58話 記憶処理はお任せください
最近更新していなかったからか、サブタイのネーミングセンスが壊滅的な気がする。
ま、まあ、有名で人気がある小説は○○話とか書かないことも多いし、問題ないよねぇ!?
有名でも人気でもないんだよなぁ・・・・。
『ちょ、リーナ!さすがに、それはまずいんじゃ』
『......つい』
『うわぁ。白目向いてガクガク震えてますよ』
『むぅ。だが、ナツキも同じような状態になったことあるし、平気じゃないか?』
『ああ、あったねそんなことも。あのとき、じいさんが魔物のフンを口に入れられたこと、忘れてないから。いつか、絶対復讐する』
『じいさん......?っていうか、ナツキそんな目にあってたんだ。濃厚な人生送ってるのね......』
ああ、なんかナツキ達が話してる声が聞こえるな。そういえば、ナツキも同じような目にあったことがあるんだっけ?ナツキの時は説明不足だったらしいけど、俺は予想通り『ついうっかり』だ。こんなんでしんだら、多分、未練が残って成仏できないな。
『......なんか、ガクガク震えてて気持ち悪いですね』
『不謹慎だが激しく同意』
『沈めますか?』
『女子露天風呂を上から覗こうとしたとき、バランスを崩して後頭部を強打。脳内出血を引き起こして、誰に見つかることも無く、死亡入浴中の事故......か』
ちょ、何を物騒な話をしてるんです?あ、本格的にまずいかもしれない。声も、ぼやけて聞こえなくなってきた。いやだ。まだ死にたくない。せめて、部屋にあるR-18な本を捨てるまでは。こんなところで死ぬくらいなら、せめて思いを伝えてから死にたかったな......待ってくれ。行かないでくれ。消えないでくれ。まだ、まだ死にたく......こんな、くだらない理由で死にたく......あ、ああ。ああ――――――――・・・
「うっ、うぅ~ん。あれ?おれ、昨日いつの間に寝てたんだ?」
「あ、起きたんだ」
ゼルドの様子を見に来たら、丁度目を覚ましたようだ。体調的には問題ないようだけど、なにか妙なことをつぶやいてる。
「どうかしたの?」
「それが、昨日寝た覚えがないんだが。それに、トランプからの記憶が全くなくて......ナツキ、お前何か知らないか?」
......これは、おどろいた。リーナが言っていたことは本当だったのか。
『ミルア、ナツキ。安心しろ。私は、様々な武術を身に着けていてだな。その中には、記憶の消せる殴り方という物もあるんだ。ほら、こうやって!殴れば!消えるはず!』
『あの、リーナ?ほんとうに、それ習得したの?』
『いや、聞いただけだ。実際は見たことも無いし、本当かもわからん』
『え!?それって、危険なんじゃ』
『聞いたところによると、恨みを込めるのが有効らしい』
『絶対嘘だ!?それ、絶対殴る理由をこじつけるために適当に言ったことだよ!』
『私も、やめた方が良いと思います!』
『この!この野郎!私は同性以外に裸を見せたことがなかったんだぞ!』
『ちょ、リーナ!ゼルド死んじゃう!死んじゃうって!』
......昨日のリーナ達とのやり取りを思い出す。まさか、本当に記憶が消えるとは。まぁ、そうだよね。圧倒的にレベル差が開いてる相手を何度も殴るわけないもんね。安全に、記憶だけが飛ぶようにやったんだよね。流石リーナ!人間業とは思えない!......狙ってやったんだよね?
「う~ん......知らない方がいいんじゃないかな?」
「なんだそれ。まぁいいや。今日はやるんだよな?」
「もちろん」
どうやら、記憶がない間の話を聞くより、本来の目的をこなした方が良いと判断したようだ。助かった。うむ。賢明な判断と言えるね。ゼルドも、もう一度ボコボコにされたくはないでしょ。うん。
「じゃ、ご飯食べたら海にきてね」
「ああ、すぐ行く。あーやな予感がする。また、やっちまったのかなぁ......」
「と、いうことでゼルド君。この状況、なにか思う事はあるかい?」
「いや、特に何も気づかないけど......さっきから俺と目を合わせないリーナベルド教官とミルアーデさんがちょっと気になるな」
「うむ。私の求めていたものとはちょっと違ったけど、良いでしょう。その後ろめたそうな視線は、ゼルドの消えた記憶に関係する」
「え!?俺の昨日の記憶に何か関係するのか!?」
そこで、ゼルドを手招きしてミルアとリーナから少し離す。二人から離れたところで、ゼルドの耳に近づき、囁く。
「実は昨日、私たちとゼルドはほぼ同じタイミングで性別ごとに分かれた風呂に入ったんだよ。もちろん、平和に風呂に浸かっていたんだけど......そこに、他のお客に持ってこられた酒が来てね。それを間違って飲んだゼルドが暴走しちゃって。なにがどう......ナニがどう暴走したかは省くけど、女性陣にとっては見たくない物を見せられることになったとだけ言っておこう」
「そう......か。記憶がない所を見るに、そんなことだろうかと思ったよ」
「あ、記憶がないのはリーナが殴ったせいだと思うよ」
「あ、そう。......とにかく、俺は幼少の時同じようなことがあって以来度数の高い酒にはトラウマがあったんだ。それなのに、こんな醜態を。やはり、俺は度数の高い酒は辞めた方がいいな。アレも、ただの水かと思ったんだけどな」
「まぁ、仕方ないよ」
なんか、三秒で作った作り話が偶然正解(?)を引き当てたみたいだ。たしかに、焼きそばの時にも言ってたけど、幼少のころ同じような事......?もしかして、それがもとで里を追い出されたんじゃ......まさか。そんなわけないよね。まさかね。
「二人の所に戻ろうか」
「ああ」
「二人でコソコソと何を話していたんだ?」
「ああ、昨日の事。詳しくは言ってないから安心して」
「そうか」
「なるほどね。ナツキらしい」
それだけで、二人は私が言わんとすることを理解できたらしい。流石、私の自慢の親友たちだ。
「昨日は......本当にすみませんでした!」
「過ぎたことだ。......あまり、掘り返されると困る」
本当に困ったように、悲しそうな顔をするリーナ。ミルアも、それに同調してうつむく。それにしても、女の人は何処でこういう芸当を覚えてくるんだろう......?最近は、ようやく私にも少しだけ出来るようになってきたというのに。特訓して少しだけ。リーナ達は特訓もしてないだろうに、何でそこまで出来るんだ?
「すみません」
「......とにかく!ゼルド君。君は泳ぎが出来ないと聞いたぞ!」
「......ハイッ!」
「バカタレェ!そんなんじゃ、泳げない彼女に泳ぎを教えるという素敵イベントを取り逃がすことになるんだぞ!?」
「......!シースさんは泳げないのですか!?たしかに、そんな雰囲気だけど!」
「あ、言ってやろ」
「止めてください!!」
「とにかく、君が泳ぎを教えてやれば、少なからず感謝の念を抱くわけだ。しかも、わざと訓練と称して水深の深いところに行けば、ドキドキして急接近!と言うワケだ」
「お、おお!!!つり橋効果ってヤツですね!?」
「でも、それだけじゃ、あまり効果ないんじゃ」
つり橋効果ってこっちでもあったんだ。なんだ、てっきりないのかと思ってたけど。これで、この世界に私以外にも転生者がいるって事がほぼ確定したって事だね。
「そう!その通りだよ、ミルアーデ女史!教えてもらっただけで惚れてたら、教師は一番の人気な職業になってるだろうからね!......だけど、それだけじゃない。そこそこ水に慣れてきたけど、まだ深い所へ行くには心の準備が......という時に、深い所に連れて行くんだ。そして......私が海中から足を引っ張る!すると、前もって教えておいた幽霊のことを信じたシースは怯えてパニックになるワケだけど、ゼルドが勇敢にも助け出す」
「おお!」
「当然、追い払ったとはいえ、シースは幽霊に呪われたかもしれないとか怯えるでしょう。そこを、ゼルドが抱きしめて落ち着かせて護ってあげる!!!!ついでに『大丈夫、落ち着いて。俺が、そばで守っててあげるから』なぁんて言ってあげたら、夢見がちなシースなら一発で落ちるッ!!!!間違いないッ!あ、付き合った後のことは知らないから、自分で頑張ってね」
「そんなうまくいくか......?」
「シースをよく知ってる目線から意見を言わせてもらうけど、確かにこれは効果的かも。シースは、お化けとかを本気で信じてるから」
リア充になるまでの過程なら応援するけど、基本的に私はリア充がキライだ。滅びればいいとさえ思っている。だから、付き合った後のリア充なんて、目の毒なのだ。突きあうなり抱き合うなりなんなり、勝手にしてください。
『クエスト、行くの?』
『ああ。これからはたくさん稼がなきゃならないからな』
『でも、体には気を付けてよ』
『お前のためなら、体くらいどうなっても構わないよ』
『も、もう///』
なんて会話を目の前でされた日には、顔面をぶん殴ったうえで五月雨斬りをぶち込んだ上に、魔物にやられたように偽装して森の中に隠すかも。安心して。起き上がらないように念入りに刻むから。.........でも、そんなこと言って知り合いが幸せになったらすごい喜んじゃうんだろうな。自分の事じゃないのに、なぜだかすっごいテンション上がっちゃうんだろうなぁ。
「もちろん、付き合った後は任せておけよ。さすがに、そこまでナツキ達に頼るわけには行かないだろ」
あ、本当に?それなら、面倒が無くって言いな。友達とはいえ、他人の人生を勝手に決めるわけには行かないからね。人生って言うのは、結局のところ自分で決めなきゃならないわけで。よくも知らない二人の関係に口を出して台無しにするわけには行かないから。




