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5話 骨折で死ぬって、冗談じゃないんだぜ。





「では、貴方様は宿にて籠っていてください。」

「アンタは?」

「私は少し行ってまいります宿の中でもフードを被り、大人しくしていてください。」

「了解。」

「コイツとともに静かにしていてください。正体がバレれば、殺されるものと思ってください。」

「解った。......コイツと?」

「......な!?ちょっと待ってくれ!私も連れていけ!」

「駄目だ。この方を護るものが居なくては、仕方ないだろう。それと、宿に行く前にこの方に装備を一式買って差し上げなければならん。それに、お前は隠密には向かないだろう。」


「それでも......!」


おいおいおい。なんだその反応は。アレか?俺と一緒にいるくらいなら、見張りに見つかって乱闘騒ぎになった方がマシってか。ふざけんなよテメー。


「良いのか?......装備一式というと、それなりの値になるはずだが......」

「フン。いまさら何を言っている。国宝級の秘薬をのむお前が、装備にかかる金を心配するなんて。」


確かにそれもそうだけど、仕方ないじゃん。国宝級の秘薬をのむなんて、まだ実感がわいてないんだから。それに、俺はそんなマジカルなアイテムにお目にかかったことがない。......とうぜんか。おれは魔法とは無縁の、地球に生まれたんだから。


「......あまり動かないようにしてください。騒ぎが起こると、対応が難しいですから」

「......もう腕は動かないよ。」

「治療が出来るようにしますので、しばしお待ちを。」

「了解。」

「......では、解散しますぞ。くれぐれも、ご注意ください。」


シュ......ッ


返事をする前に消えてしまった。......それにしても。


「おお、すげえな。」

「いずれお前にもできるようにしてもらうぞ。」

「......ワクワクするな。」

「ワクワク......か。お前はすごいな。」


なんだなんだ。説教タイムか?確かに、あれも平たく言えば殺人術の一つなんだろう。だから、そんなものを覚えるのに浮ついた気持ちはいかんという話なんだろ?」


「あっと言う間にあの方に気に入られて、計り知れぬ価値を持つ秘薬を調達してくれるようにまで取り入るとは。」

「......はっ。咄嗟にでたことだよ。あの時、飄々とした態度をとってお前が困惑していなければ、止めに入るあの人が間に合わないで俺は首がなかっただろう。」

「......首までは取らなくとも、左足か左腕は斬り落としていたかもな。そうか。お前は記憶がなかったから、あの私の言ったことに対する復唱はハッタリだったのか。」

「そうだ。俺は、正直泣きそうだったよ。でもあれかもな。左腕が折れて、痛過ぎてどうでも良くなって思い切った態度をとったから今ここに俺がいるのかもな。」


そうだ。あの時俺は、本当に首が刎ねられて死んでもいいと思っていた。あの時、まさかあの人が割って入ってくるなんて思ってもいなかったから。......本当は、今俺はここに立っていないはずだった。


「......でも、お前はすごい。もう私でさえ認めているのだから。こんな短い時間で、普通なら魔族の兵士仲間も打ち解けないさ。」

「ああ。でも、悪口言い合っていた方が仲良くなれるってのはあるからな。軽口を言いあう仲ってやつだ。」


これは実際にデータがあることだからな。大人しい性格と大人しい性格よりも、大人しい性格と荒い性格のやつよりも、荒い性格と荒い性格。この組み合わせが一番仲が良くなるのが早かった。......成人のデータだから、酒っていうのもあるかもしれないけどな。......あ、これ同性同士のデータか。じゃあ関係ないな。


「実際、俺はお前に好意をすら抱いている。」

「......こ、こ!?お、お前は何を言っているんだ!?」


俺の中では、すでに仲間みたいなもんだからな。すでにこいつを護ってあげたいっていう気持ちが俺の中にできつつある。


「......お、オホン。さて、と。そろそろ装備を買いに行くとしよう。お前は大人しくしていろよ?」

「確約は出来ない。」

「......な!?お前、今どういう状況か理解しているのか!?」

「ああ、理解わかってるさ。でもな、冗談かと思ってたかもしれないけどさ、マジでこの腕、死ぬほど痛いんだよ。だから、俺は首を刎ねられても別にいいって思ってるし、刎ねられたらお前は関係ないふりをしろ。」

「そ、そんなことは......」


死ぬほど痛いっていったけど、大げさだと思うか?だがな、俺は聞いたことがあるんだよ。イラついてデカい金庫を蹴飛ばしたら足を複雑骨折して、傷口からバイ菌が入って衰弱死した人。まさしく死ぬほど痛かったわけだ。......いやだ!そんな死に方するくらいなら、首を刎ねられた方が良い!そっちの方が良い!......まぁ、裏を返せば骨折だけで死ぬことがあるってことだ。確かに、日常でも骨を折るのは普通だ。真剣に部活などに取り組んでいれば、骨折なんて二、三人普通に出る。だが。現代には整形外科という病院がある。骨折でもちゃんと治療すれば、しっかり治る。だが、ここは俺が居た世界ではない。


「大体、こんな腕の怪我くらい普通だぞ?......でもお前は記憶がないんだったな。」

「普通てお前あれだろ?魔法を使った治療師とかいるんだろ?そもそも、俺は魔法の治療は受けたことが無いんだ。魔法の治療はわかる。でも、辺境の場所はどうする。どうせ、辺境にはいないんだろ?治療師。」

「......お前本当に記憶を失っているのか?」

「ああ。当然だ。でも、これくらいは普通だろ?」

「......普通に考えられることではないと思うのだが。たしかに、辺境の地には治療師はいない。治療師は貴重な人材で、数も少ないからな。だが、辺境には薬師が居る。薬草などで、傷口や病気を治療する職だ。お前が今回飲むことになった秘薬も薬師が作ったのと同じようなもんだ。」

「同じようなもんってなぁ......。どうせ、薬学と魔法学を合わせて作った秘薬なんだろ?」

「......しつこいようだが、お前、本当に記憶が無いんだよな?まぁ、記憶があっても庶民がこんなこと知っているはずがないのだが。」


ふ。このくらい、誰にだって想像がつくってもんだ。だがあれだな。俺が今まで優等生してこれたのは発想力と記憶力のお陰かもな。なまじ知識があるものよりも、発想が豊かなものの方が厄介だって言うしな。


「だから言ったろ?俺は、この魔王国を救うために派遣されたってな。まぁ、自覚は無いが。だって、記憶ないんだもん。」

「適当言っていたのか......」

「忘れるな。普段から自分のいう事には些細なことでも嘘を織り交ぜていけ。でないと重要な時に嘘に慣れていなくてひどい目見るぞ。」


俺は.........特に酷い目見たことは無いけど、この世界は危険だ。いつ何が起こるかわかったもんじゃない。なら、備えておくことは悪いことじゃないだろう。


「偽りを......話の中に織り交ぜろと。」

「そうだ。この人物は、どの程度なら信じるかっていうのもな。実際お前は半信半疑ながらも忘れかけていただろ?それは、無意識のうちに納得してその問題を片付けちまったからだ。まぁ、本当に仲良くしたいやつには偽りは控えておけ。」

「お前は私とは仲良くなりたくないのか......?」

「なにかいったか?」

「なんでも......ない。」

「そうか......?」


なんなんだ?もしかして、なんか怒らせちゃったかな?まぁいい。さて、異世界転移、転生の醍醐味、初めての装備選びだ!







仲良くなるデータのことは適当ですが、金庫をけって亡くなった方に関しては事実です。......ふつう逆っぽいんですけどね。

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