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モザイク世界のQOL  作者: 川北えん
18/20

18話

子供たちがリンゴ飴を高らかに掲げながら、目の前を走っていく。

どこもかしこも幸せそうな歓声に包まれていた。

ここは芋鍋祭りのメイン会場である川沿いの公園だ。

あの夜、僕達は河原にシートをしいて、鍋を楽しんでいた。

実行委員長でもあるラックバート王は目の回るような忙しさで走り回っていたけど、僕と正成さん、メトロとシルヴィア王女は祝杯を挙げていたのだった。

メトロには、この国に来てからしょっちゅう居酒屋に一緒に行く仲になっていた。

でも、実は彼はお酒がそれほど強いわけではない。

意外にもシルヴィア王女が酒豪であり、一人で居酒屋に行きにくいことからメトロがいつも付き添っていたのだった。

彼女は酩酊すると、普段押さえつけている戦士としての気性が解放されて暴れることがあった。

要は、僕と正成さんもシルヴィア王女のお目付け役の手助けに任命されたわけだ。

今もそわそわしながら、メトロは彼女のお酌をしていた。

ただ、頻繁にこの身内の酒盛りを中断する人物が現れ続けた。

橋ノ森の科学者や技術者たちだ。

普段は忙しく国中を駆け巡るメトロが一か所に留まることは珍しいらしく、ここぞとばかりに自分の論文や研究に意見を求めに来た。


「驚いた。メトロ、君は本当に天才発明家だったんだね」


正直、その会話内容は知性に溢れていて、僕は内容のほとんどを理解することができなかった。


「発明家っていうかよ、俺は技術屋のつもりなんだがな」

「この人は、物心ついたころには機械をいじっていたらしいわよ。今でも機械にぞっこんだから、たまに嫉妬しちゃうわ」


ちょっととろんとした目で、シルヴィア王女がメトロによりかかる。

メトロは困ったように彼女を介抱しながら、その手からそっと酒がなみなみ注がれたコップを取り上げた。


「俺の親父は自動車工場をしていてな、その手伝いをガキンチョの頃からしていたのさ。自然と機械科学に興味を惹かれていったなぁ」

「それが、今ではマシニカを代表する頭脳になったのだから、すごいなぁ」


僕は正直に称賛した。


「それがよ、まだガキの頃によ、車のエンジンを整備して居たら急に頭痛が止まらなくなってよ。それが一週間続いた。あの痛さといったら、マジで頭が爆発するかと思ったぜ」

「そして、この人の機甲スキル『スーパーアロイ』が開眼したのよ。目を覚ますと同時に、常人には理解できない技術論をまくしたてて周囲はびっくりよ」


あれ、シルヴィア王女の意識がまだあるようだ。

今日は良い酔い方ができているみたいで一安心。


「俺の頭の中に、見たことも聞いたこともない設計図が次々と浮かんできてよ。しかも俺の能力は脳内の設計図を物理的に具現化できた。最初は意味が分からない技術でも、実物が目の前に現れて、分解してみりゃ何となく理論はわかってくる。それをもとに、新たな設計図を脳内に描いて実物化してみたわけさ」

「そうした実験と設計を繰り返した結果、いつの間にかこの人の名声は世界中に知れ渡っていった。そして私たちは学園で知り合ったの。噂では偏屈で暴力沙汰の絶えない問題児って聞いていたのだけど、実際あってみたらこんなにキュートな人だったからびっくりしたわ」


そう言ってシルヴィア王女は、上機嫌にメトロの頭を撫で始めた。

メトロ、僕は預言者じゃないけど、将来君が彼女の尻に敷かれるのは断言しよう。




撤退を繰り返し、可能な限りの時間を稼いだ。

そして、ついに中央の戦場にもメトロとシルヴィア王女が到着した。

線路の上を黄色いスーパーカーと赤い電車が疾走している。

停車した電車からは未来的な装甲服を装着した狩猟兵団の面々が下車してきた。

彼らはすぐさま突撃陣形を組み、騎士団へと襲い掛かったのだった。

その両腕にはレーザーライフルを構えていて、光の粒子が白銀の騎士たちを次々に屠っていく。

あれらはすべてメトロのスキルにより具現化した兵器たちだ。

『スーパーアロイ』はBランクのスキルだから、パワーでは『騎士王の凱旋』に及ばない。

だが、機甲スキルは武人スキルの弱点でもある。

その結果、騎士たちの物理攻撃耐性は打ち消され、光の弾丸が鎧を貫く。

だが、兵力差は圧倒的だ。

メトロの具現化した兵器は大量生産できるわけではない。

だから彼は、早々に自分の切り札を使用するのだった。

真っ赤な電車が底面から火を噴き、その先頭車両が天を向く。

いやに響く機械音をだしながら、電車は変形していき、太い両椀と下半身を形成していった。

続いて黄色いスポーツカーが空を飛び、巨人の胸部と頭部に変身する。

その二つがドッキングしたとき、全長が30メートルはありそうなロボットが完成した。


「待たせたわね、空十くん。右翼の敵はあらかた倒し終わったわ」


スピーカーから聞こえるのはシルヴィア王女の声だった。

この巨大ロボットこそ、いまの彼女の魂の器であり身体であった。

元々はメトロの趣味で作ったものだったから華麗さはなく、ちょっと古臭い昭和のスーパーロッボットのようなデザインで、男の子の僕は大興奮だ。

でも、逆にその力強いデザインがシルヴィア王女には大不評だった。

太って見えるのが耐えられないらしい。


「ははは!これぞ、俺の無敵のスーパーロッボット!シルヴィーガーだぜ!敵を蹴散らすぞ」


メトロの声も大音量で戦場に轟く。


「変な名前も止してほしいわ。恥ずかしくて泣きそうよ」

「そう言うなよ。この戦争が終わったら、お望みのボディを用意するからよ。いまはこれで我慢してくれよ」

「本当にお願いね。ちゃんと可愛い体よ?」


そんな夫婦漫才を垂れ流しながら、シルヴィーガーは容赦ない攻撃を騎士団に浴びせていく。

軽く地面を蹴れば、数十の戦士の体が空を吹き飛び、体中に仕込まれたビーム兵器が遠距離の部隊を焼く。

メトロの砲手としての腕は確かで、的確に騎士団のウィークポイントを爆撃した。

胸を覆う真っ赤な装甲が展開して広がる。

装甲板が光り輝くと、そこから大出量のビームが照射されて大地を溶かした。

本来ならエスタベル軍の援軍を前提とした橋ノ森の遅滞戦術。

それがメトロたちの活躍により完成したのだった。


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