54話 惚れさせたいんだろ?幸せになりたいんだろ?よし、なら特訓をしようじゃないか
ながいでしょ、今回のサブタイトル。なので、恐らくツイッターでは少し短くなってると思います。これからは多分(というか今までも)タイトルが少し違ったりとかあると思いますが、温かい目で見過ごしていただけると助かります(^^;)
「急に力入るね、ミルアは」
「ナツキも、そう思うでしょ!?人を束縛していいはずがないよ!」
「そ、そうだね......?とりあえず、落ち着こうか?」
「ほんっとに」
うん。何がほんっとになのかは良く分からないけど、とりあえずは落ち着いたみたいだ。良かった。落ち着かないと進む話も進まないからね。
「ゼルド。私に頼ってしまった時点で、女子に頼ったことになるんだからね?いくら私が女子っぽくないからって、男子扱いは困るなぁ。それに、私は女子なんだから、ゼルドからそういう相談されたら、身近で頼れる女子を頼るのは当然じゃん。だって、男子よりも女子と接してる時間の方が長いんだから」
「まぁ、言われてみればそうかぁ。お前、女子だったかぁ」
「......ムカッ」
そうかぁ、納得した!という風に、腑に落ちるとでも言いたげに首を縦にふるゼルド。そんな表情をして『女子だという事を忘れてた』なんて堂々と言われると、殴らざるを得ない。一応性別は男子だけど、はたから見たら女子なわけだし、ここで殴っとかないと、私の正体をしらないミルアから怪しまれてしまう。『やっぱり前世は男だったんだ!』なんて、もう一度言われるのはごめんだし。当たってるだけに、どう反応すればいいか分からないしね。本当にイラついたわけじゃないよ?すっごい力がこもってたのも、ただの演技だよ?ゼルドには、大げさに痛がってもらわないと。
ビシッ
ゲシッ
ガイィィンッ
「痛ってぇっ!?あにすんだよ!?」
「当然の罰だよ!女子に、女子だという事を忘れたなんて言うんだから!」
「そうだぞ!思わず、私も殴ってしまったじゃないか」
「あまりの言い草に脛を蹴っちゃったわ」
「しかし、人を殴るというのは、自分も痛いものなのだな......」
「リーナベルド教官......」
神妙そうな顔つきをして、目を見合わせる二人。ご、ごくりっ。なんだ、この空気。まるで、幼少の時から優しかった姉が、グレちゃった弟に対して見限らず優しく接してきたけど、学校で殴り合いのけんかをしたあと、相手に結構なけがを負わせて謝りに行くとき謝らないで、どっちが悪かったかでキレた時けがを負わせたくせに謝らない弟を初めて殴っちゃって、後に冷静になって振り返る姉みたいな雰囲気!
「......手に防具ついてるから、全く痛くないですよね」
「......まぁ、な」
「......っていうか、ガントレットって場合によっては武器になるって教官、言ってませんでしたっけ?」
「......まぁ、な」
「その場合、俺だけが痛くて、殴った教官の手は痛まないんじゃないんですか!?」
「......」
「......」
「まぁ......な!!!!」
余計なためを入れて放たれた言葉。それを聞き、諦めたように肩を下ろして、座り込むゼルド。わかる。そのきもち、解るよ、ゼルド。
「おーい、そんなところで座ったら、波でぬれるぞ?」
「あまりの自由奔放さに、力が抜けちまったよ」
「大丈夫。それは、リーナと一緒に居るとおこる初期症状だから。害はないよ」
「初期症状?なにそれこわい」
「他には、胃痛、頭痛、無気力感とかがあるね」
「大分重症な症状だと思うんだけど」
前世だったら学校を休んで病院に行こうと決意するくらいには酷い頭痛がする。......ところで、私たちは先ほどから海岸沿いを話しながら歩いているのだが、満潮が近づいてるのか、海面の位置が先ほどより近づいてきてる気がする。つまり......
「はぁ。自由奔放って羨ましいな」
「私もそう思うけど......」
「俺も自由奔pわぶっ!?しょっぺ!かっ!ぺっ!」
こうなる。濡れるって言ってあげといたのに。これは、自業自得だね。......なんだか、私の注意が無駄になっちゃったみたいじゃないか。なんだそれ。ちょっと、癪だな。いや、ゼルドの為になった。たぶん、『人の忠告は聞いた方が良いんだろうな』って、学習してくれたはず。
「あー。言わんこっちゃない」
「間抜けね......」
「何やってるんだ、ゼルド」
「あんたのせいで濡れてんでしょうが、教官!」
「座り込んだのはお前だろう。私が突き飛ばしたのならわかるが、私に勝手に呆れて勝手にしりもちついて勝手に私のせいにされるのは違うくないか?」
「あ、知ってたんスね!?自分が呆れられてるって事、解ってたんすね!?」
「私をだれだと思っている?武力だけではなく、座学や兵法などが優れてるとして今の地位まで上り詰めた、万能型教官だぞ?周りからの評価については、よく理解してるぞ」
自分の評価を知ってるって......悲しっ。だって、周りから何て言われてるか知ってるって事でしょ?お世辞にも、リーナに対しての周りからの評価は良いとは言えない。いや、むしろ自信をもって『評価は悪い』と言える。
「あの、リーナベルド教官......?」
「そう、理解してる。理解してるんだ......」
「......」
「......」
「......」
......いや、だから何なの!?さっきから、雰囲気を壊すようなことばかり言ってるみたいなんだけど、これって何らかの意図があってやってることなの?それとも、いつものように、全く意図のない、悪意もない、ただの悪戯だって言うの!?【大自然の悪戯】!?大自然の悪戯なの!?
「はぁ......ゼルド、お前やる気あるのか?」
「なんで!?教官にいきなりディスられた!?」
「あの、出来れば解説をしていただいても?リーナ」
「ゼルドは、ある女性に好かれたいんだろ?でも、特定の人だけに好かれるなんて、難しいはず。だったら、だれからも好かれる人を目指す方が簡単なんだから、そっちを目指した方が良いっていうことだ」
「うん、まぁ......?」
それと唐突な罵倒が何か関係してるのかな......?全く分からないけど、取り敢えず話を聞いておこう。
「モテる男と言ったらやっぱりトーク力。それを鍛えるために、私はさっきからめんどくさい女子を演じていたというわけだ」
「......なるほど。だったら、一言くらい言ってくれればいいじゃないですか!何でわざわざ何も言わなかったんですか!?」
「もとから身構えないでも対応できるようにならないと意味がないだろう」
「それはそうかもしれないけど......大体、彼女はそんな雰囲気壊す人じゃないです!」
「親しくなったら急に重い話ばかり言うメンヘラかもしれないだろ」
「嫌なこと言わないでくださいよ!!!」
......前世の友達の話によると、結構いるらしいんだよね、付き合ったとたん、メンヘラの本性を現す人って。例えば、連絡先にある女性のメールアドレスとか電話番号を全部消させるとか、女友達と少し話しただけでも怒られるとか。重い過去とか経験を話し始めるとか。
「ゼルド、安心して。メンヘラも、自分に依存してくれてるって考えればなんとか......」
「何とかってなんだよ!?っていうか、彼女はそんなんじゃないって言ってるだろ!」
「もしの話だよ、もし。もし、その人がメンヘラだとしても、言いようによっては自分がそれほど愛されてるって事だから、なんとか......そう、なんとか。いや、やっぱり無理」
「無理なんかい!そこ、行けそうな流れだったじゃん!もう!もう!」
地団太を踏むんじゃないよ本当に。子供じゃないんだから。
「興奮しすぎだよ、ゼルド。女子から見て、そんな騒いだ人はカッコいいと思う?」
「ワケないな」
「ワケないでしょ?何事にも動じず、かっこよく笑って流せるようにならないと」
「そ、そうだな」
「私、この間ゼルドがとっといたケーキ食べちゃった。ごめんっ!」
「......あ、そうなんだ。また買ってくればいいだけだよ」
おお。ムカッてきたんだろうけど、堪えた。それにしても、あのケーキ美味しかったなぁ。紅茶もおいしかったし、やっぱりケーキには紅茶が一番合うよね。
「本っ当にごめんね!次は私のおごりでいっしょにいこ?」
ここで必殺上目遣い涙目頬染め!むはははは!これを見て、『こいつ、おとこじゃね?』って思う人は居なかろう。女子が見たら不自然に思うか『コイツ狙い過ぎてウザイ』って思うかのどっちだろうけど、男ならこれを見たら『おうふ』となるはず!
「おうふっ。くっそっ!ナツキにときめいてしまった......!一生の不覚ッ......!俺は、恥ずかしぃッ!ナツキに一瞬とはいえ見惚れてしまったことが、恥ずかしぃッ!自分を恥じるッ!」
「おい、何だそれ。私も一応は女なんだよ?」
「認めないッ!俺は、お前が女子だなんて認めないッ!」
「なんだお前それ!」
「何だぁなんか文句あるのかぁナツキお前!?」
「なんでお前らはそういつも煩いんだ」
「教官も、大変ですねー」
「だろー?」
各々が別の話題で盛り上がる中ナツキは、元々任されたのは自分だという事も忘れ『こんなんでゼルドは大丈夫なのかなぁ』と、責任感が全く感じられないことを考えているのであった。




