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57話 露天風呂って言ったら......分かるよねぇ?

お風呂でテンプレと言ったら?当然、解りますよねぇ?答えは一つ。結末も、一つ。



本編参りましょう




「こっちかな?それとも、こっち......?」

「......どうだろうな」

「......こっちだ!よっし!」

「くぁぁぁぁぁん!何でこんなにトランプが強いのだ!?もしかして、これを作ったのはお前か!?ナツキ!」

「んなわけないでしょ」

「でも、私も一回も勝ったことないんですよ」

「俺も......トランプでは勝ったことないなぁ。化け物かよ」

「そんなこと言ったら、リーナだって十分化物じゃん。チェスで一回も勝ったことないよ」

「確かに、あの強さは異常だな」

「私も、教官に負けてジュース買いに行かされたことある」


皆負けたことあるのかぁ。やっぱり、私よりもリーナの方が化物じゃん。あのチェスの強さは本当に異次元って言っても良いほどだからなぁ。一回も勝てないうえに、いつの間にか思い通りに動かされてたりするから......チェスは指揮の練習になるとか聞いたことあるような気がするけど、だとしたらリーナは元から隊長の素質があったのかも。


「ふぅーっ。じゃあ、そろそろお風呂行こうか」

「そうすっか。じゃ、行ってきまーっす」

「じゃ、私も行くか」

「私も行きまーす」


ここのお風呂は、温泉になっている。と言っても、天然の温泉というわけではなく、水を沸かせているだけだ。だけど、露店風呂になっているため、眺めは最高。月に照らされてる海面が輝いて、とても幻想的らしい。もちろん、ラノベじゃあるまいし混浴なんてことはない。


「あ、私は後で良いや」

「何やってんの、ナツキも来なさい」

「ちょっ!」

「いまさら、恥ずかしがる仲じゃないでしょ!」

「リーナ!たしゅけてリーナ!」

「まぁ、良いんじゃないか?」


なんで!?私、今は分けあって女になってるけど、元々は男だよ!?ちょ、何でそれを知ってるはずのリーナさんまでいいんじゃないかとか言っちゃってるんですかちょっと待ってくださいよ!別に裸を見せ合う事に関して恥ずかしいって言ってるんじゃなくて、女子の裸を見てしまってる状況をリーナに知られることが嫌なんですよ!!!!


「い~や~!助けて~攫われる~!!」

「こら。他のお客に本当に勘違いされたらどうするつもりだ」

「ナツキ、何暴れてるの?いっしょに体流しっこしたこともあるじゃない」

「ちょっ......!」

「......ほぅ。そうなのか」

「ちがっ」

「違うのか?」

「ちがっ......くはないけど」


別に知られたところでって言う話なんだけど、何となく気恥ずかしいものがあるというかなんというか。元男が女の子と一緒にお風呂に入るのは倫理的にまずいんじゃないのかって言うかなんというか。......ピカーン!頭の中に、光のついた電球が思い浮かぶ。閃いた。


「自分の体に自信がなくて」

「いやだから一緒にシャワー入ったことあるじゃん」


ですよねー。そもそも、ミルアよりも私の方が胸......おっと、これ以上はマズイ。


「でも、三人一緒だとなんていうか、恥ずかしいって言うか。......恥ずかしいじゃん」

「全然気にしてなかったのに、ナツキがしつこく言うせいで、恥ずかしくなってきちゃったじゃん」

「なんだか、この状況で三人一緒に入ると気まずいな。......そうだ!」




「ふぅーっ。一日の疲れが取れるようだ」

「ですねー」

「だねー」


ああー、きもちいいー。やっぱり、お風呂は毎日入らないとねー。入らないと、一日の終わり、お疲れ様!って感じが無くて、なんか疲れが取れないような気がするんだよね。


「綺麗だな」

「ですね」

「幻想的」


海面に映る、月。だけど、海面には波が静かに立っていて、水に映る月が揺れているのもまたいい。こうして、暗い所で月あかりを見てみると、とっても明るいのが良く分かる。ここでなら、月の明かりで本を読むことも出来そう。


「で、ナツキ。恥ずかしくないだろ?」

「だね」


ここの温泉が、タオルを巻いたままでの入浴を許可していることが幸いだった。そうすれば、ミルアとリーナの裸を見ることも無いし、恥ずかしいことも無い。素晴らしきかな、バスタオル。


「風情があるなぁ」

「あ、ナツキ、あれみて!イルカが跳ねたよ!」

「え、どこどこ!?」

「おお、アレは神秘的だな」

「あ、本当だ!」


海面から飛んだイルカが数匹跳ねる。何度か連続して飛んで、海の中に潜っていった。月の光を浴びて飛ぶイルカの姿は、まさに魔法的というか、神秘的というか。どこか、この世のものではないような美しさがあった。





「ふぅーっ良い湯だな。」


こうやってゆっくり湯につかるのも、久しぶりだな。俺はあまり風呂が得意じゃないからな。パッと入ってパッと出るのが俺の風呂の入り方だ。だけど......


「やはり、アレだな。露天風呂だと違うな。潮風が心地よく涼しいうえに、暖かい湯でいつまでも入っていられそうだ。しかも、この絶景。海と月。水面に映る丸い月。どれをとっても素晴らしいな」


ん?何で独り言をこんなに言ってるのかって?それはね、それはな。逆になんでだと思う?逆に、なんで俺がこんなに独り言を言ってると思う?ヒントは、この宿の構造。


『あっはははは!それっ!』

『わふっ!?つ、冷たいぞ!』

『ちょ、ナツキ!心臓止まっちゃうから』


何が起こってるか、理解しただろ?そう、この男性用の露天風呂の隣には、隣接する形で女性用露天風呂がある。話も丸聞こえだ。そう、俺は自分で言うのもなんだが、思春期だ。いや、思春期というより青春期と言うべきか?ともかく、この年頃の男は想像力が豊かだ。だから、その溢れ出る邪念(もうそう)を抑え込もうと、景色と独り言に集中してるのだ。


「しっかし、四人で来てるのに一人だけでふろに入るというのは、いささか寂しいものがあるな。......あの竹垣に寄っかかって、事故を装って隣に突入するか?」


この露天風呂、実は女性用の露天風呂と男性用露天風呂を仕切る壁がない。あるのは、頼りない竹垣......というか、竹でできた柵だけ。体重をかけたら、今にも倒れそうではある。なら。


「いや、ダメだろ。何を考えてるんだ、俺は」


危ねえ。湯で頭がのぼせたせいで、良く分からんことを口走っていた。そうだ。よく考えろ。もし、事故だとしても、リーナベルド教官は怒るだろう。その時、ついカッとして俺の首がどこかへ行くなんてことになったら、悲惨どころの話じゃない。あの人、レベルなんあるんだろうな。


「いやでも、覗くぐらいは良いんじゃないか?そうだよ。今日だって、俺が飛空船代全額出したんだぞ。なのに、みんな遊びまくって......許せん!むしろ、ここで覗かなかったら自分のことを赦せん!」


ちょっとだけなら、ね?良いよね?そんなことを考えながら、竹垣......のような柵へ近づいていく。おお、同士よ。俺と同じことを実行しようとした勇者が居たようだ。竹垣には、直径二センチほどの穴が開いていた。


「同士よ。夢を果たした君に続くぞ」


竹垣が血で染まっていないという事は、この穴をあけた人物は覗きに成功したという事だ。その、夢をかなえた先人の知恵を生かし、偉人へと俺も続く。偉人の背中を追って、俺は......!


パタン


「は」


「え」

「あ"?」

「なぁッ!?」


目の前に広がる、湯気。男性用よりも結構広めな浴槽。綺麗な月明かり。波の音。風の音。潮風の香り。ほんのりと感じる潮の味。すべてが、すべてが一瞬のうちに認識の外へと消えた。目の前に広がる圧倒的な肌色。そして、褐色の肌。双丘。赤い顔。シュンッという不思議な音と、視界から消える、褐色。


(あーあ。さようなら、俺の首。いや、さようなら胴体かな?......どっちでもいいよ)


最後にそんなどうでもいいことを考え、ゼルドラドの意識は闇へと誘われた。




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