここからなら近いはずだよー」
さっちゃんの案内で関係者専用の非常用階段の扉の前まで来たが…
ガチャ…ガチャガチャ…
「だめだ鍵がかかって…ならこのバットで…」
めぎぃ…めきょ!ぶぎん!
俺たちは非常階段への扉だったモノを開け…
いいんだ…さっちゃんが素手で鉄製の扉をもぎっただなんて…
どんな顔してコメントすればいい…お願い分かって…
「にーちゃんどしたの?トイレ?トイレなら2階にも…」
「いや、大丈夫だ先を急ごう…」
この先いったいどんな理不尽が待っているのか…
正直考えたくないと思う俺だった…
5話完結だったんですが、仕切り直してもうちょっと続きます…