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56話 失敗しちゃったです?じゃあ、二日目しっかりやりましょう!




「「「あ――――――――」」」


やばい。かんっぜんに忘れてた。そういえば、これってゼルドの恋愛相談で開かれた集まりじゃん。しかも、ここに来るまでの代金も全部ゼルド持ちだ......しかもしかも、もう夕暮れじゃん。


「......う」

「う?」

「うわぁぁぁぁん!」

「きもちわるっ!じゃなくて、落ち着いてゼルド!」

「そんなこと言ったって、どうしようどうしようどうしようどうしよう!もう、全然時間ないじゃん!」

「ちょ、うるせっ!あと、二日はある!二日間宿予約しといたから!」

「想像以上に手際が良い!?」

「ふっ。今は魔石通信機の時代なんだよ、ゼルド」

「めちゃめちゃ高いのにもってたのか、お前!確か40万アルディアくらいしたんじゃ......」

「う~ん。持ち運びタイプだから、100万はするかなぁ。」

「ひゃ、100!?どうやってそんな大金を......」

「臨時収入があってね。これからやることに、必須だと思ったからさ」


涙をぬぐったゼルドは、興奮気味に私に質問する。ガーツィさんと話した通り、ここ二年ほどで急激に魔石技術が急発達している。その二年間の間で、魔石通信機という物も発明されたらしい。二年前に発表されたため、一般人はほとんど持っていないけど、大きな商会や旅館、貴族や商人はもってて当たり前だ。遠くの人と好きな時好きなだけ(魔力が尽きるまで)話せるなんて、聞いただけでも利便性が分かる。そのため、発売直後から注文が殺到したらしい。しっかし、まさかこの世界にも電話のようなものがあるとは......おどろきだ。


「臨時収入って......まさか、また鉱石を掘り起こして売りさばいてるんじゃないだろうな」

「まさか!そんなことはしないよ」

「なんだ。ナツキの事だから、また何か悪い方法で稼いだんじゃないかと思っちゃったよ」

「まぁさかぁ」


まぁ、法には触れないけど実際やってることは危ないよね。私たちには、実際には今のところ大きな後ろ盾がない。だから、大手の商会の人が潰そうと思えば、強風にさらされた蝋燭の火のように簡単に消えちゃうと思う。しかも、あいてはこのクリピ関係の商売で急成長してきたギルデオン商会。急成長してきた商会だ。もし、私たちが一気に大規模な商売を始めようとすれば、意地でも居残りたいギルデオン商会は、何でもするだろう。例えば、クリピを運ぶ馬車が盗賊に何度も襲われたりとか......ね。


「身の危険はどんどん増えるだろうけど、法には触れないから大丈夫だよ」

「それって、大丈夫じゃないだろ。っていうか、相手が法に触れることをしてくる稼ぎ方って一体......?」

「おそらく、『見つからなければ犯罪じゃない』って考え方なんでしょ」

「違う商会の人から聞いた話によると、ギルデオン商会は何でもやるって。命が惜しい商人は、好き好んで近寄るようなことはしないって。本当だとしたら、怖いわね」

「まぁ、そうだろうな。衛兵詰め所にも、ギルデオン商会関連での通報が結構あるらしいしな」

「調べといてくれたんだ」

「まぁな。ナツキの頼みとあらば、出来ることは聞いてやるさ」


やっぱり、知り合いに隊長殿が居ると、頼りになるなぁ。さすがは、精鋭ぞろいの第三魔法騎士部隊隊長様だ。魔法も一流、剣技も一流。そんな、聞いただけで態度がデカくなってそうなやつらをまとめ上げる隊長、リーナ。そんな人に気をかけてもらえてるなんて、私は幸せ者だ。


「結局のところ、収入源はなんなんだよ。さっきから、きな臭い話ばかりで、全然分からないぞ」

「あー......詳しくは言えないんだけど、商売を始めたの。ある植物を栽培して、販売はちがう商会の人たちにお願いする。私たちは、利益の八割を手にする」

「八割......おおくね?」

「それだけ、美味しい商売だからね。それに、栽培法は今のところギルデオン商会と私たちしか知らない。しかも、ギルデオンと私たちは栽培方法が違うしね」

「希少性が高い......『私たち以外にこの商品を栽培できる人はいないから、少々吹っ掛けても食いつく』ってことだろ?」

「そう。栽培方法が秘匿されているうえに、需要は多い。だから、そこそこ値段を釣り上げても、客は寄ってくる。そんな金の山みたいな私たちのことを、放っておくわけにもいかないでしょ」


実のところ、私たちは栽培方法なんて知らない。ただ、安全になった山からクリピを運び出すだけだ。まだ、運び出す作業はやってないけど、信用できる人を雇って、その人に荷運びを任せるつもりだ。需要は多いけど、供給が間に合っていない。あの山に自生しているクリピが無くなってしまうのは、時間の問題だろう。もっても、一年くらいかな......。それまでに、私の錬金術スキルと研究スキルを使って栽培方法を解明する。......研究スキルはまだ持ってないけど、今全力で取得しようとしている。あと一か月もすれば、出来るはず。


「......ナツキ、お前気付いてるか知らんけど、ギルデオンが栽培方法を秘匿してて、価値がそんなに高いなんて言ったら、秘密にしてるのが何か、簡単にわかっちまうぞ?」

「もちろん、気付いてるよ。ゼルドなら、信用しても大丈夫って思ったから、直接は言わないけど、知っておいてもらいたいなって思って」

「ま、商売については俺全然分かんねぇからさ。頑張ってくれや。クエストとかは誘ってくれよ」

「分かってるよ。ゼルドが居れば、心強いからね」


実際、ゼルドの力は凄まじい。剣の技量もそうだけど、何よりもドラゴニュートという種族の特性である、筋力が役に立つ。ミルアと、ゼルドと、私。そのうち、二人が怪力。素晴らしいパーティーじゃないか。ミルアは魔法を普通よりも使えるし、私も、魔法はまだ使えないけど、たくさんのスキルがある。状況によって、多種多様なスキルを使い分けることができる。


「さて、もう日もくれたし、今日はもう遅い。続きは宿の中で話すとしよう」

「だね」

「です」

「ですよねー」




「おい、ナツキ、どうしたんだお前」


宿のトイレに向かうため部屋を出たところ、ゼルドに呼び止められる私。なんの話だろう?もしかして、やっぱり気が変わったからクリピの商売に一枚かませてくれとかかな......?


「何が?」

「何がってな......口調だよ、口調。お前、この間までは全然うまくなかった喋り方も、すっかり上手になってんじゃねーか。それに、身振り手振りも」

「......まぁね。やっぱ、ミルアと一緒にクエスト言ったのが大きいかなー。二十四時間以上も一緒に居ると、勉強になるよね、やっぱ」

「......本当か?」


うそ。いっそ、そう言ってしまいたかった。だけど、これ以上ゼルドに心配をかけるわけには行かない。それに、何を思い悩むことがあるのか。むしろ、自然にふるまえるようになったというなら、喜ぶべきことじゃないか。


「しつこいなぁ、ゼルドは。そんなんだから、彼女も出来ないんだよ」

「ほっとけ。で、何にも問題は無いんだな?」

「大丈夫大丈夫。ああ、でも一つあるとしたら、これからはあまりべったりしない方が良いかもね。周りからそういう風に見られちゃうかもしれないし、そんなことしてるといつまでたってもゼルドに彼女が出来ないよ」

「......お前が気にすることじゃないだろ。それに、俺の交友関係に口出しするような奴はこっちから願い下げだっつーの」

「そんなこと言ってられるのは、若いうちだけなんだよ......」

「何言ってんだ。お前も俺と同じ年齢だろうが」


意味ありげにフッと笑った私に対して、ゼルドがツッコミを入れる。いや、前世で女子から引っ張りだこだった分、経験はこっちの方が上だ。それに、叔父さんが言ってた。


『いいか、光昭。高校生とか若いころは交友関係は大切だとか、どうたらこうたら青臭いこと言っているが、幼いころから友人よりも大切な人を優先するんだ。じゃないと、俺みたいに婚活に焦ることになるぞ。......こんくらいの歳になるとなぁ、飲みに誘ってくれる友人が気を使ってくれるんだ。こっちが焦って適当な返事をしても咎められないし、怒鳴ってしまう事があっても、笑って許してくれる。それに、婚活で飯に行くからと誘いを断ると、察してくれるんだよ。それが、どうしてもみっともなくて恥ずかしくてなぁ』


叔父さんは、お酒で赤くした顔を下にうつむけて静かに泣いていた。そんな可哀そうになってしまうくらい悲しそうに泣いていた叔父さんを見て、私は......


『叔父さんって、泣き上戸なんだなぁ......』


とか、どうでもいいことを考えていたことを覚えてる。たしか、その時は俺が......私が小学生の時の事だっけ。たしか、その後父さんが気付いて、『小学二年生に何を話してるんだ、お前は』とか言って頭を叩かれてたな。懐かしい。父さん......優しいけど厳しい、良い人だった。私は心の底から尊敬していたし、それに答えてくれていたような気もする。懐かしいな。......会いたいな。


「本気で好きになったのなら、友達よりも大切な人を優先しないと」

「だろうな。解ってるんだけど、程度ってもんがあるだろ?」


程度......分からない。例えば、交際一年記念の日に友達から遊びに誘われて友達の方の誘いを断るのは当然だけど、普段遊んでることとかに文句を付けるのはやだって事?確かに、人によっては意見が分かれるかもね。でも、私だったら全然いいかなぁ。だって、それだけ愛されてるって事でしょ?私なら、妬いてるのを可愛いって言ってからかった後、友達に断りの電話を入れる。


「まぁでも、女の人の気持ちになって考えてみなよ」

「......さすが二十四時間女装してるナツキだ。言ってることの重みが違うぜ。グレンに言われてたら、間違いなく本気に受け取らなかったね」

「なんだ、それ」


ゼルドの感心したような呟きに、微妙な気分になってしまう。その呟きは、褒められてるのか貶されてるのか分からない分、どう反応したらいいか分からない。


「ま、いいやさっさとトイレ行って来いよ。部屋の方からリーナベルド教官の呼んでる声が聞こえてるぞ」

「分かった!」





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