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魔人ガゼットとの戦い

【魔人ガゼットとの戦い】




【馬久瑠医院3階】


「嘘……だろ?」


何で? 何で爺さんがさっちゃんに攻撃を仕掛けている?


「じーちゃん! なんでなのさ!」


「無駄だ、そいつはあのジジイじゃない。 俺が呼び出した魔人、ガゼットだ!」


「魔人? 呼び出し? 何を言っているんだ……」


「いいですぞぉ、この身体は他のゾンビどもとは違う、良くなじみます!

 ふん!」


ズグン!


「あう!」


爺さんが一瞬で間合いを詰め、さっちゃんの左腕が大きく抉られた?


「さっちゃん!」


「だいじょうぶ! およーふくは無事だから!」


「……って、そっちかーい!」

 

骨が露出するほどの大怪我だってのに、服に当たらなかった事が大事って……、

でも、その服をくれた爺さんが……。


「いい加減にしろよ爺さん! 目を覚ませよ!」


「ふははは! 無駄よ、無駄無駄無駄だ! 奴の意識は封印されている!

自力で浮かび上がる事など不可能だぁ!」


ぱぁぁぁん!


「な……」


ガゼットと呼ばれた爺さんが、カンチョー(野球)の構えを取った?


「心の臓を狙ったのだがな……やはり、体に染みついた攻撃法でなくては、

精度に欠けるようだな、ふふん」


「そうだった、そのガキは……。 おい、ガゼット! そのガキのとどめは、

そのカンチョーで、ケツの孔ごと体をバラバラに吹き飛ばしてしまえ!」


……なんかわかった、このおっさんが、さっちゃんにどんな目(・・・・)にあわされたか。


「ふむ、ゾンビの腕を尻に仕込んで……ククク、無様だな……」


「え?」


爺さんは目を閉じ、思い出し笑いをしている様だ……尻にゾンビの腕? あれ?

それって2階でのさっちゃんとのタイマン? じゃぁ、間違いなく爺さん?


「では、リターンマッチと行こうか? 生憎、ここには囮に使える(・・・・・)ような、

ゾンビの腕はないがね……油断した記憶を払拭する事にしよう……」


まずい、いつもの爺さんなら手加減をしてるんだろうが、中身は別人だ……、

爺さんの身体能力で、殺す気で2階の再現(カンチョー)をされたりしたら、

さっちゃんの小さなおしりは、間違いなく爆散する!


ダン!!


「!?」


爺さんが低い姿勢で踏み込み、さっちゃんを真下から襲う!


「なんのぉ!」


さっちゃんは、爺さんの指を動く方の右手で掴み、更に両の足裏で拳を挟んで、

直撃を避けたが……まずい!


「さっちゃん、それは罠だ!」


「へ?」


「おそぉぉぉい!!」


ブン!!


さっちゃんは、力任せに放り上げられ、宙を舞った……あの時と同じだ!

宙を舞うさっちゃんの真下に、既に爺さんが詰め、さっちゃんのおしりを狙う!


「砕け散るがいい!!!!」


ズドム!! パァァァァァァァァン!!!


「さっちゃん!」


爺さんのカンチョーがさっちゃんのおしりに突き刺ささり、爆散した?

小さな肉片や鮮血が、俺の顔に当たり一瞬視界が奪われて、顔を拭った後、

俺の視界に映ったのは……。


「そんな……さっちゃん!」


爺さんが、カンチョーを決めた姿勢のままで、その指先は何かの塊を貫いていた。

人の頭ほどの大きさしかないそれは、きっとさっちゃんの一部なのだろう……、

さっちゃんは爆散してしまったのだと、そう思った時だった……。


「じーちゃんを、かえせぇぇぇぇぇ!!!」


ゴギン!


「ぷぎゃぁ?」


ブツン! 


「へぶぅ?」


離れたとこから聞こえたさっちゃんの声? 

それに、何かがへし折れ、千切られたような音と共に、変な悲鳴が?


「さっちゃん!?」


「むを? 契約者よ!」


俺と爺さんの視線の先には、あのにやけ顔……がない?


「え?」


ドサ……


頭の無い男の体が、膝から崩れ、床に倒れたその先にさっちゃんはいた……。


「もが! もがが!」


「もが! じゃなくて、じーちゃんを元に戻せ!」


左腕が無く、下半身すっぽんぽんで、頭だけの男に跨ったさっちゃんが……。


ガシャ!


「小癪な! 自らの腕を千切って囮にしたのか!」


爺さんが投げ捨てたのは、さっちゃんのスパッツと骨だけになった腕……。

あの一瞬で、とんでも無い事をかましていたみたいだ。


「小娘! 契約者を離せ!」


お尻の下に敷かれた頭に、鼻フックや目潰しをしているさっちゃんに、

爺さんが怒声を上げ、駆け出すが……


「やだ、じーちゃんの体から離れるまで、やめてやんない!」


「ぐぬぬ……」


元々多くはなさそうな、髪迄むしり始めたさっちゃんに、足を止める爺さん。


「もがー!! もががががが! もがぁ!」


「うっさいなぁ、おしりの下でもがもがしたらくすぐったいじゃないか!」


メリメリメリ……


頭だけで藻掻く男に、アイアンクローをかますさっちゃん。

なんか、同情さえ感じる理不尽さだ……よっぽどご立腹のようだ。


「わかった……」


ズズズ……


爺さんの背中から黒い煙のようなモノが滲みだし、巨大な化け物へと変わる。


「悪魔……」


そうとしか言えない、2mを越える漆黒の巨躯に蝙蝠の様な翼、鞭のような尻尾、

山羊のような足、それにライオンの様な顔と左右に伸びた鋭い角……。

爺さんの中にいたとは信じられない、まさに悪魔と言った感じの何かが、

そこに現れた。


「じーちゃん!」


「爺さん……」


ガゼットとか言うヤツに、頭を鷲掴みにされた爺さんは、

膝を突いたまま動かない……まさか死ん……すでにゾンビだっけか?


「さぁ、約束だ、契約者を解放しろ」


「そっちこそ、じーちゃんから離れろ!」


「「……」」


「契約者の開放が先だ!」


「じーちゃんが先!」


「「……」」


お互い人質を取っている様なもので、平行線になっているのだが……、

ガゼットは爺さんの頭を、爪を立て、ギリギリと締め上げていて、

対するさっちゃんは……よだれを伸ばし、男の顔ギリギリで止めている……。


「もがが! もがー!」


「き、汚いやつめ!」


……それ(・・)については激しく同意せざるを得ない、ばっちぃよ、さっちゃん。

あの男がそっちの趣味なら、美少女に裸で跨られるのはご褒美かもしれないが、

あの目は本気で嫌がっている……そうとしか見えない。


「く、悪魔であり、魔人であるこの私を脅迫するとは……悪魔め!」


「ほっひほほ、ひほひひほふはふへひほふほほ!」


……多分”そっちこそ、人質とるなんて卑怯だぞ!”と言っているんだろうが、

さっちゃん……それはお互い様なんだよ?


「あー、横から済まないが……お互いに人質を離してから、

それぞれ歩いて、場所を入れ替えればいいんじゃないか……と思うんだが」


「……なにぃ?」


ガゼットが、血走った目で俺を睨む……やばい、地雷踏んだか?


「え、いやその、お互いこのままでは時間の無駄かなぁ……と」


「貴様……ゾンビ……いや、生者か? よくわからんが……」


ガゼットが、俺を指さし……このままビームでも打たれる様な雰囲気で……。


「採用!」


「は?」


さっちゃんの方に目線を送ると……親指を立てている?


「ぐっじょぶだよ、にーちゃん!」


「もがーーーー!!」


さっちゃんが返答したため、結局、涎は男の顔に直撃した……ををい!

……良かった、ガゼットは爺さんの頭を握り潰したりはしていない。


「ぶは! がは! ぜぇ……ぜぇ! このチビ!」


「うわぁ、ばっちぃ……きもーい!」


鼻水と涙、鼻血と涎(さっちゃんの含む)でべちょべちょの男(頭だけ)が、

さっちゃんの右手に掴まれながら、悪態をつく。

まぁ、べちょべちょなのはさっちゃんの所為なんだけどね……絵面が宜しくない。

左腕の無いさっちゃんには、拭くことも隠す事もできないだろうけどさ……。


「にーちゃん、宗くんの身体をおねがい!」


「お、おう!」


俺は、首のない宗君? の身体を背負って距離を取る。


「ちっ!」


さっちゃんが離れた時に、ワンチャン狙ってたんだろう、

露骨に舌打ちが聞こえる……あぶないあぶない。


………


……



「では、良いな?」


「うん!」


お互い人質を離し、それぞれ歩みだす……。 この手の展開って、

スムーズに終わった場面が、まったく思い浮かばない気がするんだけど……。


「流石に、人質が動かない状態だから大丈夫……だよな?」


ガゼットとさっちゃんがすれ違い、何事もなく終わるかに見えたが……。


「今だ、ガゼット!」


「承知、おおっとぉ? 足が滑った!」


ドカァァン!!


「きゃぶ!」


男の声と同時に、馬のような後ろ蹴りで、さっちゃんを背後から蹴り飛ばす!

さっちゃんは廊下の奥へと吹っ飛ばされ、蟲の脚を生やした男の頭が、

まるでゴキブリの様に、爺さんへと疾走する!


カサカサカサ……


「ガゼット! ジジイは俺が確保する、そっちの身体を取り戻せ!」


「承知!」


ガゼットが、こちらに迫ってくる。 


「てめぇ、卑怯だぞ!」


「馬鹿め! 騙される方が悪いのだ!」


しまった、爺さんを人質に? さっちゃんを追い詰める気だ……。

Xな物体となった男は、爺さんに飛び掛かった……防ぐ手立てはない……。


「ひゃっはぁー! これでこっちのモン……」


バチィィィン!


「……だばらぁぁぁ?」


「契約者どうし……」


ゴイーン!


「……ぬごわぁぁ!」


ガゼットに掴まると思った瞬間、ヤツの横顔に、吹っ飛んできた男がめり込み、

二人まとめて派手に転がった……。


男が飛んできた方向に見ると、膝を突いたままの爺さんの前で、

オーバーヘッドキックを決めたらしい下半身が見えた……そう、下半身だけ(・・・・・)が!


「え? うええ?」


「とーう!」


腕で目を拭って、視線を戻すと……さっちゃんの上半身が追加されていた……。

だけど……。


「さっちゃん……後ろ前逆!」


「にゅ? ああ!」


さっちゃんはこっちを向いたまま、爺さんの後ろに走り込んだ……。

前を向いているのにおしりが見えるという、後ろ前逆状態で……。


「にーちゃん大丈夫?」


すぐに、下半身が180度修正された、いつものさっちゃんが姿を現す。


「あ、ああ……爺さんは?」


何も無かったように、しれっと誤魔化しましたよこの娘は!

……いいよ、もう慣れたし、とりあえずは爺さんの方だ!


「無事みたいだけど……まだおきない!」


さっちゃんは、爺さんの身体を揺さぶるが、爺さんの反応はない。


「おのれ! 自ら半身を斬り落とし、ジジイの背後に隠していたのか!」


ガゼットが復活したようだ……顔に頭刺さったままだけど……ん? 切断?


「ええ? そうなの? さっちゃん!」


ぴゅー、ぴゅるる……(:=3=)~♪


下手な口笛で誤魔化している……だが、さっちゃんのお腹の辺りを見ると、

おへその辺りに切断面の痕のようなモノが……いや、でもどうやって?


「ひ、ひゃはは! ジジイを護った所為で、だいぶ魔素を消耗したようだな?

腕もそのままなのが、その証拠だ!」


顔だけの方も復活したか……いや、腕が取れたらそうそう治るもんじゃ……?

OK、冷静に考えれば色々おかしい、とゆーか、おかしすぎんだろ!


「さっちゃん……さっちゃんは人間じゃないのか(・・・・・・・・)?」


「ほへ? や、やだなぁ! ボクは、どっからどう見たって人間じゃん!」


また誤魔化した……唐突に現れて、理不尽な力……30年以上も変わらない姿、

一人で生き抜いてきた生存能力、どれ一つとっても異常だ! なのに何で……。


「にーちゃん、あぶない!」


ドカァァァン!


「どわっ!?」


俺の思考を阻害するように、ガゼットの拳が振り下ろされ、床が砕ける!

間一髪、さっちゃんに手を引かれて事なきを得るが……。


「あぶねぇ!」


「ひはは! 足手まといに、背後にはジジイ、圧倒的不利になったな!」


ぐっ! 確かに、人一人背負ってる俺と、動けない爺さん……それに、

今のさっちゃんには左腕が無い! 絶体絶命だと思ったその時……。


「よくも、儂の体を使って、好き勝手してくれたのぅ……」


「「な、何ぃ!?」」


ガゼットと顔だけ男が振り向くと、既にカンチョーの構えをした爺さんが……!


「歯ぁ、食いしばれぇぇぇぇぇ!!!」


ズバァァァァァァァァァァン!!!!


「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!?」


ガゼットの尻……いや、腰が吹き飛ばされ、巨体が宙を舞う!

あれ、この軌道って……?


行ったぞ(・・・・)、さち公!」


「ちょ、爺さん! さっちゃんは今腕が……って?」


頭から落下してくるガゼット、さっちゃんはいつの間にか裸足になっていた?


「さっちゃん、何を?」


「ちょいやー!!!」


ズガン!! 


「がぼぉ?」


さっちゃんは……確かにカンチョーでガゼットを口を貫いた……両足で……、

しっかり足の指でカンチョーの構えをして、片手で逆立ち状態で……嘘ぉん?


「!!!!」


ドパァァァァァァン!


ガゼットは砕け散った……頭だけの男を残して……。


「俺の魔人が……ガゼットが……俺の……」


「おい! ……って、」


「へへ、おれのぉぉ、まじん、がぁぁぜっとがぁぁぁぁぁ」


にやけ顔は、よほどショックだったのか放心状態になっていた。


「狂った?」


「まじぃぃんがぁぁぜぇぇぇぇっとぉぉぉ!!!」


「ええい! 足がすべったぞぉ!」


ブチュ!


「くぺ?」


……さっきのお返しとばかりに、さっちゃんが男の顔を勢いよく踏みつぶした!

それとも何か思う所があったのか、容赦のない蹴りだった……。


「じーちゃん! じーちゃん!」


さっちゃんが、爺さんに抱き着いて喜んでいる。 とりあえず助かったようだ。

爺さんは、頭をぼりぼり掻きながら……。


「さて、さち公……そろそろ、隠し事(・・・)は無しにしようか?」


「「え?」」


俺とさっちゃんの声がハモった……どうゆう事!?


………


……





結構、間が開いてしまいました。

ようやくやりたかったことをやれた回です……何かは秘密にしておこう……。

後2回で完結にもっていこうと、文字数多めとなっています。

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