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64話 え、ナツキさん!?手加減手加減!

共和五本投稿です。これは五話目です。




~シース視点~


「あ・・・・ごめん。買う味間違っちゃったみたい。悪いけど、そっちの少し分けてもらえないかな?」

「え・・・・あ、うん。え」


いそいそとゼルドさんの透明パックに焼きそばを移す私。ゼルドさんから何も反応が見られないから、そっちを見てみると・・・・。目を閉じて、口を開けていた。え・・・・?もしかしなくても、そういうことなんだろうな。たぶん。


「じ、じゃぁ、あーん」

「あーん・・・・うん、おいしい!じゃ、俺のもどうぞ。はい、あーん」


ゼルドさんからも・・・・って、今気づいたんだけど、これってお箸間接キスなんじゃ・・・・!?はじゅかしい!


「あ・・・ん・・・・お、おいしい・・・・です」


・・・・ゼルドさんは、私の気持ちに気が付いて、私が諦められるように、私のわがままに今日一日だけ付き合ってくれてるのかな?


(ナツキさんがもし、海で事故に会えば――――――――――――――――)


「あ、ディアナたち、海に入ってる。楽しそうだし、私たちもいきましょうか」

「そうしようか」


もう、怖い話の事なんてどうでもよくなっちゃった。一瞬頭の中に浮かんだ黒い願いのせいで、どうでもよくなっちゃった。あの怖い話が本当でも、いい。私なんて、海の底に引きずり込まれちゃえばいいんだ。




~ゼルド視点~




「ナツキ達、中々楽しんでるなー。ん?・・・・何やってんだあいつ」

「ディアナまで・・・・何やってるんだろ」


ナツキのやつ、さっきから知らない女子に絡みまくってる・・・・?あれじゃあセクハラじゃねーか!絡まれてる女子も、ナツキの謎のコミュ力により、仲良くなってるだ・・・・と?ナツキの見た目が女子だからなのか、ナツキのコミュニケーション能力がカンストしてるからなのか・・・・くっそ。羨ましいぜっ!


「とにかく、入っちゃいましょうか」

「あ、そうだね」


心なしか、棘のあるシースさんの声で我に返り、恐る恐る水に足をつける。・・・・うん。一か月ぶりの海だったからちょっと緊張してたけど、そうでもなかったな。警戒する必要なんかなかったみたいだ。当然か。


「シースさんは泳げる?」

「ううん。海に来るなんて、初めてだから」

「そっか。じゃあ、俺もあんまり泳げないけど、教えてあげるよ」

「本当に!?」

「もちろん!」


「泳ぐときはこうやって――――――――」

「こ、こうですか?」


「水を怖がらないで、顔は水につけたまま――――――――」

「ぷはっ!」


「姿勢をなるべく崩さないように――――――――」

「ごほっ、ごほっ!」


「大きく動作する必要はなくて、ゆっくりでも――――――――」

「・・・・!」


「息継ぎは、顔を横に傾ける感じで。口は、半分水に浸けたまま――――――――」

「ぷはっ・・・・ぷはっ・・・・」




「凄く上手くなったね!すごいじゃん!」

「そ、そうですか?」

「凄いよ!俺なんて、出来るようになるのに丸三日以上もかかったのに!」

「・・・・やった!」


かわいいなあ。何てかわいいんだ。いいよね?少しくらいなら良いよね?頭なでるくらいなら、良いよね?


「よく頑張ったよ」

「あ・・・・ふゅ・・・・」


!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?


かわ・・・・いい。可愛すぎて意識がショートするところだった。なんだ今の声。『ふゅ・・・・』ってなんだ『ふゅ・・・・』って!!!あ――――――――もうだめだ。俺はもう可愛さにやられちゃいました――――――――。


「・・・・」

「あ・・・・ふゃ・・・・」

「・・・・」

「あ、あの・・・・」

「・・・・」

「ゼルドさん?」

「・・・・はッ!?」


しまった。あまりにもいい触感と反応だったため、我を失って撫で続けてしまった。やべーな、これ。中毒性あるわ。うん。


「あ、ご、ごめん。あ、そうだ!泳ぎも中々上手になったし、もう少し深いところ行ってみない?」

「え・・・・」

「大丈夫大丈夫!何かあったら俺がカバーするから!」

「じ、じゃあ、行ってみます」




~ナツキ視点~


「じゃ、そろそろ行こっか」

「そうだね」

「ん・・・・?あ、ちょっ・・・・!」


~シース視点~



「凄く上手になったね!すごいじゃないか!」

「そ、そうですか?」

「凄いよ!俺なんて、出来るようになるのに丸三日以上もかかったのに!」

「・・・・やった!」


思わず、小さくガッツポーズしちゃった。目の前にゼルドさんが居るのに、そのゼルドさんに褒められたうれしさで、気が回らなかった。


「よく頑張ったよ」

「あ・・・・ふゅ・・・・」


・・・・ちょっと変な声でちゃった。は、はずかしい。でも、気持ちいい・・・・。ゼルドさんに撫でられると、お母さんに撫でられてるみたいで安心する。


「・・・・」

「あ・・・・ふゃ・・・・」

「・・・・」

「あ、あの・・・・」

「・・・・」

「ゼルドさん?」

「・・・・はッ!?」


あ、危なかった・・・・もう少し撫でられてたら、眠ってたかも・・・・。でもなんか、うとうとしてるときみたいな心地よさが・・・・。


「あ、ご、ごめん。あ、そうだ!泳ぎも中々上手になったし、もう少し深いところ行ってみない?」

「え・・・・」

「大丈夫大丈夫!何かあったら俺がカバーするから!」

「じ、じゃあ、行ってみます」


なんか、まだ頭がボーっとしてるなぁ。顔も熱いし。このまま深い所まで行っても大丈夫かな?なんか、あっさり溺れちゃいそう・・・・。というかゼルドさんに溺れちゃいそう・・・・なんちゃって。


パシャ・・・・パシャ・・・・


「うん、上手上手」

「ぷはっ、良い感じですよね?」

「凄いと思うよ。プロって自信をもっていってもいいくらい。」


嘘だとしても、嬉しい。まだ全然ゼルドさんの方が上手だし・・・・ゼルドさんに頼らなくても問題ないようになれるまで、上達しないと。


「・・・・ん?」

「どうかしましたか?」

「いや・・・・」


ゼルドさんが飛空船の中でしてくれた、怖い話が頭をよぎる。確か、海難事故で亡くなった魔族の、亡霊。海のちょっと深い所に行くと、足をつかんで海の中に引きずり込む・・・・。


「まさか・・・・」

「いや・・・・ちょっと、ね」


緊張感からか、少しひきっつている表情のゼルドさんは、困って笑っているようにも見えた。


「一応、気を付けて」

「は」


ザバッ・・・・!


一瞬、何が起こっているかわからなかった。周りで爆発音にも似ているような音が鳴った後、一気に全部の音が消えた。一瞬の混乱ののち、自分の身に何が起こっているかを理解することができた。水中に、引きずり込まれたんだ。そう、まるで、あの怪談話のように。


『がぼっ・・・・!ごぼっ、がぼぼっ・・・・!』


混乱と焦りで、口から空気が逃げてく。必死に上に向かおうと手を探らせても、掴むのはただの水。いや、たとえ何かをつかんだとしても、無駄だったと思う。それは、私の足に虎ばさみのように食い込む何かが、そう確信させた。


『がぼがぼ・・・・っ!・・・・ッ!・・・・っく!がぼ・・・・・・・・』

『くそ、何だこれは!この・・・・どけ!』


薄れる意識の中で、焦る声と軽い浮遊感を感じたのを覚えてる。それが、気絶しかけたからなのか、誰かに助けてもらったからなのかはよく覚えてない。




~ゼルド視点~



「うん、上手上手」

「ぷはっ、良い感じですよね?」

「凄いと思うよ。プロって自信をもっていってもいいくらい。」


本当に上手だな・・・・もしかしたら、俺よりもうまいかもしれない。ちょっと、練習してきていい?って、いいわけないか。っと、そろそろかな・・・・?ナツキももう動き始めてるみたいだし・・・・。


「・・・・ん?」

「どうかしましたか?」

「いや・・・・」


水中から・・・・殺気?ナツキ、わざわざここまでしなくても。っていうか、殺気なんて普通気づかんだろう。・・・・ふと、シースさんの顔をのぞいてみる。ああ、やっぱりね。俺が思わせぶりな反応をしてしまったから、飛空船内の怖い話を思い出してしまったんだろう。ナツキからすると、この状況はすさまじく有利だと言うんだろうけど・・・・。


「まさか・・・・」

「いや・・・・ちょっとね」


少し安心させるため、声をかけとく。おっと、すこし、苦笑いしてしまった。ナツキのヤツ、どれだけ本腰入れてるんだ?まじで怖くなってきたぞ。トイレ行っとけばよかったな・・・・別に、漏らすわけじゃないけど。チビってないからな。・・・・本当だからな!


「一応、気を付けて」

「は」


「は」の後に続くはずの、「い」の言葉が聞こえなかった。代わりに聞こえたのは、大きな水音。圧倒的ないやな予感。横を向くと、そこにシ-スさんの姿はなかった。あったのは、波紋状に広がる水だけだった。


「な・・・・!?普通、ここまでするか!?くっそ、水中がよく見えねぇ!」


一歩間違えれば、命を落としかねないっていうのに・・・・ナツキの事だから、浮かれて加減できなかったのか?いや、ナツキはあれでいてちゃんとしてる。こんなことは・・・・。それにしても、これは最悪だ。何も、喋り始めに合わせて足を弾くことなかったのに。あの様子じゃあ、大量の水を飲んでしまっただろう。


「くそっ!」


勢いよく潜水する。すると、そこに広がっていたのは違和感。説明はできないけれど、何か違和感を感じる。細かいところで言うと、シースの足を引っ張っている人影の髪が、長すぎる。ナツキは、そこまで髪が長いわけではなかったはずだ。せいぜい、セミロングぐらいだったはず。それが、どうだろうか。その人影の髪は、2mに及ぶほどに長い。


『くそ、何だこれは!この・・・・どけ!』


シースの足首に絡みつく手を、勢いよく振り払う。わざわざ小道具まで使って、髪を長く見せるなんて。そのやる気は褒めよう。あと、俺の為にそこまで手の込んだことをしてくれたっていうのも、素直に喜ぼう。だけど・・・・なんでこんなに危ないことを・・・・!後で、問い詰めてやる。


『シース!?シース!』


返事がない。まずいな。早く、岸に上げないと!





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