61話 特訓の成果、成果の発揮
今日は五本投稿です。これは二話目です。
「ゼルドさん......さっきの、本当ですか......?」
「うっそ」
「うわーお」
ゼルド君。【運がない鈍感系悲劇的主人公】この称号を君に送ろう。最近増えてきてたよね、こういう主人公がハーレムを築くラノベ。個人的には全然ありなんだけど、許せないって言う人が居るらしいから難しいよね。ん?リア充は爆発しろって思ってるんじゃないかって?そりゃそうだけど、......書き物だよ?実際にそんなハーレムが居たらブチブチにしてるけど、フィクションだよ?紙とか映像の中のキャラにまで嫉妬してモノに当たりだしたら、いよいよ救いようがないよね。余裕を持たないと。
その点、私の姉は『私はまだ大丈夫。私はまだ大丈夫。そう、大丈夫よ。きっと、平気。ちょっと運が悪いだけよ』と余裕の雰囲気を醸し出していた。さすが、私が敬愛する姉。......霞姉さん、俺が居なくなって心配してるかなぁ。
「シース......さん!?」
「本当......なんですか?」
「いや、それは......はい、事実です!」
「......っ!」
言い切った。ゼルドの隠すつもりもないという言い方を聞き、シースはどこかへ駆け出して行ってしまう。恐らく、これはゼルドとシースで考えていたことが違ったため起きてしまった、いわゆる......すれ違いと言うヤツだろう。ゼルドは、『ここでシースさんに気があるって言うのを匂わせておくか』と考えていて、シースは恐らく『さっきの本当かな?だったら、一体だれの為に?ゼルドさんはかっこいいから、多分私よりも綺麗な人なんだろうな』とでも思っていたのだろう。その結果、ゼルドはプラスになると考え、シースはマイナスに捉えてしまった。
「ナツキ......俺、もしかして間違っちゃった?」
「もしかしなくても間違っちゃったみたいだね」
「うぐっ」
「問題ないよ。多少の失敗は無効にできるくらいには、この一か月準備してきたから」
「......頼りになるっス、ナツキ先輩!」
残っている不確定要素と言えば、翌日の天候と海の荒れ具合だ。そればかりは、私にもどうしようもできないからね。神頼みするしかないね。
「任せてよ」
私の勘と経験が言っている。間違いなく、ゼルドは成功する。ネタ系ラノベや漫画みたいに、最後にやらかして失敗なんて、絶対させない。ネタみたいに現実には次はない。今回で、完全に、完璧に決めさせてもらう。
「マジで感謝してる。成否に関わらず、ありがとうな」
「縁起でもないこと言うなよ。絶対に成功させる。そうだろ」
「......ああ。絶対に、振り向かせてやる!」
正直、さっきのシースの反応を見ていれば分かりそうなものなんだけど。もう既に振り返る段階は過ぎて、見つめあってるって事に何で気付かないのかな?でも、私の前世の時も気づかなかったか。自分に向けられる好意って何かの間違いだと思っちゃうんだよね。
「明日、いよいよ本番」
「気を引き締めて、絶対に......」
「「成功させよう!!!」」
「解ってるよね?」
「ああ......」
作戦、当日。今私たちが居るのは、飛空船発着場だ。何台もの馬車に分かれて進んできた訓練生は、もう全員集まっている。
「わざわざ根回しまでしてやったんだから、必ずゲットしてよ?」
「もちろんだ。問題は、この座席チケットがほぼ形だけになってるという事実」
そう、今ゼルドがどや顔をして握っているのは、飛空船のチケットだ。それは、全ての事情を話したディアナから譲ってもらったものだ。私が。ゼルドがなぜかどや顔をしているが、私が頭を下げてもらってきたのだ。まぁ、それは置いておいて。チケットは手に入れているなら、何をゲットするんだ?とおもってるかもしれない。
実は、ゼルドの言う通り座席チケットと言うのは形だけなのだ。どういう意味なのかと言うと、運航の都合上、飛空船は乗ってすぐ離陸しなければいけないらしく、チケットと座席を照らし合わせて座っている場合なんてないらしい。乗ってすぐ、空いてる席に座らないと、ひっくり返ってけがをしてしまうとか。なので、座席チケット通りの席に座らなくても良いという事が、暗黙の了解になってしまっているのだ。
「もうシースは並んでるから......そうだね、あと一分したら並び始めて」
「何で一分?」
「乗ったら分かるよ」
首をかしげながらも、従ってくれるようだ。一分経ち、ゼルドが並び始める。うむ。良い判断だ。
「私たちも行こうか」
「そうだね」
「リーナは私たちと一緒に並んでていいの?」
「私は今回の旅行の監督兼教官だからな。全員を見やすい場所を取ってもらっている」
並ばなくても空いてるっていう事か。凄いな。
「あ、列が進みだしたよ」
「そろそろ出発できるみたいだね」
「二回目とはいえ、少し緊張する」
「だよね」
私は前世で飛行機には乗ったことがある。結構な数乗ったはずだ。全部エコノミーだけど。でも、飛空船には一回も乗ったことがない。一か月前のゼルドにおごってもらったのが初めて。だから、まだ微妙に緊張してる。
「うわっ、やっぱり飛空船の中は冷房利いてるねぇ」
「だよね」
冷房はキンキンに冷えていてとても快適なんだけど、周りの乗客が慌てて席を確保しようとどたばたと動き回っているため、冷房の冷却が間に合っていなく、結局暑い。たぶん、あと五分くらいは暑いままだろう。
「ちょ、そこ私たちの席......!」
「ミルア、別に無理しなくても」
「こういう事は守らなくちゃいけないって教育されてきたのよ!」
「確かに、正しいけどさぁ」
「うるさいわね!ちょっと、周りの人をかき分けるの手伝ってよ!」
「はいはい、解ったよ」
私たちの席に座ろうとしていた人たちも、どいてくれて、無事席を確保することができた。私たちの席に座ろうとしていた人たちも、無事に席を発見できたようだ。これで、席が取れずに怪我されて、私たちのせいだとか言われても、困っちゃうからね。
「あ、見てみて、ミルア」
「ん?安全ベルト付けてから......よし。で、なに?」
「ゼルド、無事に席確保できたみたいだよ」
「おぉ!中々やるじゃない!シース、あんなに顔を赤くしちゃって」
「それは、ゼルドも一緒でしょ」
「本当だ」
赤くなっているゼルドとシースを見て、くすくすと笑う私たち。自分と同じ年齢の子が恋愛している最中って言う事実が、どうしてもむず痒い。だけど、どこか心が躍る。それは、ゼルド達の恋に私たちが介入しているからなのか、それとも、ゼルドを見た私たちの心にも、何か期待めいたものが生まれたからなのか。
「うちのシースは可愛いでしょー?」
「わっ」
「あ、ディアナ」
ブラウンの、少しウェーブがかかった長髪の女の子。目は濃いブラウン、身長は高めで肌は色白。シースといつも一緒にいる、ディアナだ。今回、チケットを譲ってもらっただけでなく、他にもいろいろと協力してくれるらしい。ありがたい。
「あの顔を見れただけでも、チケットを譲った甲斐があったわー」
「そうだね。控えめに言って最高。......うちのゼルドはどう?シースを預けるにふさわしいかな?」
「まだ解らないかな~。見た感じ誠実そう。まじめで、結構信頼のおけそうな感じねー。でも、それでいてどこか悪戯めいたものがある」
......驚いた。まさか、そこまで分かっているとは。ディアナは、ゼルドとはまだ一度も話したことがないはずだ。なのに、ここまで。観察してたかもしれないとはいえ、直接話さなくてもこの程度わかっちゃうんだ。
「つまり......」
「シースを預けるに値するかどうかは、これから......海での振る舞で評価する、かなー」
「なるほど。でも、私たちも一か月間遊んでたわけじゃないよ。友人のためには努力は惜しまないからね」
「へぇ意外ねぇ」
「......なにが?」
うん、嫌な予感がする。また、この感じか。へぇの後に続く言葉は、大抵ろくでもないことが多い。もちろん、逆に良いこともある。『へぇ。怖い人なのかなって思ってたけど、意外と優しいのね』とか。でも、大抵はそんなことない。悪いことばかりなのである......こんな風に。
「ナツキは、ゼルドのことが好きなのかと思ってたー」
「ぶふぅっ!?なんてことをいうの!?」
「あ、やっぱりそう思うわよね」
「あ、ミルアーデさんもそう思ってたー?」
「ミルアで良いわよ。やっぱり、そう見えるわよねぇ」
「気味の悪いことを言わないでよ。アイツとは、ただの友達だよ」
「でも、常に一緒にいるじゃない」
「そんなこと言ったら、ミルアも含めた三人だから、ミルアも怪しいって事になるよ」
「ええ?」
「ミルアは、ゼルドのことどう思ってるの?」
「......う~ん、イジられ要員?」
「それだよ、それそれ!」
「......アンタたち、軽く最悪ねー」
本人のいないところでもいじられちゃう。もしかしたら、それが真のイジられ要因なのかもしれない。それを考えると、ゼルドは真なるイジられ要因なのか。後で拝んどこうかな。やっぱやめよう。いじられるようになりそう。




