のばした手が掴むモノ -前編-
【馬久瑠医院3階】
むう、ちと油断したのう……。
槍の様な物に、背後から貫かれ、儂は床に倒れた。
まいった事に、体が動かんわい……いかん、何か……走馬灯というヤツか?
いや、儂はすでに死んでるぞい?
……まずいな、頭がぼーっとしてきおった、早くさち公を……。
……はて? さち公とは……誰じゃったかのう?
儂の意識は、泥の中に沈む様に薄れていった……。
………
……
…
……もう、どれくらい前だったかのう。
殺して、殺して、また殺して、休む間もなく、また殺した。
息を吸う様に人を殺し、又、息を吐く様に人を殺す。
【戦争】という仕事場で、数えきれないほどの、眼の色の違う人間を殺した。
お互い、生まれる国が違うだけの同じ人間だ、いや、同じ目の色の人間も沢山殺したっけな?
儂の先祖は、侍の連中が、刀を腰に挿してイキっていた時代から、素手で人を殺していた。
指先一つで、敵を抉り、絶命させる。ただ、”抉る”……それだけの殺人術……。
そんな時代錯誤な一芸も、儂の代で終わるじゃろう。
……儂の髪が全て白くなる頃には、儂にはなんも残っておらんかったよ。
戦争も間もなく”終わる”という話が出て、お役御免となった儂には、先祖が残した莫大な財産と、人を殺して得た金だけ。
妻と子供も、敵さんのくそでかい爆弾で、みーんな消えて無くなっとった。
その後にな、儂の”親族”が急に増えおってなぁ……。
いや、儂の財産目当ての亡者どもで、顔も知らん奴ばかりじゃよ?
嫌がらせに、姿をくらまし、名前も変えて、儂の土地の小さなボロ病院に引き籠ってやったわい。
院長は胡散臭い奴だったが、大金を渡したら喜んで協力してくれた。
することもなく、ぶらぶらとして、若い看護婦のケツを触り、からかう、そんな退屈な毎日を送った。
このまま枯れて、そのまま人知れず、最後をここで迎えるだろうと思った頃だったかの?
このボロ病院に、やたらと子供らが増えて行ったのは……。
………
……
…
日課になっていた、悪戯とスキンシップの後、看護婦に追い掛け回され、今は中庭でのんびりとしていたんじゃが……。
「じーさん、なんかおもしれー話を聞かせてくれよ!」
(何で儂がそんな事をせにゃならん?)
「老人は、色々面白い話を知ってるって、看護婦のお姉さんが言ってました」
(ちっ、ケツを触られた腹いせのつもりか)
「おじいちゃんは、何のびょうきなの?」
(儂は健康そのものじゃ、癖で鍛錬は欠かしていなかったしな……)
中庭で、のんびり煙草をふかそうと思ったが、ガキンチョたちに囲まれていた。
「なー、なー、なにか楽しい遊びを教えてよー」
「そうですね、病院生活は退屈過ぎます。 何か新しい刺激が欲しいです」
「……(コクコク)」
(あー、うるさいのう、ちょいとビビらせてやるか……)
「わかった、わかった、そこの坊主、あそこにあるレンガを持ってこい」
「これか? これをどうすんだ?」
「それを両手でしっかり、そうそう、胸の前で……」
一番年上っぽい少年に、指示を出し、胸の前にレンガを持たせ、そのレンガに指を宛がう。
ズン!
(ふん、これでビビって、近寄ってこなくなるじゃろうて……)
「え? すっげぇ! 指で穴があいてるぞ!」
「本当だ、これはミステリーですね? それとも手品ですか?」
「おじいちゃん、おゆびいたくないの?」
(おや? おかしいのう? ここはビビりまくる所じゃないんか?)
「レンガに仕掛けが?……いってぇ!」
「僕が調べた限りただのレンガですよ?」
「……(コクコク)」
(おかしいのう? 絡んできたチンピラは、これで逃げだすというのに……)
「普通こういうの見たら、ビビるもんじゃろう?」
ビス! ゴス! ガス!……ゴシャァ!
少年からレンガをひったくり、レンガを指で穴だらけにして。粉々にしてみる。
「む? おかしいのう……」
ガキンチョたちが、目をキラキラさせて儂を見ているし、次々と石やら木の板やら持ってき始めた。
「じーさん、流石に、これはむりだろー?」
「お爺さん、石にもできますか?」
「これも、これも!」
………
……
…
いや、別に楽しんでおらんよ?
つい、調子に乗って、病院の壁に穴で文字を穿ったのはまずかったが……。
「先祖代々伝わる殺人術が、ガキどもを喜ばす見世物になるとはのう」
「じーさん、カンチョーでチャンピオンになれるぞ!」
「カンチョーって、なんじゃい?」
言葉の感じからして、医療器具の方ではない様だが?
「知らないのか、じーさん? こうやって……どりゃ!」
「ぎゃー! タカちゃん……ひどいですよぉ……あいてて!」
「ケンちゃん、そんなときは、ひっひっふーだよ、ひっひっふー!」
「ほう? こうか?」
少年がやっていたように、手を組み合わせ……、標的はっと。
流石に子供に向けてやるのも気が引けたので、視界に入った「小便小僧」の側に行き、その尻に向かって……。
ガボン!
「ふむ」
……子供たちが大爆笑する中、ふと儂は思う、尻から勢いよく水を噴き出す「小便小僧」は、果たして「小便小僧」と言っていいものなのか? ……と。
「おい、ジジィ! 何やってんだ!」
騒ぎを聞きつけてきた、ガラの悪い男がやって来る。”病院の関係者”と言えば聞こえはいいが、医院長の奴が子飼いにしてる、ただのチンピラだ。
「ん? 何って、儂は、ただガキ……いや、子供たちと戯れていただけじゃが?」
チンピラの男は、儂の胸倉を掴み、そのまま吊り上げる。……いかんのう、気を抜いたら、うっかり殺してしまいそうだわい。
「ああ、すまんのう、反省してやるから、ホレ、どっかへ行ってくれんか?」
「こ、こんのぉ!」
せっかく、のんびりと引き籠っておるのに、”入院患者が医院の関係者を殺した”とあっては、身バレするのも時間の問題じゃから、下手に出たんじゃが……顔を真っ赤にして拳を上げおったよ?
「ぶっ殺し……あぎゃぁ!」
不意に手を離され、何事かと思ったら……。
「じーさんに何するんだ!」
「ふがふふ!」
「やめて! やめて!」
ガキンチョたちが、男にカンチョーしたり、噛みついたり、ぬいぐるみでぽむぽむ叩いている所じゃった。
「ガキどもがぁー!」
所詮は子供、あっという間に蹴散らされ、ぬいぐるみは引き裂かれて踏み躙られた。
「おいおい、子供相手にやり過ぎじゃろう?」
「うるせぇぇぇ!!」
男は、血走った目で殴りかかってきた。まいったのう、殺さずに、大怪我を負わせないで、二度と歯向かってこない方法なんて……をを、そうじゃ!
「な? ジジイ! どこへ……」
男の背後にまわり込み、さっき教えて貰った構えで……。
「歯ぁ、食いしばれぇ!」
ズドン!!
「ふごっ!?」
男は宙を舞い、そして無様に地面を転がる。
「ごあ! うぎゃぁぁぁl!!! ケツが! ケツがぁぁぁぁ!!!」
「ほう? 手加減はしたつもりじゃが、結構飛んだのう?」
「……って、くそ! うぎ! こんなことをして、あがぁ! ただで済むと……」
尻を押さえながら、悶絶する男の顔を踏み躙り言った。
「ただで? 何じゃって? 今のは手加減したが、いっちょ本気で打ち込んでやろうか?」
「!!!」
みるみる顔が蒼くなる男。
「それにの? お前さんは、”ひ弱なジジイにカンチョーされて、逃げかえって来ました助けてください”とでも言うつもりかのぉ?」
ずぶ!
儂は両の人差し指を、それぞれ男の鼻の穴に突っ込む。……いや、ちょっと指先が匂っとたのでな?
「ぶが! ぶがが!」
「後な、医院長に言ったところで、無駄じゃぞ?」
こんな下っ端じゃぁ、儂を知らんのも無理はない、資金援助を断ると言えば、さぁ、どうなるかのう♪
汚れを落とす様に、乱暴に鼻の穴の中をかき回し、引っこ抜く。
「ぶがぁ! はががが!! がは、ひ、ひいいい!!!」
男は、鼻血を噴き出しながら、尻を押さえ、ぴょんぴょんと逃げて行った。
………
……
…
子供たちは、儂の元に集まってきて、心配そうに声をかけてくれた。
「まったく、無茶をしおって、ケガは無いか?」
「俺たちは大丈夫……だけど」
「……さっちゃんが」
「あの女の子か、どうかしたのか?」
果敢にも、ぬいぐるみで男を叩いていた女の子が、座り込んで泣いていた。 側には引き裂かれ踏み躙られてボロボロになったぬいぐるみが転がっている。
「酷いのう、ホレ、もう泣くな、儂が新しいのを買ってやるわい」
ぷるぷるぷる
女の子は、激しく首を振る。あまり高級そうなものにも見えんが?
「それは、さっちゃんの父ちゃんが、最後にくれたぬいぐるみなんだってさ」
「いつも大事そうにしてましたしね」
「それなら、もう一度買ってもらえば……」
「お父さん、事故で死んじゃったの、サチとの思い出これだけなの……」
んぐ、そういう事じゃったか、それがどんなに大事なのかは……正直分からん。 儂の娘はあまりねだらなかったからのう……孫なぞ、顔も覚えてない。 戦争にかまけてて、家族の事など、金さえ送ればと……。 それが良くなかったのか、冷静に考えればねだらなかったんじゃなく、ねだれなかったのかもしれん……。 なんかムカムカしてきた!
「ええい、さっちゃんだったか? 安心せい! 儂が何とかしてやる!」
儂はいてもたってもいられず、さっちゃんを担ぎ、ぬいぐるみの残骸を拾うと、一目散に駆け出した。
………
……
…
「頼む! 急患じゃ! はよう治してくれ!」
儂は、看護婦が集まる部屋にいた。
「ちょっと、山田さん! 何なんですか! ……しかもこの汚いのは……?」
「かんごふのおねえちゃん、ぴっぴを助けて……」
「幸恵ちゃん? どうして山田さんと?」
普段、儂はここに、ふらりと現れては、ナンパするのと、若い看護婦の尻を触りに来ていた。そんな儂が、慌てた様子で、幼女と一緒に詰め寄っているから、向こうも対応に困惑しているのが分かる。
「儂の不注意で、この子の大事なぬいぐるみを、ケガさせてしもうたんじゃ! ここば病院じゃろ? 何とかしてくれい!」
自分でも、何を言ってるのかわからんが、この子が納得する様な方法が、これしか思いつかんかった!
「あのねぇ、ココは、お針子の店じゃないんですよ? それに、こんなに……」
「この通りじゃ!」
ゴン!
儂は床に頭を叩きつけ、懇願する。 自分でも信じられんが、身体が勝手に動いた。
ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!
「この通りじゃぁ!」
「ちょ、止めてくださいよ! みんな見て……」
「まぁ、まぁ、院内では大声を出すものではありませんよ?」
「婦長? でも……」
部屋の奥から、貫禄のある看護婦が現れ、若い看護婦を嗜めて儂の前に膝をつく。
「あらあら、これは酷い怪我だわ、すぐ手術しないとね」
「治してくれるのか!?」
儂は、床にひびが入るほど頭を叩きつけていた様だ、額から流血しているのに、今更気付いた。
「かんごふのおばちゃん、ぴっぴを……」
「はいはい、大丈夫よ、でもね? 難しい手術になりそうだから、ぴっぴはしばらく入院ね、一人で待てるかしら?」
「う……」
余程、肌身離さず持っていたのだろう、さっちゃんは困った顔をする。
「できないなら、ぴっぴは助けられないわね」
「うう……」
泣きそうな顔のさっちゃん。 酷いな、このババぁ! と思ってると、そのババァがこちらをニコニコしながら見ている……。 わかったわい! 儂に”何とかしろ”って言いたいんじゃろ!
「大丈夫じゃよ、儂と……ほら、何と言ったかのうあの二人……」
「燃える熱血!飯田孝之と」
「静かなる知将!相川健介!」
「「二人合わせて、静かに燃える熱中将、タカ&ケン! ひゅーひゅー!」」
……いたのかお前たち。
突如現れ、名乗りを上げるガキンチョ二人に、周りが”しん”っと静まりかえった……。
「……な? みんなで、さっちゃんと一緒に、ぴっぴとやらを待ってやるから!」
「……サチ、ひとりじゃない? うん……」
ババァは、満足そうな笑顔で立ち上がる。
「じゃぁ、頑張って、ぴっぴを元気にするわね、それと、誰か山田さんの治療を!」
こくこく頷くさっちゃんの頭を撫で、ババァはぬいぐるみを優しく持ち、部屋の奥に消えていく。
「やるじゃねぇか、じーさん!」
「そうだね、あの婦長のおばさん、怒ると凄く怖いんです!」
「……」
さっちゃんは、もじもじしながら儂の脚にしがみ付く。やれやれ、暫くは儂がぴっぴの代わりか……。
「まぁ、たまには、こんな事もあっていいか……」
あのまま、放っておけなかった? それとも、塵と消えた家族への贖罪?
それに”カンチョー”とやらをもっと早く知っていれば、敵を殺すこともなかったという可能性。
色んな考えや後悔で、儂の頭の中はいっぱいになった。
「ちょっと考えれば、少し手を指し伸ばせば、また違った結果になったんじゃな……」
子供たちと戯れているうちに、退屈だった隠遁生活が、アホらしくなるほど賑やかになった。
………
……
…
「見かけのわりに、良い腕をしてるのぅ」
「ふふ、褒めたって何も出ませんよ?」
あれから6日、奇麗に修復されたぴっぴを抱いて、寝息を立てるさっちゃんに布団をかけるババァ……いや、婦長。
「山田さんも、すっかり子供たちと打ち解けていますね」
「ふん、何とでも言え、単なる暇つぶしじゃわい!」
儂は、そそくさと病室を出ていく。
「さて、と……」
儂は、子供たちの検診が終わると、目いっぱい遊んでやることが、日課となっておった。皆が眠った後、儂は中庭で煙草をふかすのを一日の締めとしている。
「ふぃ~、落ち着くにはこれが一番じゃのう……」
「山田さん、ちょっといいかしら?」
中庭に、婦長が姿を現す。
「なんじゃい? 煙草はガキンチョの前では吸っておらんぞ?」
「私にも、一本もらえるかしら?」
「はぁ?」
とち狂ったのか? このババァ! お前さんは看護婦のボスじゃろうが?
「別にいいでしょ? 私だって看護婦の前に、一人の人間ですよ?」
「む……まぁいいか、これをネタに、色々要求できそうじゃな」
悪態をつきながら、煙草を一本渡し、マッチで火を点けてやった。 ストレスもあるんじゃろう、物凄く美味そうに吸いおるわ……。
「ふぅ~本当にありがとう、感謝してもしきれないわ……」
「煙草一本で大げさな、何を企んでおるんじゃ?」
「違うわ、子供たちの事よ」
婦長は、紫煙を吐きながら語った。 あの3人以外にも子供はいたらしいが、ある日を境に、次々と原因不明の発作で亡くなり、あの3人だけになったと……。 不安になる3人を見かねて、院長に詰め寄るも、子飼いのチンピラに追い払われるのが関の山だったと……。
「そういえば、気にもしなかったが、子供が減っておるな」
「変でしょ? すべて事故で片付けられて、親御さんたちも、不思議と文句を言わないのよ?」
「はぁ? 益々、けったいな話じゃのう……血も涙もない、人情もないという事か?」
人を殺しまくった儂が、ソレを言っちゃぁお終いじゃがな。
「人身売買……してるみたいなのよ……」
「な? おいおい! ここは病院じゃろう?」
「そうよ、そう思って、今までやってきたのよ……なのに、私見たのよ……」
婦長は涙を流していた、いつも笑顔を絶やさないあのババァが……。
「馬久瑠院長は変わったわ……」
……あの、うさん臭い院長は、戦争が終わる直前からおかしくなっていったそうな。
それまでは、医療にも精力的に活動していたらしいが……。
設備、人員、環境……徐々に病院としての機能を失い、死者が出ても騒ぎにすらならない。
しかし、昔からあるという、唯一の病院は、未だに運営を許されていたという。
婦長は、ある日、入院患者の母親が、院長から多額の金を受け取ったのを見たという。
その日から、母親はろくに見舞いに来ることはなく、若い男と遊び歩いてるという話だ。
「病弱だったお子さんを、ここに預けて、その直後に旦那さんが事故で亡くなって……保険金や遺産で沢山のお金が入ったらしいけど、家まで売ったって……」
「そういうのは……保険金詐欺、とかいうやつじゃったか? そりゃぁ、子供が可哀想じゃのう……」
「それが、幸恵ちゃんの母親ですよ……」
「は? はぁ……成程のう、そりゃぁ、あのぬいぐるみを、大事にするわけじゃな」
「孝之君と、健介君も似たような境遇ですよ……。 寂しさを隠す様に虚勢を張って、それでも幸恵ちゃんを護る様にしている姿は……」
「あの2人がのう……」
「6日前、山田さんに出会ってから、あの子たちは自然に笑ってました……」
「こんな、ジジイに懐くのは変じゃと思っとったよ……」
昔は、一睨みで子供なんかビビって近寄りもせんかったのにのう。 6日前のアレはやり過ぎたかの?
「これでもう、思い残す事はありません……だから、感謝しています」
「カッカッカ、まるで、ここを辞めるような口ぶりじゃのう」
「ええ、もう辞表は出しましたし、引き継ぎも終わっています」
「……はいい? 冗談じゃ……ないようじゃな」
「うちの娘がね、都会の方に嫁いでて、こんなさびれた町じゃなくて、向こうの病院に勤めればいいってさんざん言われててね、でも、子供たちが気になっていたんだけど……」
「儂に押し付けて、都会でひと花咲かせようということかい……」
「ええ、それに……」
「うん?」
「都会の大きい病院や、医療機関の人たちなら……ここの現状を相談できるでしょ?」
……いやはや、まいったのう、このババァ、結構したたかだわい!
「やれやれ、儂が生きてるうちに、何とかしてくれるんじゃろうな?」
「ふふふ、山田さんなら、殺したって、死にそうにないじゃぁないですか?」
「言うてくれるのう」
まぁ、ここまで、想いを吐露されては、儂も少し調べてみるかのう……あの医院長、この間”ボイラーが寿命”だからとか言って、儂から資金援助を受けておったな……。
「まぁ、元気でのう」
「子供たちをお願いします……それと、若い子のお尻ばっかり触ってはいけませんよ?」
儂と婦長は、別れの挨拶代わりにしっかりと、そして力強く握手をした。
「ああ、だが……後者に関しては”絶対にNO”とだけ言っておくわい」
………
……
…
数日後、婦長は沢山の看護婦や、患者に見送られ、馬久瑠医院を去った……。
ガキンチョたちも泣きながら見送っていた。
……それが、あの婦長を見た……最後の姿だった……。
………
……
…
書こうかどうか迷いましたが、もやもやするよりかは”書いてしまえ”と、山田のじーさんとさっちゃんの出会いを書いています。




