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63話 やってきました今回の戦場、常夏の海

今日は五本投稿です。これは、四話目です。




「みて、ミルア、ディアナ」

「うわぁ」

「う~ん」

「海だよ!」


前回は一か月前だったという事もあり、少し肌寒かった。だけど、今は真夏。照りつける太陽は、クーラーでキンキンに冷えた私たちの肌を屈服させようと、容赦なく光線を放っている。北風さんは今日は居ないのかな?


「いやっほ~ぅ」

「ナツキはしゃぎすぎ!」

「やっぱり、海はあっつあつじゃないとね!」

「こら、ナツキ!準備運動をしてから入るんだぞ!」


遠くからリーナの声が聞こえてくる。そんなの、承知してる。足がつって溺れるなんて、最悪だからね。


「いっちに、さんっし!」

「おお、何か本格的なのね、ナツキは」

「そうよ!長い間万人に親しまれてきた準備運動だからねっ!」


ここまで言えば、解るかな?今私がやってるのは、国民的な準備体操、「ラジオ体操」だ。私は、ラジオ体操にだけは自信がある。体育の授業で、ラジオ体操を一から十まで暗記して、実際にやるという実技テストがあった。それで、私は唯一満点を取ったのだ。暗記するだけではなく、完璧に体操をこなした。姿勢も、何もかも。普段は厳しくてみんなから嫌われてる熱血教師が感動して5分くらいほめてたなぁ。


「私は知らないんだけどなぁ」

「まぁまぁ。気にしない気にしないっ」


どうやら、今回は勝負の前から決着はついたみたいだね。大陽さんの勝ちだ。なぜなら、強風が吹き荒れる前に準備運動を終えた訓練生が、一斉に服を脱ぎだしたから。もちろん、下にはちゃんと水着を着ている。しかしこれは・・・・中々。う~む。


「夏って素晴らしいものだったんだね・・・・!」

「なんか、ナツキ変態っぽいんだけど」

「いや、まったくもってその通りだねー」

「ディアナさんまで?」

「ディアナで良いわよ」

「ディアナまでそんなこと言うの?」

「だって、ほら。見てみなよー。この見渡す限りの大海!その手前の太陽光をまぶしく反射する砂場で戯れる女子たち!・・・・ほら、見てあそこー!『きゃっ!冷た~い!お返し!えいっ!』ハァハァ・・・・たまんねぇなおい」「ちょ、ディアナさんってそんなキャラだっけ!?」

「どうやら、話が通じる人がいたようだ」

「今まで見過ごしていたのが惜しいわねー。これからは、遠慮なく語り合えるわー!」


お互い鼻血を出しながら、ガッチリと固い握手を交わす。これで盟友の契は成された。今日から我らは盟友。同胞!おマジことを目的とし、同じことの為に協力する。


「もうやだ、この人ら・・・・」

「それはそうと、そろそろ海に入らない?」

「えー?私はもう少しここで眺めていたいんだけどなー」

「ごにょごにょごにょ」


ディアナが私に耳打ちで話してくる。なんて言ったって無駄だよ。私はここでまだ楽園を味わっておきた・・・・・・・・!


「!?」

「よし、早く海の中に入り行こうか!」

「そうだねー。せっかく海に来たんだし」

「ディアナ、ナツキに何言ったのよ・・・・」

「大したことは、言ってないよー?」

「そうだよ。せっかく海に来たんだから、泳がないと。教官もそう言ってたし」


そう、大したことは言われていない。そう。ただ、水中なら極端に近寄れるんじゃない?といわれただけ。つられてなんかないよ?本当だよ?せっかく海に来たんだから。そのほかに目的なんかないんだよ?・・・・ぐへへ。今は女子なんだから溺れるふりして抱き着いても大丈夫だよね?ぐへへへ。


「怪しい。怪しすぎる・・・・」

「早く来ないと、置いていくよー?」

「あ、ナツキちょっと待ってよー!」




~ゼルド視点~



(ナツキの言う通り飛行船の中で怖い話したけど・・・・本当に効き目あるのか・・・・?)


ナツキは絶対に効果あるって言ってたけど・・・・本当かな?コッソリと隣を歩くシースさんの表情をうかがってみる。


「こここ、ここ、なんか寒くない?」

「へ?あ、そうだね。まぁ、海が近いから少し涼しくはあるかも」


うーむ。む――――――――――――――――。・・・・めっちゃビビってる――――――――!!!ええ?そんなにビビるか、普通!?そういえば、ナツキがミルアのお墨付きだから大丈夫!とかなんとか言ってたな。まさか、シースさんってかなりの怖がりなのか?・・・・これは、ナツキの言う通りなのかもしれない。今頼れるのはナツキだけ。なら、思い切って信じてみるか。


「ちょっと、お腹すいたかな・・・・」

「ん?じゃあ、何か買ってくるよ。直ぐ戻ってくるから、日陰で待ってて」

「あ、ありがと」


普通、あまり会ったことのない男子に女子ってお腹すいたとか言わないと思うんだ。そんなに海に入るのが嫌なのかな?なんか、わるいことをしてしまったきぶんだ。さて・・・・何か買ってくるとは言ったものの、何を買ってくるか・・・・。ん?あれは・・・・


「おっちゃん、久しぶり」

「ん?・・・・おお!あの嬢ちゃんの連れの!変わってねぇなぁ。ま、一か月程度しかたってねぇから、当然っちゃあ当然か」

「おう。そういうおっちゃんは変わったな・・・・」

「そうか?あんまし変わった自覚はねぇんだけどな」

「いや、変わりすぎだろ!この店、どんだけでかくなってるんだ!?」

「ああ、そっちの事か。まぁな。嬢ちゃんのおかげってのもあるんだけどよ、最近シオヤキソバの売れ行きがすごくてな。あの日以来、飛ぶように売れておかげでこっちも丸儲けよ」

「にしても・・・・これは規格外だろ」

「そういや、今度王都に本店が出る予定なんだ」

「マジか!?」

「ああ。雇ったバイトが経営のノウハウに詳しい奴でな。手取り足取り教えてもらってるって感じよ。そのバイトには本店の方で俺の補佐を頼むことになってる」

「はぁー・・・・」


なんだか、現実味がないなぁ。まさか、一か月程度でここまで変わるとは・・・・爺くさいかもしれないけど、時がたつのは早いって、身をもって思い知らされる。


「せっかく王都に出るんだから、嬢ちゃんたちで食べに来なよ?」

「ああ。是非食べに行かせてもらうよ」

「ところで、今日はなんの用だい?」

「あ、そうだったな。シオヤキソバ二つ」

「ほぉ。幸せそうな顔しちまって。さては、これだな?」


おっちゃんは、『これ』というと、小指を立てて見せる。


「ばっ、違うよ!ただ、訓練仲間と一緒に慰安旅行に来ただけだ」

「ほーん。・・・・それだけだとは思えないがねぇ。ま、いいや。直ぐ作っちまうから、ちょいと、まってな」

「おーん」


でも、今回の事が旨く行ったら、そういうことになるんだよな・・・・。おっちゃん。全部知ってるわけじゃないと思うけど、なんだか覚悟が決まったよ。有難うな。


「へいお待ち!シオヤキソバ一つに普通の焼きそば一つね」

「あれ?俺、シオヤキソバ二つって言わなかったっけ?」

「ッカー!これだから最近の若いもんは!こっちの方が違う味ってのを盾にあーんができるだろうが!」

「て、天才かッ!?」

「うまくやれよー!」

「おーう!」

「・・・・これでいいんだよな、嬢ちゃん?」

「カンペキ」




「お待たせ。冷たい飲み物と食べ物。持ってきたよ」

「あ、ありがと。あっ」

「?どうしたの?」

「これ、聞いたことある。とてもおいしいって」

「結構話題になってたのか・・・・」


そういえば、あのおっちゃんナツキのおかげとかなんとか言ってたな。もしかして、ナツキが何か言ったんだろうか?まぁ、アイツの事だから、俺はもう何言われたって大して驚かないと思うけどね。


「じゃ、早速食べちゃおうか。冷めちゃっうともったいないから。」

「うん。・・・・おいしい!」

「うゎ!前回より美味しくなってる!」


そういえば、あの時は商品じゃなくってまだ試作品だったはず。朝一でナツキがどこかへ行ってたのと何か関係あるんだろうか?もしかして、おっちゃんにアドバイスしたとか?


「あ・・・・ごめん。買う味間違っちゃったみたい。悪いけど、そっちの少し分けてもらえないかな?」

「え・・・・あ、うん。え」


う、うおおおおおお!緊張するるるるる!目を閉じて口開けてみたけど、シースさんどんな表情してるのかな!?どうしよう、黙々と焼きそば食べてたら!?


「じゃ、あ、あーん」

「あー・・・・うん、おいしい!じゃ、俺のもどうぞ。はい、あーん」

「ん・・・・お、おいしい・・・・です」


何だこの可愛い生物は。くっそ!くそっ!今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、それをしてしまったら二度と顔を合わせられないことになるのは自明の理!今は耐え忍ぶのだ、ゼルド!今は耐え、ただ作戦が成功するように言動に気を気張り、策を練るのだ・・・・!


「あ、ディアナたち、海に入ってる。楽しそうだし、私たちもいこっか」

「そうしようか」


またもやナツキの言う通り。怖いことなんて、女子はお腹を満たせばどうでもよくなるか忘れちゃうって。アイツ、男のくせして何から何まで知り過ぎじゃないか?なんか、こわくなってくるな・・・・。




~ナツキ視点~




「ふぅ。焼きそば屋のおっちゃんも中々いい演技力じゃん。少しひやひやしたけど、ナイスだよ!」

「おお、そうかい」

「また後で買いに来るから、待っててねー」

「・・・・ナツキ、あの焼きそばのおじさんと知り合いなのー?」

「うん。ほら、泳ぎ強化合宿の話したでしょ?そのとき、焼きそばを食べたの」

「ああ~そういえばそうだったねー」


ディアナには協力してもらうためにすべての事を話してある。やっぱり、話しておいて正解だった。こっちの方がスムーズに話が進むし、説明につかれないで済む。


「だけど、いつの間にあんな大きくなってたのよ・・・・私、知らなかったんだけど」

「私は知ってたよ?おっちゃんも通信結晶を買ったらしくて、連絡とってたし」

「まじか・・・・」

「あ、それよりももう少しでゼルド達が海に入るみたいだよ?・・・・お待ちかね、ホラータァァァイム」

「何その口調」

「じゃ、私はし込み行ってくる」

「じゃ、私も。ディアナはそこで待ってて。ナツキ一人じゃ絶対やらかすから、私も行く」

「わかったよー?じゃ、ここで見てるからねー」



  

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