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のばした手が掴むモノ -後編-その2

のばした手が掴むモノ -後編-その2


■事件発生から数日後


病院の地下にあった大空間は、土砂に埋まっておった。

あの祭壇のような場所は、病院の真下からやや外れており、

病院自体はが沈むことはなかったのだが、穴でも空いたのだろうか、

激しい雨で、緩んでた土砂が一気になだれ込んだらしく、全てを飲み込んだ。


儂は奇跡的に地表に近い(・・・・・)所で発見され、一命をとりとめた。

あんなに地下深くにいたはずなのに……。


医院長も、連れ去られた患者たちも、あの三人も、全ては土の中。

警察も動いたが、医院長の凶行も証拠がなく、行方不明者の身元さえはっきりしない為、

すぐに引き上げて行きおった……掘り出すことも無理じゃろう。


本来なら、発生した地滑りで、病院の一階が土砂に包まれるはずだったらしく、

地下に流れて行ったため、病院は無事だが、裏の山の形が変わっておった。

今は、残りの部分が崩れないようにと、補強工事が行われている。


医院長が失踪し、あんな事件も起きたため、どうなる事かと思ったのだが、

都会から新しい医院長様がやってきた様で、大きな騒ぎは起きていない様じゃ。


「山田さん、ここでしたか」


「後藤か……」


後藤の奴が、大きな段ボール箱を抱えて、儂のいる病院の屋上へとやって来ておった。


「……頼まれていた物を、失礼とは思いましたが……」


「いいんじゃ、いつもの場所へ置いていってくれ」


渡すべき相手のいなくなった荷物を、儂は引き取ることにした。

事件後、あの三人の私物も病室から回収し、儂の寝床へまとめておいたのじゃった。


「で? 今度の医院長殿は、悪魔の手先か? まともな人間か?」


「元はエリート医師で、将来も約束された人物でしたが、患者に手を出し……」


「手を出した娘共々、ここに飛ばされたわけか……」


「はい」


後藤から渡された資料に目を通しながら、医院長室の方を見やる。

屋上は3階にあるが、院長室だけは4階にあり、新しい医院長の姿も窓越しに見えた。


「前の医院長とは違って、若医院長様は、外見は良さげじゃがな……」


後藤の調査で分かったが、前医院長は、元軍属で黒魔術を研究する悪魔崇拝者(サタニスト)じゃった。

通りで、嘘と見抜けなかったわけじゃ、”救う”も”殺す”も同じことだったわけだからのう。


「あの、婦長の話を聞いた時には、全てが手遅れだったとはのう……」


前医院長の事を、儂に話した元婦長もここを出て行ったあと、すぐに殺されていた。


「あの時に、もっと疑っておればのう……」


………


……



■不思議な存在との遭遇


中庭で、血を固めた様な、どす黒い石を見つめている時じゃった。

”ソレ”が姿を見せたのは。


「何じゃ? お前は?」


人の様な……いや、人の形を取り損ねた影の様な何かが、儂の前に立っていた。


「……」


「をっと」


その影は手のようなモノを伸ばして、儂の持っている石を執拗に狙う。


「妖怪か何かか? じゃが……」


儂は、石をポケットにしまい、両手を組んで奴の背後に周り……。


ズビシュ!


「!!!!!!!!!」


人の形に近かったので、見当をつけて尻の孔と思われる部分にカンチョー(・・・・・)をかましてみた。


「逃げたか……」


奴はダメージを受けたのか、慌てて逃げて行った。

指先の匂いを嗅いでみるが、臭くはない。 


「やはり妖怪か?」


奴は、それから毎日、儂の前に現れ、儂を襲う様になった。

生意気にも、儂と同じカンチョーの構えを取り、儂のケツを狙ってくる。


あの三人がいなくなってから、中庭でボーっとしているだけだった生活が、

奴のおかげで、急に忙しくなっていった。


「こ奴、学習しているのか?」


毎回、儂にケツを抉られ退散するのだが、動きが良くなっているし、

徐々に人間のような姿になっているのが分かる。


「……ゃん、は、れば」


「ん? ついに言葉まで?」


今では、姿形がより人間ぽくなり、子供のマネキンに襲われている感じじゃった。


………


……



「ほう、だいぶ人間らしくなったいうじゃのう? じゃが……」


ズドム!


「!!!!」


「逃がさんぞい!」


儂は、カンチョーを喰らうと逃げる、小さな化け物の上にまたがり動きを封じた。

改めて観察すると、狙う場所(尻の孔)も再現され、指先には爪まで生えている。


「後は顔だけなんじゃがな……」


毎日繰り返されるじゃれ合いも、そろそろお終いにせにゃならなくなった。

目撃者が増え、儂が子供を裸にして虐待しているとかいう噂が流れ始め、

若医院長夫妻にも心配されてしもうた。


「なぁ、お前は一体、誰なんじゃ? お迎えの死神にしちゃぁ、しょぼすぎるしの」


「……け……ぎょく……」


捕縛されてもなお、儂の持ってる石を狙っているのか、儂の尻の下で藻掻いている。

この石は、儂が救出された時握っていたらしい。三人との繋がりとでもいうのかの?

手放す気にはなれんかった……。


「ふん、お前さんが悪魔で、これと引き換えに願いを叶えてくれると言うなら、

譲ってやらんこともないがな……まぁ、無理じゃろうがな」


「い……ろう……」


「ん? 何か言うたか?」


そう思った瞬間、儂の視線の先に、誰かがいる事に気付いた……あれは?


「タカ坊、ケン坊……さっちゃん?」


儂が心から望んだこと(・・・・・・・・・)、”三人に会いたい”という、願いがかなったのか?


手に持っていた石を落とし、儂がふらふらと立ち上がって三人の元へ向かい始めた時……


ズン!


「はぉ?」


ケツに凄まじい衝撃が走り、儂は地面に倒れた。 しもうた油断した!

三人の姿は消え、石を咥えた奴が、儂を見下ろしている。


「何じゃ、悪魔だったのか……願いを叶えたから、儂を殺すんじゃな?」


儂ともあろう者が、こんな間抜けな罠に引っかかるとはのう……。

幻とはいえ、三人に会えたんじゃ、もう思い残す事はない。


「カカカ、見事! 石もくれてやる、さぁ殺すが良いぞ!」


儂は大の字になり、最後(トドメ)を待ったのじゃが、奴は儂にまたがってきた?


「山田……のじーちゃんから1本……取ったぞ」

「……ボクの知っている言……葉で言うならば油断大敵……です」

「おじい……ちゃん、おしり……痛くない?」


奴が石を飲み込んだ後、聞き覚えのある、それぞれの声を発した?


「……山田のじーちゃんから一本取ったぞ! 油断大敵ボクの勝ちぃ!」


タカ坊とケン坊の喋り方が混ざったようなセリフを、さっちゃんの声で紡ぎだす……。


「その声に、その顔、まさか……さっちゃん?」


奴の顔はさっちゃんの顔となり、頭には美しく長い銀髪をなびかせていた。


「これで自由に動き回れるぞぉ!」


「む?」


騒ぎを聞きつけたのか、人の気配が集まってきたようだ……まずい!

儂から離れ、ぴょんぴょん跳ねている、さっちゃんモドキの尻を狙い……。


ズドム!


「ぴぎぃ!?」


まるで、さっちゃんにカンチョーしたようで気が引けるが、無力化に成功。

さっちゃんモドキを肩に担いで隠れ家(自室)に戻った。


ぬぷぬぷ……


若医院長は話が分かる奴で、この隠れ家の存続を認めてくれていたのは助かった。

適当に拝借した傷薬を使って、さっちゃんモドキにも塗り込んでおいた。


「はたして、人外のモノに効くのかのう?」


割と強めに撃ち込んだが、裂けてはおらんし、見た目人間と変わらんから大丈夫じゃろう。

それよりも気になったのは、こやつの身体は泥だらけでベッドには載せられん……。

掃除用具のバケツと雑巾も拝借し、雑にではあるが綺麗にしてやった。


「ふむ? 本当に悪魔だったとはのう……」


体を拭くついでに色々観察してみたが、尻には尻尾、背中には羽根の様な隆起物……。

それに何と言っても頭の左右にある巻角……何かの本の通りじゃ間違いないのう。

他の部分は人間の女の子と変わらんようじゃがな。


「さっちゃんに、よう似ておる」


さっちゃんが憧れていた、長い銀髪を撫で、感傷に浸る。

まるで、元気になったさっちゃんの様じゃわい……。


「何か、三人が一つにまとまったような奴じゃのう」


………


……



あれから数日も経つと、さっちゃんモドキは儂に懐いておった。

名前もややこしいので「さち公」と呼ぶことにした。


「ほれ、もっと気合を入れんか!」


「うっむむ……どりゃぁ!」


さち公の尻や背中を触る……尻尾と羽根は完全に隠すことが出来るようになった。

羽根と尻尾を何とかせんと、服が着せられないという事に気付き、特訓した。


「これで服は着れるじゃろう……問題は……これでなんとかなるじゃろう」


巻角に関しては、小さくする事は出来たが、隠しきれない様だった。

さっちゃんの遺品である服を着せた後、さっちゃんが髪を隠す様にかぶっていた、

サイズの大きい野球帽をかぶせる事で誤魔化す事にしたのだが?


「えへへ、タカラモノだ、嬉しいな♪」


この、さっちゃんそっくりな”さち公”は何か知っている様だが、

支離滅裂で要領を得ず、何も知らない無垢な子供の様な不思議な存在じゃった。

若医院長には、孫が毎日遊びに来ているだけだと誤魔化した。

流石にすっぽんぽんで、羽根と尻尾と角が生えてるままじゃ、紹介もできんかったがな。


「ペットを飼うっていうのは、こういう感じかもしれんのう」


さち公は、どん欲に色んなことを知ろうとしていたようじゃった。

いつの間にか、儂の芸術書籍(エロ本)の文字も読めるようになっていた。


「じーちゃん、”まん●り返し”って何?」


「相手を蹴り倒す事じゃな」


「じーちゃん”3●”って何?」


「三人がかりで、相手をぼっこぼこにする事じゃな」


よくよく考えれば、子供に悪影響しかない本ばっかりじゃった……。

本当の意味を教えるのもどうかと思ったので、適当に答えた。


あの三人が、一人になった儂を心配して、このちんちくりんな悪魔に願い事をしたのかのう?

確かに、落ち込んでる暇もない程、賑やかにはなったがの。


「さぁて、さち公、野球の組手(・・・・・)でもするかのう?」


「やるやる、今度こそ、不意打ちじゃない本物の1本取ってやる!」


「良い意気じゃ、儂に触ることが出来たらジュースを奢ってやろう」


「やった、病院を吹っ飛ばしてでも、じーちゃんに触ってやる!」


「それは、まぁ、ほどほどにな……」


病院付近で化け物を見た(・・・・・・)と逃げ込んでくる旅行者がいたり、

テロリストが病院を占拠したりとか、慎ましくも賑やかな生活が続いたのじゃった。


………


……



儂は、若医院長の相談をよく受けていた。他に相談する相手がいない、ということもあるが。

彼を支える奥さんは子供を出産時し亡くなっていた。

必死に、この病院を建て直した功績は大きい……儂も助かる。


子供にどう接すればいいかなど、相談内容もピンキリで、色々めんどくさいが、

医院長室の酒を馳走になれるので、出来る限り力になってやった。

根はお人好しで好感も持てるが、奥さんが亡くなってからは人が変わったようじゃった。


息子にも、医学の道を進ませておる様じゃが、気持ちはすれ違っている様じゃった。

しょぼくれてる息子には、さち公をけしかけたりしたもんじゃが、

高校を出た後は上京させ、都会の医大に通わせていたらしい。


息子殿も子供の頃から、老けていく儂と違って、全然、容姿が変わらぬさち公の事を、

”そういう病気だから気にすんな”と説明したら、鵜呑みにしたから心配ではあった。

大学を出て、こちらに研修医として戻ってきた時は流石に目を丸くしておったがの。

さち公の服装も繕ってはいるものの、昔から変えてないのはまずかったかのう……。


息子殿と一緒にやってきた、イケメンの若造は何か気に喰わん、

あの、元医院長を思い出すというか、あまり接触はしてなかったのじゃが、

それも間違いじゃったのだろうかのう……。


………


……



■悩みを抱えた青年


僕は病院を抜け出し、夜の中庭にやって来ていた。

ここは僕が生まれ育った場所、成人した今も変わらない。

医大を出て、研修医として同僚の久留間君と、ここに戻ってきた。


「はは、改めて見たけど昔のまんまだ」


普段は研修医として忙しく、定時で上がっていたのだが、

今日は夜勤の日で、休憩がてらにここを見に来たのだった。

大木の側のベンチに腰を下ろし、缶コーヒ―のプルタグを開ける。


「高校出るまでは、山田の爺さんと、さっちゃんもいて賑やかだったっけ」


「へー、そうなんだー」


「流石に、倉庫の秘密基地なんて無くなってるだろうな……」


「え? あそこ、なくなっちゃったの?」


「え?」


子供の頃の懐かしい記憶に浸っていたはずなのだが?


「ぶふぉぉ! え? きみは? ええええ? さっちゃん?」


「うにゃー!」


飲みかけのコーヒーを、いつの間にか隣に座っていた少女の顔にぶちまけた。


………


……



「ごめんねさっちゃん、もうちょっとそのままで……」


「だいじょうぶー! くぴくぴ、ぷはー!」


さっちゃんは、お詫びにと、奢った何本目かのメロンサイダーを堪能している。


ここは3階の洗浄室で、汚してしまったさっちゃんのシャツを洗って、乾かしている最中だ。

帽子と短パンは無事だったが、シャツにはコーヒーが直撃していたのだ。


「それにしても、さっちゃんは変わらないね」


「うに? そうかな? ボクはだいぶセクシーになってると思ったんだけど?」


上半身裸でくねくねポーズをとる、昔のまんまのさっちゃんを直視できなかった。

僕は別にロリコンってわけじゃない、ただ、恋心を抱いたこともある少女が、

昔の姿のまま裸になっているんだ、何というかこう、背徳感のようなモノが……。


「ぽん吉は、背が伸びたねーお腹もタプタプ~♪」


「ぽん吉か、子供の頃を思い出すなぁ……」


二人で長椅子に腰かけて、乾燥機でシャツが乾くのを待つ。

さっちゃんは”成長しない病気”だと、山田のおじいさんに聞いた、

さっちゃんは僕より少し上の筈、なのに……十数年前と対応が変わっていない。


「ぽん吉も暫く見なかったけど、お医者さんになったんだね?」


「ああ、おかげさまでね……でも」


「ん?」


流石に言えないな、同僚で尊敬している久留間君に言われて、

親父を医院長の座から降ろそうとしている事なんて……。


ぽふ


「んむ?」


さっちゃんが僕の頭を抱き、もちもちぽんぽんに顔を押し付けさせていた。

子供の頃、僕が泣いてる時良くやってくれたやつだ……。


「だめだなーぽん吉はー!」


「はは、そうだね……ありがとう」


僕は涙を流していた、さっちゃんに会えてよかった。

効率化重視で経営も傾いてると聞いたから、親父を楽にしてあげようと、

久留間君の案に乗ったけど、親父の気持ちを考えてなかった……。

さっちゃんのお腹の感触で、目が覚めた。久留間君の案は断る事にしようと。


「もう大丈夫だよ、さっちゃん姉ちゃん」


「その呼び方なつかしいねー、んふふー♪」


背丈が、さっちゃんを追い越すまで使ってた、昔の呼び名を久々に使った。

僕が医者を目指したのは親父の影響もあるけど、さっちゃんの病気を治したいというのもあった。

本人がまったく気にしていないので、忘れかけてたけど。


「あ、そろそろ戻らないと、みんなが心配する」


「いいよ、ぽん吉、バイバイまたねー♪」


「うん、でも、短パンは履いてるからって、その格好でうろつかないでよ?」


「はいはい、かしこまりー♪」


「また明日にでも!」


笑顔で見送ってくれる初恋の人に背を向け、ナースセンターに向かう。


………


……



翌日、久留間君に”計画”に乗らないことを告白した。

久留間君は驚いた顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り僕に行った。


「そうか、済まなかったな。 そうだ、お詫びに飯でも奢るよ、良い店知っているんだ!」


「いや、そんなに気を遣わなくても」


「いいからいいから、そうだな、今夜、仕事上がりに俺の車で行こう!」


「ん、ああ、そこまで言うなら……」


今夜はさっちゃんに会いたかったけどしょうがないか……。

久留間君はすごいな、街にある寮で生活してるのに、車まで持ってる。

人付き合いも、面倒見も良い。そこに痺れる憧れる。


………


……



僕はやっぱり馬鹿だな、久留間君に連れて来られたのは風俗店だった。

酒と女に溺れさせられ、写真も撮られた。 親父を脅すネタのするために!


帰りの車内、写真の件で強請(ゆす)られても、僕は断った……。

久留間君は恐ろしい形相で僕に散弾銃を向けた。


「それって、親父の?」


「ああ、どこかのお優しいお坊ちゃんが教えてくれたんで、こっそり持ち出せたよ」


久留間君が、狩りに興味があると言ってたから、昔に見た……、

院長室の隣に散弾銃があることをしゃべってしまったんだ。

最後の最後まで、僕は馬鹿だと……。


「お前は、ほんとに馬鹿だな、あばよ!」


ドゥン!!


………


……



■”さち公”と呼ばれた何か


「ぽん吉来なかったなー」


ジュースを奢ってもらえるかと期待して、ずっと待ってたんだけど……。


「朝になったら今夜じゃないよね?……ん?」


(……)


「あ、ご飯手に入った? え? 熊とかじゃなくて?」


(……)


「そっか、そっかぁ……うん、いいよ、食べちゃって」


地下深くにいる、もう一人のボク(・・・・・・・)が、ご飯を見つけた様だ、

動物じゃない……人間の命を……。


「ぽん吉は、明日も来ないのか……」


ボクは、トボトボとじーちゃんの元へ向かう。


………


……



その日は、風の強い夜だった。誰かがいそいそと病院を出ていく。


「あれって、ぽん吉と一緒にいた……なんだっけ?」


くまる? くるる? とか何とかの宗君だったっけ? 何急いでるんだろ?

ほんのり血の匂いもするし、誰か殺したのかな?


「大きなご飯にありつけるかな?」


死体があるかの確認に、いそいそと階段を昇ろうとした時だった……。


(……)


「ええ? それやばくない?」


(……)


「うそぉ? しかたないなぁ、ボクのとこに来て」


このタイミングで、地下の魔法陣が潰されるなんて信じらんない。

魔繰っていなくなったんじゃなかったの? どーなってんの?


………


……



朝になった時、病院内に生きている人間はいなかった。


「じーちゃん……」


じーちゃんも病院に飲み込まれたのか、見つけることが出来なかった。

生きているなら……と信じたけど、病院内は命を失ったゾンビだけ。

……ボクは一人ぼっちになっていた。


………


……



■数十年後


「なんだぁ? 死にかけの爺だけか?」


「どうでもいい、喰ってやる!」


「ぐぅ……」


ああ、そうじゃったな……不意を突かれたとはいえ、儂はあの時死んだんじゃったな……。

今もまた不意を突かれ、床に伏している。


「さち公に、渡すモノ渡して気が抜けた様じゃな、情けないのう」


「俺の槍を受けて、立ちやがった?」


「ぐへへ、丁度いい、さっきのお返しにゆっくりと引き裂いてやるぜ!」


多面の怪人と、ハリネズミのような怪人が、立ち上がった儂を見下ろす。


「そうじゃった、儂にはまだやり残した事があったんじゃよ」


「ああん? 人間かゾンビか分からんようなジジイが……がびゅ!」


儂の繰り出した拳が、多面の怪人の腹をぶち抜いた。


「な、お前……」


「待たせたのう、さぁ、殺し合おうか?」


崩れ落ちる多面の怪人を打ち捨て、もう一人の怪人に向き直る。


………


……
















山田のじーさん編のラストです。後は本編を終わらせるだけ。


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